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ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。  作者: クワトロばなな


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劇動!メレンヘア学園祭④(決着!アルタイルvsルスカ)

熱気に包まれるメレンヘア学園の学園祭。スピカ・マセットは、人混みをかき分けながら、ようやく目的地であるサムライ訓練施設へとたどり着いていた。

「ここが、サムライ訓練施設ね」

敷地内に一歩足を踏み入れたスピカは、その盛況ぶりに目を丸くした。

「わぁ、結構人がいる……」

サムライ訓練施設の特設舞台を囲むように、大きな人だかりができていた。さらに、舞台の脇からはズラリと長い列が伸びている。

(なんか行列が出来てる。サムライへの挑戦者かしら?)

スピカが不思議そうに視線を巡らせていると、行列の先頭に、見覚えのある美しい黒髪の女性が座っているのが目に入った。

(あっ、ベガさん!)

学園四天王美女の一人であり、生徒会会計のベガ・ドウィンが、観客席の最上段に凛々しく腰掛けている。挑戦者たちの行列かと思いきや、よく見ると並んでいるのは全員男子生徒で、その視線はサムライの舞台ではなく、一様にベガへと注がれていた。

「ベガさん。僕と第一部の舞踏会でダンスを踊ってください」

列の先頭にいた男子生徒が、真っ赤な顔で緊張しながらも、必死に手を差し伸べた。

それに対し、ベガは表情一つ変えない。すらりとした指先で、デスクの下からおもむろに一本の木札を取り出した。

パッと掲げられたのは、赤々と大きく**【✖】**と書かれた印の札だった。

ベガは一切言葉を発することなく、ただ冷徹な視線で男子生徒を見つめ、✖の札を突き出し続ける。

「はは……」

男子生徒は乾いた笑い声を残し、ガックリと肩を落として退場していった。

(省エネすぎる。しかもベガさん、✖の札しか持ってないし。最初から断る気満々じゃない!)

スピカが心の中で猛烈にツッコミを入れている間も、ベガは次の男子生徒に機械的に✖の札を突き出していた。だが、彼女の鋭い瞳は、時折受付の手元から離れ、特設舞台の上をじっと見つめている。

(ベガさん、アルタイルさんをじっと見てる……。もしかして格闘好き? それとも、アルタイルさんの事が……?)

ふと、スピカはベガの視線の先にある舞台の上へと目を向けた。そこでアルタイルと激しく火花を散らしている人物の姿を捉えた瞬間、スピカはあっと声を上げそうになった。

(よく見たら、戦っているのはルスカ副会長だわ!)

舞台の上では、大盾を構えたルスカが、じりじりとアルタイルとの間合いを詰めていた。しかし、木太刀から槍と短剣の二刀へと武器を切り替えたアルタイルは、一向に自分から仕掛ける気配を見せない。張り詰めた沈黙に耐えかねたように、ルスカが硬質な声を響かせた。

「どういうつもりだ。なぜかかってこない」

対するアルタイルは、短剣の重さを確かめるように軽く手首を回しながら、ひょうひょうとした態度で答えた。

「べつに。こっちから仕掛ける必要がないから」

「それが武士道というやつか?」

ルスカが眼鏡の奥の目を険しくする。アルタイルは「うーん」と少し首を傾げた。

「まぁ。そうと言えばそうかな。武士が戦うのは最後の手段というか、出来るだけ刀を抜かないのが良いサムライだ」

「のんびりとしたものだな」

フン、と鼻で笑うルスカ。しかし、アルタイルは不敵な笑みをその端整な顔に浮かべると、逆にルスカを真っ直ぐに見据えた。

「そちらこそ、のんびりしていていいんですか? 生徒会ってそんなに暇なんですか?」

「なっ……!」

ルスカの背筋に冷たいものが走った。

(まさか奴、私の13:00からのシフトを知っている……!?)

時計の針は確実に進んでいる。このまま時間切れになれば、生徒会室の常駐シフトがあるルスカは強制的に不戦敗、あるいは途中棄権になってしまう。アルタイルの意図を見抜いたルスカは、焦燥感を怒りに変えて叫んだ。

「アルタイル君! 時間切れ引き分け狙いなんて卑怯じゃないか、それでもサムライか!?」

「はい、俺は負けなければいいんで」

悪びれもせず言い放つアルタイルに、ルスカはプライドを激しく刺激された。これ以上の膠着は許されない。ルスカは舞台の端に立つ審判へと鋭い視線を向けた。

「審判! 魔法は使っても良いのか?」

腕を組んで戦況を見守っていた師匠のデューク・サナダが、豪快に髭を揺らして答える。

「構わん」

「後悔させてやる!」

許可が下りるや否や、ルスカは手持ちの剣を天に掲げ、凄まじい魔力を練り上げ始めた。パラディンとしての本領発揮である。次々と自己強化呪文バフの詠唱が、ルスカの口から高速で紡ぎ出されていく。

「ミドルストレンクスアップ!(筋力増強)」

ルスカの肉体を黄金のオーラが包み込み、筋肉が引き締まる。

「パワーウエポン(武器強化)」

手にする片手剣が、キィンと高い駆動音を立てて鋭い輝きを帯びた。

「ディテクトスキルアップ!(感知能力強化)」

ルスカの瞳の奥に魔方陣が浮かび、アルタイルの細かな呼吸や重心の移動が完全に視覚化される。そして最後に、ルスカは静かに微笑んだ。

「ラックアップ!(幸運度アップ)」

(運も実力のうち……!)

完璧な布陣を整えたルスカは、大盾を構え直すと、地面の石畳を爆音と共に踏み鳴らした。

「行くぞ!」

凄まじい突進速度。ルスカの放った神速の一撃が、アルタイルの構える槍の柄へと叩きつけられた。

「ふん!」

――バキィシィッ!!

鈍い破壊音が響き渡り、アルタイルが持っていた槍が、中央から真っ二つにへし折れた。

「強化呪文により、私の一撃はもはやモンスタークラスだ!」

圧倒的なパワーの差を見せつけ、ルスカは勝ち誇ったように叫ぶ。

「怪我をしたくなかったら降参しろ!」

だが、アルタイルは槍を手放しざまにバックステップを踏み、手元の短剣を逆手に持ち替えて鋭く身構えた。その目に怯えは一切ない。

「奥義、疾風乱打!」

ルスカの剣が、嵐のような連打となってアルタイルを襲う。

(連打攻撃なのに、一振りひとふりが重い……!)

アルタイルは防具をつけた体を翻し、最小限の動きでそれを紙一重で躱していく。しかし、ルスカの猛攻は止まらない。

「もう一振り!」

ガッ!!!

強烈な縦振りが、アルタイルが咄嗟に掲げた短剣の腹に直撃した。

「うおっ!」

短い悲鳴と共に、アルタイルの体が一気に数メートル後方へと弾き飛ばされる。体勢を崩したアルタイルを追い詰めるべく、ルスカは勝利を確信して踏み込んだ。

「そんな短剣でいつまでも防げるものか! その短剣もへし折ってやる! 奥義! 疾風雷撃!」

ルスカの剣が、雷光をまとってアルタイルの脳めがけて振り下ろされる。誰もが「決まった」と思ったその瞬間――。

パシーン!!!

甲高い乾いた音が響いた。

ルスカの視界が、一瞬だけ不自然に跳ね上がる。アルタイルが体勢を崩したのは罠だった。彼は驚異的な体幹の強さで復帰すると、ルスカの剣の軌道を、短剣の平で横から強烈に弾き放ったのだ。

「うっ!」

完全に予測していなかった衝撃に、今度はルスカの体が大きくのけぞり、胸元が無防備に晒される。

アルタイルはその一瞬の隙を見逃さず、懐へと滑り込んだ。

「はい、空きあり!」

目にも留らぬ速さで、アルタイルの短剣の柄が、ルスカの脇腹へと正確に突き入れられた。

ドス

「――胴!」

サナダの鋭い声が響く。

ルスカは動きを止め、自分の腹に当てられた短剣を見つめて呆然とした。アルタイルはふっと息を吐き、短剣を引くと、ニヤリと笑ってみせた。

「あんたの作戦、貰ったよ」

「大振りになったところを……」

ルスカは、自分が先ほど仕掛け損ねた「大振りの隙を狙う」という戦術を、全く同じ形でやり返されたのだと気づき、悔しさに唇を噛んだ。

サナダが厳かに右手を掲げる。

「それまで! 勝者、アルタイル!」

「「「おぉーーーーーっ!!!」」」

観客席から地鳴りのような大歓声と拍手が沸き起こる。その熱狂の渦の片隅で、一部始終を目撃していたスピカは、ただただ頬を引きつらせて呟くしかなかった。

「……なんか、バトル漫画?」

メレンヘア学園の学園祭は、生徒会役員たちのプライドと、それを取り巻く者たちの熱い闘志によって、ますます予測不能な展開へと突入していくのだった。

次回新キャラ登場!アルタイルの奮闘に黒幕の影が。ご期待ください。

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ブックマークも大歓迎!!!よろしくお願い申し上げます。

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