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ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。  作者: クワトロばなな


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生徒会会計ベガ・ドウィン

【放課後・廊下】

「やった、今日は生徒会がある!」

シリウス王子は鼻歌混じりに廊下を歩いていた。その足取りは軽い。

(俺はこの国の第一王子! 天下泰平! 戦争もない! 魔王もいない! 将来安泰! 王子最高! 王子最高!)

まさに人生の春を謳歌する彼の耳に、すれ違う生徒たちの話し声が飛び込んできた。

「おい! 邪神龍が復活したって噂、聞いたか?」

「えっ! 本当に!?」

一瞬、シリウスの動きが止まるが、すぐに首を振った。

(そんなのないない! デマに決まってるさ)

【生徒会室】

生徒会の活動は月・水・金の週三回。庶務として採用されたスピカは、緊張した面持ちで扉を叩いた。

「失礼します」

「どうぞ!」

中ではすでにシリウスがデスクに向かっていた。

「会長はお早いのですね」

「やるべきことは多いからね」

シリウスの爽やかな笑顔に、スピカは居住まいを正した。

「私が出来る事はありませんか?」

「そうだね。まずは、部活動やジョブ訓練施設の視察はどうだった?」

「忍者訓練施設で、惚れ薬を飲まされそうになりました」

「あそこはお茶目な人たちが多いからね」

シリウスはさらりと流すが、スピカは内心でツッコまずにはいられなかった。

(……お茶目で済むの?)

「その他は?」

「サムライ施設は訓練中だったため、挨拶が出来ませんでした。また折を見て伺います」

「そうか」

ふと、スピカは気になっていたことを尋ねてみた。

「ジョブ訓練施設といえば、その……会長もミスター・トグへもんに診断されたのですか?」

シリウスは不思議そうな顔をして答えた。

「僕はドーマ神殿の神官に適正証明書を書いてもらったよ」

(……やっぱり。あの恥ずかしい経験をしてないのね)

「今日はベガ会計と一緒に、各部活動等の学園祭の出展と予算についてのヒアリングを頼むよ」

シリウスがそう告げると、室内のソファから一人の美女が立ち上がった。学園四天王美女の一人、ベガ・ドウィンである。

「行くわよ! スピカ庶務」

「はい!」

二人は連れ立って廊下へ出た。

「学園祭が近いんですね」

「そうね。毎年盛大に開かれているわ!」

「どんな所が出展するんですか?」

「文化系の部活動がメインね。あと各訓練施設も、出展する所はあるわ」

「アークプリースト訓練施設も出展するんですか?」

「あそこは学園祭の時は閉鎖よ。でもプリースト訓練施設と共同で、毎年お守りを販売してるわ。……まずは、ここから行くわよ!」

【剣士訓練施設】

「四天王美女のベガさんと、編入生だ」

「やっぱえーな……」

訓練生たちの視線がベガに集まる中、代表の生徒が進み出た。

「うちの出展は、綿の入った皮袋の剣を使った模擬試合です」

ベガが鋭い視線で見据える。

「誰が出るの?」

「自分、パンカイニーがでます」

「……お相手願うわ!」

ベガが訓練用の剣を手に取ると、生徒は内心でほくそ笑んだ。

(アークプリーストとといっても、剣技は素人のはず。テクニックを見せつけて、惚れさせてやるぜ)

生徒の妄想の中では、攻撃をひらりと躱されたベガが「ずる〜い、イジワル〜」と甘えている。

(はっ? 無防備で間合いに入ってきた! 打ち込むか!?)

だが、現実のベガは容赦なかった。

ビシッ! と鋭い衝撃が走り、生徒の竹剣を瞬時に弾き飛ばした。

(うっ! 早い!)

「その程度では、うちの学園が笑われるわ! 当日はもっと気合いを入れなさい! ――予算削減!」

「えっ! 予算関係ある!?」

絶叫する生徒を無視して、ベガは次の場所へ向かった。

【吟遊詩人訓練施設】

狭い室内ではモブ君がギターのような楽器と格闘しているような姿も見える。

「僕たちの熱い想いを、素敵なメロディーにして奏でるつもりさ」

とリーダーのイサムがギターを抱えて気取ってみせる。


「一曲聴いてあげるわ」

ベガが許可を出すと、彼は仰々しくタイトルを告げた。


「タイトル『優しさは、包み込むように』。作詞・作曲、ツトム&イサム」

『君に優しさを求められた時、僕は戸惑う事しかできなかった。いつも心はイエス・ノー、イエス・ノー。あぁ。ああすりゃあーよかった……』


ベガ「……」

スピカ「……」

妙に重く、湿っぽい歌に二人は沈黙する。しかしイサムは止まらない。


「ベガ様の為にも一曲作りました! 」

「タイトル『ツンデレ・ダイナマイツ』!」

『愛しい貴女はツンデレツンデレ! ダイナマイトなツンデレツンデレ! ボンバー、ボンバー、爆発だ! あぁ、明日は何しよう……』

ベガ「……」

スピカ「……」

「……貴方にデレた覚えはないわ!」

ベガがぴしゃりと言い放つ。

「一つ忠告しておくわ。オリジナルソングは黒歴史になるわよ!」

「それも承知!」

「……好きにするといいわ」


【魔法生物部】

「イヤー、スピカ君。入部希望かい?」

部長のサムが笑顔で迎える。

「いいえ、違います。今日は学園祭の出展のヒアリングに来ました」

「そうかい! うちの部のエレガントな出展はこれさ!」

出展リストには、『魔法生物展示』の下に『ミスター・トグへもんの適正診断』『ミスター・トグへもんの恋占い』『ミスター・トグへもんの人生相談』……と書き連ねてある。

(結局、トグへもん頼み……またあれをさせるのね)

「スピカ君! ミスター・トグへもんの恋占い、試してみるかい?」

「いいえ、結構です」

スピカが断るより早く、ベガが宣告した。

「我が学園の貴重な筆頭魔法生物を酷使するのを禁じます。展示のみにしてください。――予算は削減します」

「あー、ミスター・トグへもんの魅力を大勢の人にわかってほしかったのに……」

【忍者訓練施設】

「よー、また会ったな。今日はカノープスと一緒じゃないんだ」

スティーブが親しげに声をかけてきた。

「はい」

「おい、生徒会役員の方々がお見えになったぞ! お茶を用意しろ!」

スティーブが奥に命じると、貫禄のある男が現れた。

「施設長のゾルゲンダー・ゴトウです。我施設は忍者屋敷見学と、忍者喫茶を提供予定です」

「喫茶の提供品はどれ?」

ベガが尋ねると、ゴトウはいくつかの茶器や菓子を並べた。

ベガは瞳を光らせる。

「『ファインド・イービル(邪悪探知)』!」

――惚れ薬、惚れ薬、惚れ薬。

(※この物語はフィクションです。実際の忍者とは異なります)

「忍者喫茶は却下! 飲食物の提供は禁止します。忍者屋敷のみにしてください。――予算削減!」

「在庫がー!」

絶叫する施設長を背に、ベガはきっぱりと告げた。

「お茶は結構よ」

【帰り道】

「ベガさん、凄いですね! 私はベガさんみたいに人にあんなに強く物を言える自信がないです」

スピカの本心からの言葉に、ベガは前を向いたまま淡々と答えた。

「私は自分の役割をするだけ。人にどう思われるかは関係ないわ。……でも、これでも余計な恨みを買わないように気を使っているのよ」

(……どの辺に気を使っていたんだろう?)

スピカが疑問に思っていると、ベガの背中に何かが貼ってあるのが見えた。

「ベガさん、背中!」

そこには、先ほど予算を削られた施設の生徒たちの仕業か、『バカ』『エロ』と書かれた紙が貼られていた。

「『ピュリフィケーション(浄化)』!」

ベガは魔法で一瞬にしてそれを消し去ると、ため息をついた。

「……子供ね」

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