↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。【第一部完結済み 26話(忍者失格)まで】  作者: クワトロばなな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/117

第三部 第13話:フィーバーの渦中、そして決意の果実酒

華々しく幕を閉じた勲章授与式典。だが、本当の大混乱は式典会場を出た直後に待っていた。


迎賓館へと向かう高級馬車へ乗り込む際、ミルキーウェールズ王国の使節団一行には、会場を上回るほどの熱烈な声援と歓声が容赦なく浴びせかけられたのである。


「シリウス様ーーっ! こちらを向いてくださいー!」

ん

「ハダルさぁぁん! 抱きしめてー!」


「アルタイル様! 一本の矢に心を撃ち抜かれましたーっ!」


「ベガ様――っ!」「デネブ様――っ!」


そして当然のごとく、スピカの元には一際大きな声援が集中していた。


「スピカ様ーーっ! 聖女様ーーっ!!」


「どうか我が家にもご加護をぉぉぉーーっ!」


(ひええええっ!? 押さないで、投げキッス飛ばさないでーっ!!)


広場を埋め尽くした大群衆の熱気に、スピカは悲鳴を上げそうになりながら馬車へ駆け込んだ。


無理もない話であった。第三勲に1名(デネブ)、第二勲に4名(シリウス、ハダル、アルタイル、ベガ)、そして第一勲に1名――それも世界の救世主たる「聖女」スピカを輩出したのだ。もはや一国の使節団という枠組みを超え、生ける御伽話の主人公たちとして、ロメーダ帝国の一部の人々や世界各地から集まった熱狂的なファンたちの間で、一大ムーブメントを起こすほどの凄まじい人気を博していたのである。


本来であれば護衛の第一線に立つはずのサムライ・アルタイルやくノ一・ハダルまでもが、ファンからの揉みくちゃを避けるために周囲の騎士たちから護衛される側に回るという、まさに前代未聞の事態であった。


「はぁ……はぁ……死ぬかと思いました……」

馬車の中でもみくちゃにされた髪を整えながら、ハダルが息を吐く。


「……やれやれ、戦場よりも神経を使いましたな」

アルタイルもどこか苦笑い気味に兜の位置を直していた。


◇

そんな大狂乱のフィーバーをなんとか潜り抜け、一行はようやく宿泊先である帝国迎賓館へと辿り着いた。


今回の式典参加者全員は、本日18時から催される「帝国主催・戦勝祝賀晩餐会」へと招待されている。しかし、現在の時刻は正午を少し過ぎたところ。晩餐会まではまだかなり時間がある。


そこで――。

「せっかく式典が無事に終わったんだもの! 晩餐会までの間、14時くらいまで内輪だけで軽めのパーティーでもやりましょうよ!」


シャーロットお姉さんの明るい提案により、スピカの与えられた特大の部屋――あの豪奢極まりない特別スイートルームで、ささやかなお祝いの会が開かれることとなった。


「スピカ様、先に入らせていただきます。……よし、不審なトラップや潜入者の気配はありません」


まずはハダルが室内に入り、昨夜のような「皇帝バルコニー侵入事件」が再発しないよう隅々まで警戒を入念に行う。安全が確認されたところでスピカが足を踏み入れると――部屋の中央に、目を疑うような光景が広がっていた。


「……な、なにこれ……!?」


そこには、一際豪奢で華やかな、息をのむほど美しいドレスがトルソーに着せられて飾られていた。


輝くようなシルク生地に上品なレース、宝石を散りばめたそのドレスには、小さなカードが添えられている。


そこには、流麗な筆跡でこう記されていた。


"レグルスより、麗しき聖女スピカへ……"


「…………」


昨夜、黒装束で部屋に不法侵入してきた挙句、女子会組に拘束されて情けない姿を晒していたあのレグルス皇帝からの、本気の贈り物である。


いつもなら「またあの皇帝は……!」と即座に鋭いツッコミを入れるハダルであったが、あまりにもストレートで情熱的な演出に、流石に言葉を詰まらせた。


「……っ」


「……あ、ハダルちゃん……?」


ハダルもツッコミを入れるのを控え、スピカと一緒に顔を真っ赤にしてそのドレスを見つめることしかできなかった。


◇

その後、続々とミルキーウェールズ王国の学園サミットメンバーたちがスピカの部屋を訪れてきた。


「あら、素敵な部屋ね……って、まあ! なんて素晴らしいドレスかしら!」


お部屋に入るなり、女性メンバーたちは中央に飾られたドレスを見るなり一斉に歓声の声を上げた。


「……とても素敵なドレスね、スピカ」

普段はクールなデネブが素直に感嘆の息を漏らす。

「ええ、生地の仕立てといい魔力調整といい、一級品ですわね。悪くないわ」


薬剤師としての厳しい目を持つベガからもお褒めの言葉をいただき、当事者であるスピカは誇らしくもあり、どこか恥ずかしいような、甘がゆい気持ちで胸がいっぱいになった。


「あ、あの……皆さん、お好きな席にどうぞ! 軽食とジュースも用意してありますから!」


一同が揃い、グラスや軽食がテーブルに並んだところで、部屋の最奥に立っていたシリウス王子が静かに歩み出た。彼は仲間たちを見渡し、凛とした佇まいで口上を述べ始めた。


「――皆、まずは本日の式典、本当にお疲れ様だった。まだ夕刻からの晩餐会が残ってはいるが、こうして無事に式典を終えられたことを嬉しく思う」


静まり返る部屋に、シリウスの深みのある声が心地よく響く。


「我がミルキーウェールズ王国から、これほど多くの勲功者が出たこと……心の底から誇らしく思っている。だが、レグルス皇帝陛下も仰っていた通り、勲章を受けた者も、受けなかった者も、あの極限の戦場で見せた勇気と働きには何も遜色はない。我々は全員で、共に讃え合うべきだと私は考えている」


シリウスは仲間たち一人ひとりと視線を合わせる。そして、溢れんばかりの感謝を込めて続けた。


「改めて……あの時、世界の危機と祖国の名誉の為に命を懸け、共に戦ってくれた皆に、私から感謝の意を述べさせてほしい。――本当に、ありがとう」


そう言うと、第一王子であるシリウスが、全員に向けて深く、深く頭を下げた。


「シリウス様……」


その姿に、ハダルも、アルタイルも、ベガもデネブも、そしてスピカも、胸にこみ上げてくる熱い想いを禁じえなかった。あのクラーケンの恐怖、倒れそうになりながら魔法を放ち続けた時間、そして勝ち取った平和――全員で乗り越えてきた記憶が、駆け巡っていく。


シリウスはゆっくりと頭を上げると、ふっと表情を引き締め、王子としての鋭い光を瞳に宿らせた。


「――夕刻には帝国主催の晩餐会が予定されているが……皆には申し訳ないが、気を緩めないでほしい。我が国には、何にも代えがたい『護るべき存在』がある」


シリウスの視線が、ほんの少しだけスピカの方へと向けられる。


「引き継ぎ、警戒を怠らぬよう……私から改めて、宜しくお願い申し上げる」


(……あ)


スピカの胸が、ドクンと大きく跳ね上がった。


シリウス王子が言っている「何にも代えがたい護るべき存在」――それが、第一勲を授与され、世界中から狙われる危険性すら出てきたスピカのことを指しているのだと、すぐに察せられたからだ。


第一王子であり、最強の魔法剣士であるシリウスが、大勢の前で宣言した「自分を護る」という強い決意。


政治的な利用や他国の思惑から自分を守り抜こうとする彼の誠実さと力強さに、スピカは少しだけ複雑で申し訳ない気持ちになりつつも、胸が熱く焦がされるような感覚を覚えずにはいられなかった。


(シリウス王子……本当に、私なんかのために……)


そんな甘く切ない雰囲気に浸っていたスピカであったが――。


「んふふ〜……♪ いいわねぇ、青春ねぇ〜♪」


「ひゃいっ!?」


不意に肩を組まれ、スピカは跳び上がった。


振り返ると、そこにはすでに果実酒を何杯か引っかけてすっかり「出来上がっている」シャーロットお姉さんの姿があった。赤い顔でフニャフニャと笑う彼女は、スピカの耳元でニヤニヤと悪戯っぽく問いかけてくる。


「ねえねえ、スピカちゃん♪ 昨日の夜、レグルス皇帝陛下に『スピカちゃんのどこが好きか』って面と向かって聞いちゃったじゃない? ……ねえ、ついでにシリウス王子にも聞いておこうか? ん?」


「ーーーーっっっ!?」


一瞬で顔が爆発したように真っ赤になったスピカは、果実酒の匂いを漂わせるシャーロットお姉さんの両肩をガシッと掴み、必死の形相で叫んだ!


「そ、それだけは!! 絶対にやめてくださいーーーっっ!!!」


スピカの必死すぎる叫び声が部屋中に響き渡り、和やかなパーティー会場は一気に爆笑と温かな歓声に包まれるのだった。

ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると励みになります!」

ブックマークも大歓迎!!お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。