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ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。【第一部完結済み 26話(忍者失格)まで】  作者: クワトロばなな


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第三部 第6話:帝都アルメキオン、あるいは英傑たちの平伏

無事に国境の厳重な検問を越え、馬車に揺られること三日。


ミルキーウェールズ王国使節団一行を乗せた馬車列は、ついにロメーダ帝国の心臓部である首都「アルメキオン」へと到着した。


「……すごいわ……」


馬車の窓枠に手をかけ、外の風景を眺めていたスピカは、思わず感嘆の声を漏らしていた。


アルメキオンの本丸を取り囲む広大な城下町は、歴史の重みを想起させる古い佇まいを残しながらも、驚くほど規則正しく、美しく整備されていた。街道沿いには高級な洋服仕立て屋や、煌びやかな宝飾品店が隙間なく軒を連ね、行き交う人々も洗練された衣装を身にまとっている。


(凄い……! 高級そうなお店が沢山あるわ。こんな大都会、私、生まれて初めて見ちゃった……!)


田舎伯爵家の令嬢であるスピカは、その圧倒的な都会の熱気に目を丸くさせていた。


しかし、城下町を抜け、深々とした掘にかかる巨大な石橋を渡ってアルメキオン城の敷地へと入ると、街の華やかな空気は一変した。


大陸最凶と恐れられる軍事力を誇る超大国にふさわしく、視界を覆いつくすように天を突く大城郭がそびえ立っている。城壁の上や各門には、幾重にも連なる鉄壁の警備兵たちが整然と並び、一切の隙もない鋭い眼光を走らせていた。


息をのむような緊張感が漂う中、馬車列は本丸から少し離れた、国賓を迎えるために用意された広大な『迎賓館』へと滑り込んだ。


車寄せに馬車がゆっくりと停車し、御者が扉を開ける。


そこでスピカたちが目にしたのは――思いがけない、あまりにも豪華すぎる出迎えの陣形であった。


プラチナブロンドの髪を光らせ、深淵なるエメラルドの瞳を湛えた美貌の青年。アルメキオン学園生徒会長であり、超大国ロメーダ帝国を統べるアークウィザード――第24代ロメーダ帝国皇帝、レグルス・ギャランディッシュ。


その傍らに立つのは、同生徒会副会長。長身の仕立ての良い制服に身を包み、眼鏡の奥に冷徹で鋭い眼光を宿す、現皇帝の若き頭脳たるアークプリースト――デネボラ。


さらに、同書記を務める、見る者を一瞬で魅了する銀髪碧眼の圧倒的な美女であり、若くして宮廷魔導士並みの恐ろしい魔力を誇るアークウィザード――アルギエバ。


同会計、黒髪を短く切りそろえた男装の令嬢であり、その腰の細剣一振りで一軍をも退けると言われるソードマスター――ゾズマ。


生徒会庶務、見事な体躯と重厚な鎧を纏う、頼もしき重装聖騎士(パラディン)――アダフェラ。


そして、先ほど学園へと招待状を届けに来てくれた、山吹色の髪をなびかせる妖艶なるくノ一、生徒会庶務――ミラ・グラダス。


それだけではない。

生徒会メンバーの後ろには、ロメーダ帝国の「武の象徴」と謳われ、数々の国際紛争をその圧倒的武力で鎮圧してきたプロフェッショナル――『ロメーダの三連星(ミツラボシ)』と呼ばれる三騎士、アルニタク、アルニラム、ミンタカの姿までもが並んでいた。


ロメーダ帝国の権力と武力を象徴する英傑たちが勢揃いし、完璧な接遇の礼を持ってミルキーウェールズ一行を迎えていたのだ。


やがて、一番前に停まった一等一号馬車の扉から、スピカがゆっくりと地面へ足を下ろした、その瞬間のことである。


――サッ……!


まるで事前に寸分違わず合図が組み合わされていたかのように、レグルス皇帝を筆頭とするロメーダの英傑一同全員が、一斉に地面へと膝をつき、完璧な所作で深く頭(こうべ)を垂れた。


「――聖女! スピカ・マセット様!! 遠路遥々お越しいただき、誠にありがとうございます!!」


地鳴りのような整った声が、迎賓館の車寄せに響き渡る。


「…………え?」


目の前で繰り広げられたあまりに狂気的な光景に、スピカは完全に固まった。


皇帝陛下? 大陸最強の騎士たち? 完璧超人の生徒会役員たち?


世界にその名前を十二分に轟かせるレベルの超VIPたちが、ただの伯爵令嬢(自称:ただの一般人A)であるスピカ一人の降車に合わせて、地べたにひれ伏している。


横に並ぶシリウス王子の「やれやれ」と言いたげな呆れ顔や、カノープス君の「また始まったか」という諦めの視線が痛い。


一人一人が一国を震撼させるレベルの英傑たちからの、重すぎる尊崇の眼差しと平伏を全身に浴びながら、私は引きつった顔で、力なく右手をパタパタと振ることしかできなかった。


「や~……。ど~も~……」


私の脱力感あふれる挨拶が、帝国の豪華すぎる迎賓館に、むなしく響き渡ったのだった。

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