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ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。  作者: クワトロばなな


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17/25

乱舞!メレンヘア学園舞踏会第一部①(ハードル低)

【生徒会室】

「サムライとの試合。惜しかったわね」

ベガの言葉に、ルスカは悔しそうに拳を握りしめた。

「時間制限さえ無ければ……!」

ひとしきり悔しがったルスカだったが、ふと目の前の光景に気づいてすっ頓狂な声をあげた。

「って言うか! あんた何してる!?」

「見れば分かるでしょ。舞踏会用のドレスに着替えているのよ」

ベガは悪びれる様子もなく、あられもない下着姿のままで答えた。

「そんなもん隣の部屋でやれ!」

「誰か対応が必要な人が来たらどうするの?」

正論のようで全く正論ではないベガの返しに、ルスカは顔を真っ赤にして詰め寄る。

「あんた! そんな格好で対応する気か!? あんたが着替えている間、私が一人で対応するから大丈夫だ!」

それを聞いたベガは、ふっと表情を緩めた。

「ではお言葉に甘えさせていただくわ」

ベガが着替えのために奥へ引っ込むと、残されたルスカは呆然と己の手を見つめた。

(これがラックアップ(幸運度上昇)の効果か……?)

(ラッキースケベという奴か…?)

静まり返った室内で、ルスカはふと冷静になる。

(……止めなきゃ良かったかな)


【臨時屋外カフェ】

「じゃあ、私達はこの辺で失礼するわね」

叔母が席を立ち、マセット伯爵や子供たちを促した。スピカは笑顔で手を振る。

「ランチ、ご馳走様でした。色々ありがとう! 皆様も、お元気で!」

「貴方も舞踏会でいい相手が見つかるといいわね! 頑張りなさい!」

叔母の温かい激励にスピカが深く頷いたその時、ポルックが満面の笑みで大声を張り上げた。

「スピカおねーちゃん! 今度一緒にお風呂に入ろうねー!」

その無邪気な一言が、カフェの喧騒を切り裂いた。周囲の生徒たちが一斉にこちらを振り返る。

「えっ? なんだ? なんだ? お風呂がどーした?」

「あの編入生、お風呂がどうとか言わなかったか?」

一瞬にして向けられた疑惑と好奇の視線に、スピカは引きつった笑顔のまま心の中で叫んだ。

(ポルック君。うおーい……!!)

冷や汗を拭いながら、スピカは空を見上げる。日が傾き、美しい夕闇が広がり始めていた。

「そろそろ一部の舞踏会の時間だわ(ハードル低いやつ)。……やっぱり、せっかくだからドレス着ちゃおうかな」

【忍者屋敷】

「中々繁盛しましたね!」

片付けを終えたハダルが、晴れやかな笑顔で周囲に告げた。

「私、先上がりますね!」

「お疲れ様!」

仲間の忍者に手を振ると、ハダルは脱衣所へと急いだ。華やかなドレスへと着替え、大ホールへと向かって廊下を全力で駆け抜けていく。その必死な後ろ姿を見送りながら、スティーブはぽつりと呟いた。

「健気だねー」

【女子寮・デネブの部屋】

美しいドレスに身を包んだデネブが、鏡の前で髪を整えていた。後ろに控えるメイドが、うっとりとした表情で手を合わせる。

「私はお嬢様程、美しい姫君を存じませんわ」

「ありがとう」

「きっと殿下もお嬢様の虜になりますわ」

デネブは鏡の中の自分を見つめ、静かに微笑んだ。

「だといいわね」

【女子寮・廊下】

ドレスに着替えたデネブと、これから着替えに向かうスピカが廊下ですれ違った。圧倒的なオーラを放つ令嬢の後ろ姿を、スピカは思わず振り返って見つめる。

(凄い綺麗な人……デネブ様?)

自室に戻ったスピカも、用意されていたドレスへと着替え始めた。鏡に映る自分の姿を見つめながら、ふと昼間の光景が頭をよぎる。

(そういえば、第一部の舞踏会の時間はデネブさんと会長は二人きり。二人は何を……)

そこまで考えて、スピカは大きく首を振って思考を打ち消した。

(ついつい着替えてしまった。ダンスの相手もいないのに……なんか私、自意識過剰の欲しがり屋さん?)

「スピカ庶務!」

廊下に出ると、そこにはドレス姿のベガが立っていた。

「ベガ会計!?」

(この人も別次元でお綺麗!)

スピカが見とれていると、ベガは手にした大きな機材を差し出してきた。

「良いところであったわ! 手伝ってちょうだい」

(……拡声器?)

【大ホール(舞踏会会場)】

きらびやかな大ホールには、すでに多くの生徒たちが集まり、ロマンチックな音楽が流れ始めていた。そこへ、スピカの声が拡声器を通して響き渡る。

「皆さん! 舞踏会を始める前に、生徒会から注意事項がありまーす。ベガ会計、お願いします」

ステージの上に立つベガの姿に、会場から地鳴りのような歓声が上がった。

「ベガ様だ!」

「お美しい!」

ベガは毅然とした態度で拡声器を口元に寄せた。

「メレンヘア学園の伝統を重んじる皆さんが、こうして舞踏会に集ってくれたことを歓迎します。この催しを正しく受け継ぐことは、我々生徒会の使命。だからこそ、今宵も『清く』あるべきだと思います。この舞踏会における不正は許しません。」

「今から邪な呪文や薬の効果を解除します。――」

「ディスペル・イビル!(邪心解除!)」

ベガが放った神聖な光がホール全体に広がった瞬間、あちこちで悲鳴や怒号が巻き起こった。

「あれ? なんで私が貴方とダンスしようとしているの!?」

「どうして僕が君とここに……?」

「あんた! 薬を盛るなんて最低ね! ――ボカッ!」

あちこちで繰り広げられる手痛いビンタや掴み合いの喧嘩を、スピカは実況し続けた。

「結構な数の修羅場が発生してまーす。はい! 舞踏会でのチャームの呪文、巻物、惚れ薬の使用は禁止でーす。違反者はご退場願いまーす」

一通りの取り締まりを終え、ベガはスピカに向き直って微笑んだ。

「ありがとう。貴女ももう自由にしていいわ! 楽しみなさい! じゃあ」

「あっ、はい……」

(相手、いませんが……)

取り残されたスピカは、華やかなペアたちを所在なげに眺める。

その姿を、会場の隅からじっと見つめる男がいた。

カノープスは、壁際に佇むスピカから目を離せずにいた。

(スピカさん……!)

その時、ホールの入り口が騒がしくなった。生徒たちが波を打つように道を開けていく。

「誰だ、あの人……」

「第二王子のリゲル様だ!」

「珍しく正装でおられるぞ!」

「流石シリウス様のご兄弟だけあって、こうしてみると麗しいわ!」

黄色い歓声が上がる中、リゲルは真っ直ぐに歩みを進める。その鋭い視線は、周囲の誰でもなく、ただ一人の少女へと向けられていた。

「誰の所に向かっていくんだ……?」

ざわめく群衆をかき分け、リゲルはスピカの前でピタリと足を止めた。そして、誰もが息を呑むほど優雅な動作で、そっと右手を差し出した。

「スピカさん。」

「僕と友達になって欲しい」

「踊っていただけますか?」

14話のラックアップの伏線回収いかがでしょうか?リゲルランスター登場。スピカどうする?カノープスは?次回ご期待ください。

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