第三部 第5話:勢揃いドリームチーム、あるいは心のツッコミが追いつかない出発
ロメーダ帝国の首都アルメキオンにて開催される、「クラーケン討伐記念式典」。
その招待状を受け取ったミルキーウェールズ王国において、現地へ赴く使節団の出席メンバーが正式に決定された。
――言ってしまうならば、ほぼ前回の「国際学園サミット」で極限の死線を共にした、あの濃すぎるフルメンバーである。
出発の朝。王都の広場には、豪華な装飾が施された何台もの馬車と、王国が誇る精鋭たちが集結していた。
乗車前の最終確認を行っているその顔ぶれを、スピカは馬車の窓からぼんやりと眺め、心の中で順番に整理していく。
まず、我がメレンヘア学園生徒会役員7名。
【シリウス・ランスター】
ミルキーウェールズ王国第一王子。
容姿端麗、成績優秀。優雅なブロンドに吸い込まれそうなアクアマリンの瞳を持つ魔法剣士であり、生徒会会長。
あのロメーダ帝国のレグルス皇帝からすら「タヌキ王子」と一目置かれる食えないお方。……絶賛、スピカとすれ違い中(?)である。
【ルスカ・ルマンディ】
『鋼鉄のプライド』の異名をとる偉丈夫。生徒会副会長にして聖騎士。彼のラックアップ(幸運上昇呪文)は世界一。
【デネブ・アーテュス】
金髪碧眼の『学園四天王美女』の一人。
美貌、立ち振る舞い、学業のすべてにおいて完璧超人な、魔法庁長官アーテュス侯爵家のお嬢様。
生徒会書記にして最高峰のアークウィザード。実はヤバい古代呪文をいくつも熟知している危険人物でもある。
【ベガ・ドウィン】
艶やかな黒髪のロングヘアをなびかせた、冷徹なまでの美女。
デネブ様と同じく『学園四天王美女』に数えられ、その美貌に釣られて言い寄ってきた男子生徒たちを数知れず物理的・精神的に撃沈してきた通称『鋼鉄のアークプリースト兼薬剤師』。対邪神龍アイテムを常に懐に忍ばせている。
【カノープス・チュワートス】
生徒会庶務兼外交官。
表向きは中肉中背の冴えない少年だが、その裏の顔は王国諜報部のトップエージェント・ハイクラス忍者カノープス中尉。
そしてクラーケン討伐の陰の立役者、我らがヒーロー『イナズマ丸』その人。
【ハダル・ギレス】
同じく生徒会庶務。要人護衛を担当する、カノープス中尉の後進くノ一(軍曹)。亜麻色の髪に洗練されたしなやかな肢体を持つ、大変可愛らしいお顔立ち。……なお、カノープス中尉の謎の『チュ〜策(、、、、)』のターゲット。
【スピカ・マセット】
生徒会庶務にしてアークプリースト。セミブロンドにターコイズの瞳。「おそらく聖女」であり、なぜだか勝手な署名活動によって「四天王美女」の末席に叩き込まれてしまった、我らが不運な主人公――である。
(……って、なにこの脳内キャラ解説!? 誰に向けて説明してるのよ!)
一人で勝手にノリツッコミを入れそうになるのをグッと堪え、スピカは視線をさらに広場の手前へと向けた。
一行の安全を守る護衛陣も、とんでもなく手厚い。
【アルタイル・バロワ】
メレンヘア学園「武」の象徴。身の丈六尺五寸(約197センチ)の圧倒的圧倒感を誇る美丈夫であり、要人護衛のサムライ。
あの「鋼鉄の美女」ベガ様すらメロメロにする、無自覚タラシな最強剣客。
【シーパラ男爵 & デルバ男爵】
一行を影から支える縁の下の力持ち。
数々の修羅場を潜り抜けてきた要人護衛のプロフェッショナルにして、頼れる聖騎士コンビ。
さらに生徒会以外の学園代表メンバーも、サミットの生き残り組がしっかりと脇を固めている。
ミルキーウェールズ王国が誇る二大最高峰の一角、魔法学園『ゼンビヤ』からはお馴染みの二人。
メガネの奥に底知れない知性を宿す代表主席、遠征女性メンバーからの「社会的死亡」を確実なものにする最高位魔導士のジョーンズ君。(え? なんなんですか?社会的死亡って?)
そして同じくゼンビヤの代表次席、美しい紫色のロングヘアと眩しいほどの白い肌を持つ、大富豪令嬢のアークウィザード・メアリーさん。
続いて、王国の防衛の要たる騎士団防衛学園『ギルマッシュ』の代表者たち。
頼れる若き脳筋聖騎士のオリバー君。
そして同じくギルマッシュ代表、端正な顔立ちに映えるロングブロンドの髪と、魅惑的な紫の瞳を持つシャーロットさん。
大人の色気が漂う大酒豪であり、かつてロメーダの刺客から「精神干渉が一切効かないバカパラディン」と心底恐れられた、ミルキーウェールズの名門ガンデッシュ家が誇る頼れるお姉さんである!
(な……なんなのよ〜これ〜!!パラディン酷くない?)
(濃い! 濃すぎるわ使節団メンバー!!)
豪華すぎるというか、アクが強すぎるメンバーの勢揃いに、スピカは窓枠を掴んで震えた。
クラーケンを一頭どころか、三頭くらい叩き潰せそうな過剰火力である。
そして、そんなミルキーウェールズ王国使節団という名の「超攻撃型ドリームチーム」を一つに束ねるのが、一番豪華な馬車の前に立つあの男であった。
表向きはミルキーウェールズの全権使節として各国の王族と渡り合い、その裏では国家の闇を統べる諜報部最高司令官の顔を持つ男。
エキティカ一のタヌキ親父――カノープスの実の父親、ゼダル・チュワートス卿である。
「――皆の者、準備は良いか?」
ゼダル卿が、その腹の奥を探らせない独特の笑みを浮かべて一声を掛けると、集まった若き英雄たちが一斉に頷いた。
「よし。これより、ロメーダ帝国首都アルメキオンへ向けて出発する!」
パシィン!と御者の鞭が跳ね、巨大な車輪が重々しく回転を始める。
かつて世界の脅威であった神話的厄災・クラーケンを討伐した猛者たちを乗せ、馬車列は朝日を浴びながら、悠然と街道を進み出した。
(サミットが終わったばかりなのに、また帝国へ向かうなんて……。……今度は、一体何が待ち受けているのかしら)
シリウス王子の「不用意な発言」の真意。
レグルス皇帝が仕掛けてくるであろう、次なる企み。
そして、馬車の物見席で、旅団全体の警備の指揮をとるハダル軍曹とその物見席をソワソワと気にするカノープス君。それを「ふふん」と余裕で見守る(?)他のメンバーたち。
様々な思いと波乱の予感を乗せて、ミルキーウェールズ王国一行の馬車は一路、帝国アルメキオンへと走り出したのだった――。
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