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ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。  作者: クワトロばなな


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劇動!レンヘア学園祭⑥ (イサムとランデブー?アルタイル包囲網)

【臨時屋外カフェ】

パラソルの下、白いテーブル席に座ったスピカは、そわそわと周囲を見渡していた。

「あれ! お母様達、まだかしら……」

約束の時間を少し過ぎている。視線を彷徨わせていると、不意に上から影が落ちた。

「君! 一人?」

見上げると、そこにはキザな笑顔を浮かべた吟遊詩人訓練生のイサムが立っていた。スピカは少し身を引いて応じる。

「いいえ、人と待ち合わせをしています」

「君の恋人かい?」

「いいえ、違います」

スピカが即座に否定すると、イサムは待っていましたとばかりに髪をかき上げ、スピカをじっと見つめてきた。

「僕のライブ、見てくれてありがとう。……そこで君と僕の目が合った。僕は運命を感じたよ」

「偶然です」

スピカは引きつった笑みを浮かべ、心の中で激しく突っ込んだ。

(いやー……スゲー勘違い!)

あまりの猛アタックに、スピカは話を逸らそうと切り出す。

「ベガさんの為に歌を作っていたんじゃないですか?」

「あぁ。あの時はね。でも、君に一目会った時から、僕の心は奪われてしまったのさ」

イサムは胸に手を当てて朗々と語る。

「今度、君の為に曲を作るよ。だから今晩、第2部の舞踏会で僕と踊らないか?」

(ゲッ! いきなりガチのやつキター!)

第2部の舞踏会といえば、恋人同士や意中の相手と踊る「本命」の時間だ。スピカは慌ててお決まりの口実を並べた。

「あの第2部の舞踏会の時間は生徒会のシフトがあるので出られません。ごめんなさい」

「そんなもんランデブーして、僕と踊り明かそう!」

(いや。そういう訳にはいかないから。困ったわ……これがさっきの『恋愛運絶好調』の成果なわけ!?)

スピカが本気で頭を抱えそうになったその時、背後から地をうような低い声が響いた。

「君、うちの娘に何の用かね? ――ギロリ」

凄まじい威圧感と共に現れたのは、スピカの父だった。

「ギクッ!?」

イサムの身体が目に見えて硬直する。

「私はバージニア領マセット伯爵である。君はどちら様のご子息なのかな?」

貴族の、それも一領主としての重圧に、イサムの顔から見る見る血の気が引いていく。

「じゃあ、今回はこれで! また!」

イサムは脱兎のごとく逃げ出していった。それを見送りながら、スピカは冷ややかに呟く。

(またはないわよ!)

マセット伯爵はフンと鼻を鳴らし、腕を組んだ。

「なんだ最近の若い者は。ろくに挨拶もできんのか?」

「助かりましたわ、お父様!」

スピカが笑顔で言うと、伯爵は「まぁ、これくらい……」と顔を背けて少し照れた。

「スピカおねーちゃん、会いたかったよ!」

ポルックが元気いっぱいにスピカの腰に抱きつく。

「私もよ! ポルック!」

「僕も会いたかった」

続いてルックスが少し恥ざかしそうに手を振る。スピカは優しく微笑んだ。

「ルックス! もちろん貴方にも会いたかったわ」

ポルックは弾んだ声で、今日楽しんだ出し物のことを話し始めた。

「あのね、おねーちゃん! クマムシマンの的あてゲーム、面白かったよ! 僕は顔面にボールあてたんだ!」

(……クマムシマンさん、メンタル大丈夫かしら)

スピカは脳裏に浮かんだ最強防御生物の繊細なメンタルを心配しつつ、ルックスを見る。

「僕は忍者グッズを買ってもらった」

「二人とも楽しんでもらえて良かったわ。……お父様、お母様もお変わりないようで、嬉しいです。それと、素敵なドレスをありがとうございます」

スピカが両親に向き直って一礼すると、**義母(お母様)**が上品に微笑んだ。

「ドレス、間に合ってよかったわ。貴女も元気そうね」

「はい」

「メレンヘア学園の学園祭、懐かしいわね、貴方!」

「ああ」

マセット伯爵の相槌に、スピカは目を丸くした。

「えっ? お二人もこの学園出身なんですか?」

「ええ。学園祭で伯爵が、第1部の舞踏会に誘ってくれたのが始まりよね」


【回想】

学園祭の夕暮れ、若き日のマセット伯爵が、少し気取った様子で手を差し伸べている。

『君は聖女を輩出したかもしれない家系の出なんだってね。僕と踊ってもらえませんか?』


「まぁ、そのあと結婚して、うちの実家が没落したりして色々あったけど、今は幸せだわよねー」

義母は遠い目をしながら、ふふっと笑った。

「(跡取りができなくて離縁されそうになったけど、二人を産んで大逆転よ!)」

その生々しい心の声が漏れ聞こえてくるようで、スピカは引きつった笑顔を浮かべるしかなかった。

(いやー……聴きたくない、貴族の生々しい話きたー……)


【サムライ訓練施設】

一方、サムライ訓練施設では、激しい木刀のぶつかり合いが終結を迎えていた。

「勝負あり! 勝者、アルタイル!」

審判のサナダが声を張り上げる。アルタイルは木刀を収め、深く一礼した。

「お手合わせありがとうございました」

对戦相手のジヨン・フィリップは、膝をついて悔しそうに地面を叩いた。

「無念……! サムライとはこれ程の者なのか……」

その圧倒的な強さを特等席で見届けていたベガが、すっと立ち上がる。

「私は生徒会役員のシフトがあるから戻るわ!」

そして、未だに自分へ熱視線を送ってくる周囲の男子生徒たちを冷たく見下ろした。

「貴方達! 私を舞踏会に誘いたければ、あのサムライを倒してからにしなさい! それ以外は受け付けないわ!」

ベガがアルタイルを指し示す。突然の巻き込み事故に、アルタイルは目を剥いた。

「あんた、なんかの黒幕か!?」

ベガは彼の抗議を完全に無視し、綺麗にターンを決めて歩き出す。

「失礼するわ」

残された男子生徒たちの間に、不穏な空気が流れ始めた。

「よし……ここは、一時結託しよう」

一人の生徒が声を潜めて提案した。

「奴は副会長。さっきのソードマスターとの戦いで相当疲れている。この試合は一人で何回でも挑戦できるルールだ。それぞれが奴のスタミナを奪うような戦い方をしよう。疲れたあいつに、誰が止めを刺しても恨みっこなしだ!」

「……おーっ!!」

殺気立つ男たちの結束に、アルタイルは額に汗を流しながら、これから始まる地獄の連戦を覚悟するのだった。


泰平の世を謳歌するミルキーウェールズ王国。メレンヘア学園の学園祭は、いよいよ最高潮である「舞踏会」の時間を迎えようとしていた。

次回いよいよ舞踏会!お楽しみに!

ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると励みになります!」

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