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ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。【第一部完結済み 26話(忍者失格)まで】  作者: クワトロばなな


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第四部 第8話:四天王敗北と、ツンデレな救世主

「聞いたか!? ロメーダから来た編入生のヴィンデミア様が、あのスピカ様よりも遥かに高度で優れた聖水を作られたそうだぞ!」


教義の日のお披露目以降、ヴィンデミアがスピカを上回る「四重詠唱」の聖水を作り上げたという噂は、疾風の如き速度でメレンヘア学園全体へと広まった。


学園内は、彗星のごとく現れた「ニューヒロイン」の誕生に大いに狂喜乱舞した。


『ヴィンデミア・ブランジネットファンクラブ』、さらには『ヴィンデミア・ブランジネット親衛隊』なる謎の有志組織が校内の至る所で次々と立ち上がり、一気に大勢力を形成していく。


その陰で、かつて学園内を一世風靡していた『スピカ・マセットファンクラブ』および『スピカ・マセット親衛隊』は、完全に追いやられて見る影もなくなってしまった。


……そしてあろうことか、極秘裏に男子生徒たちの間で行われたのが、スピカとヴィンデミアによる『四天王美女・末席』を巡る決戦投票であった。


スピカの根強いファンたちが必死の奮闘を見せたものの、ほんの僅かな票差でスピカは敗北。自ら「自分にはまったく不相応」と常々思っていたはずの『四天王美女』の座から、あっけなく陥落してしまったのである。

◇

放課後の教室。

その残酷なニュース(?)を小耳に挟んだスピカは、長机に突っ伏して大きな溜息をついていた。


そして、呆れ顔で見守る親友のクレアとナンシーに向かって、ヤケクソ気味に愚痴をこぼし始めた。


「あのね、言わせてもらうけど『四天王美女』なんてね、私、最初から全然望んでいなかったわけですよ! 勝手に署名活動とかされて、勝手に押し上げられていただけなわけです! えー、まあ、元々身分不相応でしたし、すっきりしましたよ! ハイ! ヴィンデミアちゃんの方が絶対にお美しいですしね! ハイ! ……でもね、なんなのこれ……何なのよ、この扱いの差はーっ!?」


机に突っ伏してバタバタとジタバタするスピカを見て、ナンシーはクレアにコソコソと囁いた。


「……ねぇクレア、スピカさんなんだか凄く荒れてるわ」


クレアも苦笑いを浮かべながらヒソヒソと返した。


「ね、なんかちょっと本気でショックだったみたい。『私なんかには相応しくない』ってあんなに言っていたのにねぇ」


スピカが「だ、だって投票で負けるのは普通に傷つくじゃないの〜!」と心の中で悶絶していると――。


「あーら、ご嫌よう。……『元』四天王美女の、スピカさん?」


高飛車で嫌みな声が響いた。


そんな弱り切った獲物を、この高慢な令嬢が見逃すはずがなかった。


デュポン侯爵家令嬢、イザベラである。

取り巻きの令嬢たちを従え、扇子を優雅にならしながらスピカを見下ろしてくる。


「四天王美女・末席の決戦投票、誠に残念でしたわねぇ?……おーっほっほ! 私はブランジネット公爵令嬢なんかよりも、貴方の方が『四天王美女』に相応しいって思ってましたのよ?」


見下すようなニヤケ顔で煽ってくるイザベラに対し、スピカを庇うように親友のクレアが間に割って入った。


「ちょっと、やめてよイザベラさん! そんな『見え透いた大嘘』言わないで! スピカはスピカで、落選してとってもガッカリしているんだからね!!」


(み、見え透いた大嘘……っ!? や、やめてクレアちゃん! クレアちゃんの悪気のない素直な追撃が、私の傷口にとっても痛いわ)


スピカが心の中で血の涙を流して悲鳴を上げているのも知らず、イザベラは嗜虐的な笑みを深めて攻撃の手を緩めない。


「あーら? そうでしたの。ガッカリしてらしたの? お気の毒に……。聞けば、第一聖女候補としてもブランジネット公爵令嬢に完全に負けてらっしゃるというじゃありませんの。ふん、ついにメッキが剥がれて、化けの皮が剥がれたってことですわね!」


「――お取り込み中、失礼するわ」


高飛車なイザベラの声を鋭く切り裂くように、冷ややかでありながらも絶対的な気品に満ちた声が教室内に響き渡った。


一同が一斉に振り向く。教室内を埋め尽くしていた生徒たちがサーッと割れ、そこから姿を現したのは――噂の渦中の人、ブランジネット公爵令嬢ヴィンデミアであった。


艶やかな群青色の髪をふわリとなびかせ、深淵なるサファイアブルーの瞳でイザベラを冷徹に見据えながら、彼女は凛とした足取りで歩み寄ってくる。


「……な、何ですのブランジネット様……」


急な本物の登場に怯むイザベラに対し、ヴィンデミアは一切の隙を与えずピシャリと言い放った。


「私は『聖女候補』として、このスピカ・マセットに勝ったと思ったことなど、ただの一度もないわ」


「な……っ!?」


「それに……己の力では何も背負っていない貴方が、偉そうに口にしていい言葉ではないわね」


完璧な正論と圧倒的な身分差の威圧感。イザベラは顔を真っ赤にして激昂した!


「なっ……何なんですってえぇぇ!? 貴方たち、聖女候補だとか言われていい気になっているけれど! 自分が本当に、おとぎ話や歴史に出てくるような本物の『聖女様』だと思っていらっしゃるの!? 」


「仮にどちらかが本物の聖女だとしても、片方は『私は偽物でした』って白旗を上げて世界中に恥を晒すことになるのよ!? 」


「その時は大いに笑って差し上げますわ! せいぜい今のうちに、虚構の『お友達ごっこ』でもしておくことですわねっ!」


捨て台詞を吐き捨てると、イザベラはキーキーとヒールを鳴らし、お供を引き連れて怒気を含んだ足取りで去っていった。


静まり返る教室。スピカは恐縮しながら、助けてくれたヴィンデミアに深々と頭を下げた。


「……ありがとう、ヴィンデミアちゃん。庇ってくれて……」


すると、ヴィンデミアはすっと視線を外し、どこか冷淡な態度で鼻を鳴らした。


「……勘違いしないで頂戴。別に貴方を庇ったわけではないわ」


「え?」


「ただ……己の実力もないくせに、人の陰でキャンキャンと吠えているだけの犬が嫌いなだけよ」


ヴィンデミアはそう冷ややかに言い捨てると、「それじゃあ、失礼するわ」と短く告げ、背後に控えていたくノ一・ザニアと共に静かに教室内を去っていった。


去り際、その背中に一瞬だけ漂った寂しげな気配。


スピカは胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚を覚えながら、遠ざかっていく彼女の群青色の髪を、どこか切なく見送ることしかできないのだった。

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