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ご先祖様が聖女様かどうかも疑わしい私が王子様達の獲物にされてます。【第一部完結済み 26話(忍者失格)まで】  作者: クワトロばなな


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第四章・第23話:規格外の結界と、皇帝の役得

【賢者の書】に『ep.117』が刻まれてから16日目。

空からの厄災発生予想日まで、あと12日――。

ミルキーウェールズ出発まで、残すところあと3日となった。


メレンヘア学園の正門前。広い訓練場に緊迫した空気が走る。


タイムキーパーを務めるカノープスが、手に持った魔導時計を見つめながら鋭い合図を送った。


「スピカさん! お願いします!」


「了解しました!」


スピカは深く息を吐き出すと、己の内に眠る膨大な魔力を、文字通り力任せに一気に振り絞って叫んだ。


「――『バリアコンストラクション・ラージ(広域多重結界陣)』!!」


ゴゥッ!!! という、大気を激しく震わせる凄まじい風圧が発生した。直後、スピカの小柄な身体から、常識を遥かに逸脱した眩い光の奔流が噴き出した。


光は見る見るうちに巨大な面となって広がり、城塞都市シャオハイユの南壁を模して設定された学園正門前の長大な塀を、遥かに超えていく。


幅およそ5キロメートル、奥行き300メートル、高さ20メートル――長方形の超巨大結界が、あっという間に空間を切り取って構築された。


ロメーダ帝国から転移魔法で極秘視察に訪れていた書記官であり、若き天才アークウィザードのアルギエバは、目の前の惨状とも言える光景に驚愕の表情を浮かべ、碧眼を丸く見開いた。


だが、スピカの演武はそれだけでは終わらない。


「『エンチャント・ヘビーウォール(効果付与:堅牢なる壁)』!」


スピカが追加の呪文を叩き込むと、光の膜は瞬時に重厚な実体を伴い、鉄壁の防衛壁へと変貌を遂げた。


視察に同伴していたロメーダ皇帝レグルスは、スピカの力を当然とでも言わんばかりに深く頷くと、凛とした声で指示を出した。


「スピカ・マセット! あと左右に1キロメートルほど、結界を拡張して展開することは可能か?」


「目標物――シャオハイユの南壁のような目印があれば、出来ると思います!」


「ふむ、本番ではそれで頼むぞ」


「了解しました、皇帝陛下!」


続いて、実践的な耐久テストへと移行した。


ミルキーウェールズ魔法学園ゼンビヤ代表のアークウィザード・ジョーンズとメアリー、そしてメレンヘア学園が誇るアークウィザードの赤髪ジョニーとデネブの4名が、展開された防衛壁へ向かってありったけ級の上級水流呪文を次々と叩き込む。


「『ハイドロ・バースト・ランス(穿空の水衝槍)』!」


「『ヴォルテックス・プレッシャー(渦潮の圧殺牢)』!」


「『タイダル・キャノン(波濤の重圧砲)』!」


激しい水煙と爆音があたりを包み込む。流石のスピカの巨大結界も、大陸名だたるアークウィザードたちの猛攻を受け、みしみしと音を立てて亀裂が走り始めた。


そこへ、第2聖女候補ベガ、第3聖女候補ヴィンデミア、そしてメレンヘア学園校長にしてハイアークプリーストのドン・ウイリーが進み出で、即座に結界強化の呪文を唱え上げた。


「『リインフォース・バリア(結界強化)』!」


「『インビンシブル・ウォール(絶対防壁)』!」


聖職者たちの支援を受けたことで、スピカの防衛壁は見事に持ち直し、荒れ狂う激流を完璧に受け止め切ってみせたのだった。


銀髪碧眼の天才美女アルギエバは、開いた口が塞がらない様子でその光景を注視していた。


(……なんなの……? 聖女って、何でもありなの……!?)


若くして世界中のあらゆる高度な魔法に触れ、天才の名を欲しいままにしてきた彼女の眼前に示された、理解不能な「奇跡」。


(こんな巨大で堅牢な結界……アークウィザードが100人集まったって作れないわよ……!)


もはや魔法の領域を超え、「神のみわざ」としか形容のしようがなかった。


呆然と立ち尽くすアルギエバの肩を、同格の天才アークウィザードであるデネブがポンと優しく叩いた。


「……あの子は特別なのよ」


そのやり取りを少し離れた場所から眺めていた第3聖女候補ヴィンデミアは、静かに、しかし強く己の拳を握りしめていた。

◇

防衛壁展開訓練の一連の視察と性能確認を終え、レグルスとアルギエバは帝国への帰国準備に入った。


転移魔法の小さな魔法陣の中。必然的に、身の丈の整った皇帝レグルスが、美しいアルギエバに後ろから抱きつくような格好となる。


「余はシャオハイユ防衛作戦の準備ゆえ、多忙につきこれにて失礼する。……スピカ・マセット、シャオハイユでまた会おう」


レグルスはキリッとした表情で格好をつけて別れの言葉を述べたが、いかんせん体勢が体勢だけに、どうにも絵面が決まっていなかった。


スピカはくすりと笑いを漏らしながら一礼した。


「レグルス皇帝陛下もお身体にはお気をつけて」


アルギエバもどこか頬を朱に染めながら、急いで呪文を詠唱する。


「『テレポート(転移魔法)』!」


光の奔流と共に消え去った二人。


美貌の部下に抱きつきながら必死に威厳を保とうとしていたレグルスの姿を思い返し、スピカはどこか甘酸っぱく、むず痒い気持ちになっていた。


(あら〜〜〜? レグルス様ったら。綺麗なご婦人と密着なさって……随分とお役得でございますわねぇ?)


心の中で、すっかりお馴染みとなった悪役令嬢風のイヤミをニヤニヤと呟くスピカであった。

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