第四部 第10話:豪華絢爛の使節団と、蠢く政治の裏舞台
賢者の書に新たに刻まれた、あまりにも不穏な予言――【ep.117】。
『空から災いが降り、ミドルドアのシャオハイユに津波が発生する』
この未曾有の危機に対し、ミルキーウェールズ王国では直ちに「緊急サミット」への参加者が選出された。
メレンヘア学園生徒会からは、第一王子シリウス、副会長カノープス、筆頭書記デネブ、そして王国外交官トップの計4名。
さらに彼らを護衛すべく、忍びのハダル、くノ一のザニアに加え――
【アルタイル・バロワ】
メレンヘア学園における「武」の象徴。身の丈六尺五寸(約197センチ)という圧倒的な威圧感と美貌を誇る武人であり、要人護衛を担うサムライ。あの「鋼鉄の美女」ベガ様すらメロメロにしてしまう、天然無自覚タラシな学園最強の剣客。
【シーパラ男爵 & デルバ男爵】
一行を影から支える縁の下の力持ち。数々の修羅場を潜り抜けてきた要人護衛のプロフェッショナルであり、いざとなれば頼りになりすぎる聖騎士コンビ。
そして急遽、過激派組織・RLF(ロメーダ解放戦線)の脅威から聖女たちを物理的に守るため、あの人物も招聘されていた。
【シャーロット・ガンデッシュ】
王国の防衛の要たる騎士団防衛学園『ギルマッシュ』出身。端正な顔立ちに映える美麗なロングブロンドの髪と、魅惑的な紫の瞳を持つ美女。
大人の色気が漂う大酒豪であり……かつてRLFの刺客から「精神干渉が一切効かないバカパラディン」と心底恐れられた、ミルキーウェールズの名門ガンデッシュ家が誇る頼れるお姉さんである!
……そして、そんな癖の強すぎるミルキーウェールズ使節団を一つに束ねるのが、隊列の先頭を行く最も豪華な特等馬車の前に立つ、あの男であった。
表向きはミルキーウェールズの全権使節として各国の王族と渡り合い、その裏では国家の闇を一手に統べる諜報部最高司令官の顔を持つ男。
エキティカ一のタヌキ親父――カノープスの実の父親、ゼダル・チュワートス卿である。
「皆のもの、抜かりなくな。……出発だ」
波乱の予感を乗せて、ミルキーウェールズ使節団の豪華な馬車隊は一路、ロメーダ帝国首都アルメキオンへと走り出したのだった――。
◇
ガタゴトと揺れる特等馬車の中。
重厚な革張りシートに腰掛けたゼダル卿が、口元に薄い笑みを浮かべながら切り出した。
「今回のサミット……レグルス皇帝は、意図的に『3人の聖女候補』全員の同行を要求して参りましたな。ロメーダ側は、彼女たちに何らかの重大な役割を与えようとしていると見るべきでしょう」
シリウスが眉をひそめ、腕を組んで返す。
「……私もそれが気になっていた。今回の予言は『空からの災い』と『津波』だ。自然災害、あるいは未知の脅威に対し、聖女候補たちに危険が及ぶような過酷な役割は回避したいところだが……」
その懸念に対し、カノープスが淡々と情勢の分析を口にした。
「今回の緊急事態における聖女候補の出動要請ですが……可否の決定には『エキティカ聖女機構』に加盟する7カ国代表の合意が必要です。今回の場合、災害の被害地はミドルドア。当事国であるミドルドアは、間違いなく聖女候補の現地出動を強く要請するでしょう。そうなれば、ミドルドアと同盟関係にあるレーシアもこれに追従します」
カノープスは車内の地図を指で叩きながら言葉を続ける。
「焦点は、主催国であるロメーダが聖女の出動を強く求めるかどうかです。もしロメーダが出動を要請した場合、ロメーダに大きな貸しのあるリンデアが追従し、さらにロメーダとレーシアの間に挟まれたソビヤも抗えず従うことになる。……つまり、可否の鍵は完全に『ロメーダの意向』ひとつにかかっているということです」
「ふむ……」
「逆に、ロメーダが聖女の出動に消極的であれば、我々ミルキーウェールズ、ブリデン、そしてロメーダとリンデアの過半数で、聖女候補の危険な現地派遣を抑止することができます。しかし――」
カノープスはサファイアの瞳を鋭く光らせた。
「レグルス皇帝がわざわざ3人の聖女候補をこのサミットに呼び寄せている以上、全権使節(父上)の言う通り、すでに彼女たちは皇帝の何らかの計画に組み込まれていると考えるべきです。我々としては、それが危険な任務である場合、引き換えに厳重な安全確保と見返りを要求していかねばなりません」
「……津波という自然の威容に対し、果たして人智や聖女の力が及ぶものだろうか」
シリウスは重々しく呟くと、窓の外へと視線を向け、後ろに続く一等馬車を眺めた。
◇
一方、その一等馬車の中では――。
特等馬車の緊迫した政治的駆け引きとは、およそ真逆の空間が広がっていた。
乗車しているのは、スピカ、ベガ、ヴィンデミアの3人の聖女候補。そしてくノ一のザニアと、最強の護衛剣士・アルタイルである。
対面に座るアルタイルのあまりの背の高さと頼もしさに、スピカはニコニコと口元を緩ませながら、隣に座るベガへ突如として話を振り出した。
「ねぇねぇ、ベガ様〜! ところで最近、お二人(アルタイル様とベガ様)の間柄はどうなんですか〜? 進展とかあったりするんですか〜?」
ベガの美しい顔が一瞬で真っ赤に染まった。
「あ、あんた……っ!! こんな時にいい加減にしなさいよっ!!」
ベガの容赦のないツッコミが馬車内に響き渡り、スピカは「えへへ〜」と笑ってごまかすのだった。
ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると励みになります!」
ブックマークも大歓迎!!お願いします。




