2026年 春 古本屋・改古堂⑤ オカルト雑誌の時代
「どうして、こんな人たちが日本を支配してるの。元の世界では、毒ガステロを起こして逮捕されて、それまでに隠してきた犯罪も全部バレちゃったんだけど」
「サリンという毒ガスを撒くテロ事件は、起きた。でも、誰の犯行だったのかは、未だに迷宮入り。当時は、警察も自衛隊も、動きが取れなかった。主要な警察署や駐屯地の周りにもガスが撒かれたからだ。指示系統も大混乱したらしい」
「でも、オウムが怪しかったんでしょ?調べられなかったの?」
「当時のマスコミはオウムに甘かったんだ」
「なんで?」
「もともと面白い新興宗教くらいに思われてた。テレビにも雑誌にも出ていたしね」
「へえ」
「そこへ松本サリン事件だ。警察もマスコミも無関係の一般人を犯人扱いしてしまった」
「ああ……」
「だから地下鉄サリンの後も、オウムを追及するのをためらった連中が多かったんだよ。
加えて、当時は実務能力の怪しい、左寄りの政権与党。さらに東京都知事は青島幸雄だったし。何もかもタイミングが悪かったね。
…ちょっと待ってて」
おじさんは、奥の方の棚を漁り、「これと、これと...。これもか」
何冊かの古雑誌を持って来た。
「これが、1985年のムー。写真付きで教団が紹介されてる。ムーだけじゃない。当時は似たような雑誌が山ほどあったんだ。『トワイライトゾーン』、『UFOと宇宙』、『マヤ』……。オカルトブーム全盛期だったからね
これも、同じ年の週刊プレイボーイ。核戦争で人類が滅亡する、それを教団で修行すれば助かると述べている。次の年には、空中浮揚の写真が掲載されている。あの、ぴょんぴょん飛び跳ねるやつだ。跳んだ瞬間の写真だから、空中で静止していると思う人も多かっただろうね。
それから、これが今は廃刊したけど、トワイライトゾーンという雑誌。ムーと同じ路線を狙ったけど、これにも空中浮揚の写真を載せて、大金費やして教団の広告を載せた。その後、この雑誌で麻原が連載を開始して教団のイメージアップを図っていくんだ。
80年代はオカルトブームの全盛期でね、トワイライトゾーンの他に、ムーをまねたような雑誌が、たくさん出ていたんだよ。ノストラダムスの予言てのがあって、1999年に世界が滅ぶって本気で信じてた奴らも多くてね。
これが、トワイライトゾーンと同じくワールドフォトプレス社が出していた、『UFOと宇宙』。これは徳間書店の『GOD MAGAZINE』。潮出版の『アトランティス』。ムーと同じく学研から出ていた『ザ・ヴイ』と『マヤ』」
よくまあ、これだけたくさんの雑誌がすぐに出てくるものだ。古本屋の店主って、みんな、こうなの?
「このマヤって雑誌は、当時のトップアイドルたちがファンタジー風のコスプレした写真を表紙にしていてね、ちょっと店頭では異彩を放っていたなあ」
本当だ。聞いたことがある芸能人たちが、魔法使いやら戦士やらエルフやら、RPGのキャラクターみたいな恰好をしてる。みんな、若いなあ。あれ?この人...。
「ねえ、この表紙の人、1988年の12月号で妖精っぽい可愛いドレス着た生稲晃子って人、元の私の世界では国会議員だよ。こっちの世界では、どうなの?」
「わっはっは。生稲晃子が国会議員?なら内閣総理大臣は、工藤静香かい?」




