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ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。  作者: クワトロばなな


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3/24

生徒会室にご同行下さい。

エキティカの泰平を象徴するメレンヘア学園。その静かな湖面に、一石が投じられようとしていた。


生徒会室。

カノープスが提出した新たな報告書を、生徒会長シリウス・ランスターは満足げに眺めていた。

「ふむ……。好きな食べ物はカレー。適性ジョブはアークプリースト、か」

シリウスは満足げに口角を上げ、羽ペンを置いた。

「よし、決定だな」


1. 運命のくじ引き

スピカが編入して二日目の朝。教室には、まだどこか落ち着かない空気が漂っていた。

「おはようございます」

教壇に立った教師が、穏やかに微笑む。

「スピカ・マセット君。まだ二日目だが、この学園はどうかな?」

「はい。まだわからないことも少なくありませんが、皆様が親切にしてくださるので、心配はありません」

スピカが丁寧に答えると、教師は「それはよかった」と頷いた。

「さて、この学園の生徒は全員、いずれかの委員会に入ってもらう決まりだ。たしか、この学年は二つ空きがあったな。図書委員と、もう一つは……なんだったかな?」

教師は二枚の紙片をいれた箱を差し出した。

「スピカ君、それからモブ君。くじを引いてくれ」


(私、本が好きだから図書委員がいいな……!)

スピカは祈るような気持ちで、箱の中の紙を取り出した。しかし、そこに書かれていた文字は、彼女の希望とは程遠いものだった。

『魔法生物飼育委員』

「……いやな予感しかしまセーーん」

挿絵(By みてみん)


スピカの呟きも虚しく、教師が告げる。

「はい。ではスピカ君は魔法生物飼育委員、モブ君は図書委員だ。放課後、それぞれ生物飼育室と図書館へ行って説明を聞くように。ああ、スピカ君。生物飼育室へは運動着に着替えていくんだぞ」

「運動着……?」

嫌な予感は、確信へと変わりつつあった。

2. 筆頭魔法生物、現る

「あー、一般教科って大変……」

放課後。スピカは机に突っ伏していた。隣では友人のクレア・シャーマルが苦笑している。

「スピカは適性ジョブがアークプリースト候補だから、基本のプリースト授業は私と一緒ね。あちらの方は大丈夫?」

「ええ、小さな頃から牧師様に教えを頂いているから、なんとか……。でも一般教科は、叔母様に半年間家庭教師をつけていただいたけど、やっぱり追いつくのが大変だわ」

「大丈夫よ、わからないことがあったら私たちが教えるわ」

「ありがとう、クレア」

そんな会話を終え、スピカは重い足取りで飼育委員会の生物飼育室へと向かった。


「ようこそ、魔法生物飼育委員会へ! 僕は委員長のサム・ペンサーだ」

扉を開けるなり、魔法生物を愛してやまない生徒、サムが熱烈な歓迎を見せた。

「君も魔法生物の美しさ、気高さに惹かれてこの委員会に入ったんだね?」

「いえ、そういうわけでは……」

「紹介しよう! 我が学園の筆頭魔法生物――ミスター・トグへもんだ!」

そこには、見覚えのある奇妙な生物が鎮座していた。

「存じております……」

「やー、スピカちゃん。また会ったね」

トグへもんが気安く声をかけてくる。

サムは恍惚とした表情でトグへもんを指差した。

「見てくれたまえ! このミスター・トグへもんの美しいフォルム、機能美を!」

「いやー、それほどでも」

「我が委員会の仕事は主に、魔法生物たちに食事を支給することにある。活動は週に一度。まずはミスター・トグへもんの食事が最優先だ!」

スピカは恐る恐る尋ねた。

「あの……ミスター・トグへもんはいったい何を召し上がるのですか?」

「それはね――」

サムが見覚えのあるシャンプーハットローブを被せて、答えるより早く、トグへもんが口を「かぽっ」と開けた。

「えっ」

「いただきまーす」

「ひーっ!」

トグへもんはスピカの頭部をパクりと咥えると、レロレロと舐め回した。

「魔法生物の食事は主に『魔力』だ。君の魔力が彼らの糧となる。一回の食事で一週間は大丈夫だよ」

パカ

「本当は僕、昨日の適性診断の時に君たちの魔力を少しいただいたから、あんまりお腹空いてなかったんだけどね」

(おい……!)

スピカの引きつった顔を見て、サムが気を利かせたように言った。

「本来なら今週は僕が捧げたかったんだが、新入会の君のために遠慮したんだ。さあタオル、シャワーを浴びておいで!」

「遠慮なさらなくても良かったです……」


3. 青天の霹靂

委員会を終え、スピカが廊下を歩いていると、女子生徒たちの黄色い声が聞こえてきた。

「あっ、見て! 生徒会長のシリウス殿下よ」

「嗚呼、今日も麗しいわ……」

その中心で、シリウスは光を背負うように歩いていた。

(生徒会長最高、生徒会長最高、生徒会長最高……! 生徒会長になって本当に良かった!)

内心でそんな叫びを上げているとは露知らず、シリウスは優雅に笑った。

「はーっはっは!」

スピカが校門近くの掲示板を通りかかると、人だかりができていた。

「あーあ、あの娘、ちょっといいなと思ってたんだけどな」

「王子のハーレムに組み込まれたか……」

嫌な予感がして掲示板を覗き込むと、そこには特大の告知が貼り出されていた。

『スピカ・マセットを生徒会庶務に任ずる』

「えっ、生徒会庶務!?」

そこにクレアたちが駆け寄ってくる。

「ちょっとスピカ、あなた凄いわ! 生徒会役員といったら学園の憧れの的なのよ!」

「そ、そんなにすごいの?」

「みんな上級貴族の出で、上級職ばかりよ。まず筆頭は生徒会長のシリウス殿下。容姿端麗、頭脳明晰、この国の第一王子で、適性ジョブは魔法剣士」

「続いて、副会長のルスカ様。プライドだけは鋼鉄よ! 適性ジョブはパラディン!」

(プライド鋼鉄って……)

「書記はデネブ・アーテュス様。魔法庁長官アーテュス侯爵令嬢で、学園四天王美女の一人よ。美貌はもちろん成績優秀で殿下の幼なじみ。生徒会ではあの殿下も頭が上がらないらしいわ! 適性ジョブはアークウィザード」

(四天王美女?)

「会計はベガ・ドウィン様。彼女も学園四天王美女の一人。言い寄る男子生徒を何人も撃沈している鋼鉄の令嬢ね」

(鋼鉄多いわね……)

「適性ジョブはなんとアークプリーストと薬剤師。スピカと同じ授業を受けるんじゃないかしら。ちなみに学園四天王美女はもう一人いて、最後のひとつは空席よ!」

(空席だったら御三家美女とかで良いのでは?)

「そして最後の一人は……」

「私、生徒会庶務。カノープス・チュワートスと申します」

「――ひっ!」

背後から突然響いた声に、スピカは飛び上がった。いつの間にか、中肉中背の、いわゆる見た目はごく普通の少年がそこに立っていた。

「ミス・スピカ・マセット。生徒会長がお呼びです。生徒会室にご同行下さい」

4. 招かれざる編入生?

生徒会室。重厚な扉の向こうでは、火花が散っていた。

「会長! どういうことでしょうか?」

書記のデネブ・アーテュスが、シリウスを問い詰めていた。

「なんのことだ」

「新しく任命された庶務のことです! いささか軽率ではありませんか? 編入したてで右も左もわからぬ者に、役員が務まるとは思えません」

「私は構いませんわ。人手が足りませんもの」

会計のベガが涼しい顔でフォローを入れる。

コンコン、と控えめなノック音が響いた。

「失礼します。編入生を連れて参りました」

「カノープス君か。デネブ書記、議論は後にしよう。……入室を許可する。丁寧にご案内願うよ」

扉が開き、カノープスに導かれてスピカが入室した。……が、その後ろになぜか、先ほど図書委員になったはずの「モブ君」も付いてきていた。

(……だから誰だよ、こいつ!)

シリウスは内心で毒づき、カノープスを振り返った。

「あのー、カノープス君。わかってやってる?」

「申し訳ございませんが、ご退室願います」

ベガに促され、モブ君は無言で退場していった。

気を取り直して、シリウスは椅子に深く腰掛け、スピカを見据えた。

「やあ、初めましてではないね、ミス・スピカ・マセット。改めて自己紹介させてもらうよ。この学園の生徒会長、シリウス・ランスターだ」

(えっ、あの時のハンサムさんが生徒会長……ということは、この国の王子様!)

スピカは慌てて頭を下げた。

「はい。先日は殿下とは知らず、失礼いたしました」

「君には今日から生徒会庶務として、この学園のために尽力してもらう」


「大変光栄ですが……なぜ、私なのですか?」

スピカの純粋な問いに、シリウスは不敵に微笑んだ。

「そうだなぁ。僕の『勘』かな?」

(ここも曖昧だわ!)

スピカは食い下がった。

「では! 今日任命された『魔法生物飼育委員』は、辞退してもよろしいでしょうか?」

「いや。そこは兼務で!」

「兼務かーい!」

こうして、スピカの多忙すぎる学園生活が幕を開けたのである。


挿し絵(予定)も含めて色々思考錯誤しています。

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