方法
うわあ、性格わる。
でも、本当に褒めてる。
◆
対象地
対象地は、ミッチェル領西部荒野のうち、既存の管理地で実用されている導排水装置を延伸し得る一帯である。土壌はもともと死の花の生育に適し、乾燥時には毒相を強めやすい。一方、導水による表層水分の維持が可能な区画では、資源相への転換が見込まれた。ここで目指されたのは、中心部の維持技術をそのまま複製することではなく、荒野側の土壌条件に合わせて、死の花資源畑と防除音響を含む新区画として再設計することであった。
対象地は一枚岩の造成地として扱わず、導水量、排水性、作業動線、維持部材畑、防除音響設備の配置を前提として、複数の機能区画へ分割した。これは耕地化だけを目的としたものではなく、将来的な街路形成と所領運営を見越した区画整理である。新しい土地は、収穫のためだけにあるのではない。維持、流通、防除、補給、工芸、生産の各機能を最初から抱えたまま、街へ変わっていく必要がある。
方法
一、導排水制御
大河からの引水と既存水路の勾配調整により、対象地を複数区画へ分割した。各区画には独立した給水口と排水口を設け、水分量を均一に固定するのではなく、周期的に変動させた。目的は作物維持だけではない。死の花の鳴音を一区画ごとに固定させず、求愛成立に必要な音域の持続を断つことにある。
二、死の花定期部材畑の造成
各区画のうち一部を、軸受け用種子、油脂採取、補給食転用、工芸用素材に応じた畑として割り当てた。資源相の死の花は、風車水車の軸受け維持に不可欠であり、当該畑は単なる付属畑ではなく、再開発区画全体の維持部材供給基盤である。死の花を作ることは、装置を回し続けることであり、装置を回し続けることは、水と戦い続けることにほかならない。
三、音響区画整理
営巣を防ぐため、畑を大区画化せず、給排水路、作業道、防風帯、小型の水車付属構造物を挟んで分割した。これにより、隣接区画の音域と残響がずれるよう配置した。さらに、区画ごとに給排水周期を意図的にずらし、同時に同一音域が成熟しないよう運用した。
ここで狙ったのは単純な忌避ではない。プテラケファルスの求愛が、オス、メス、花の音の重なりに依存するならば、その重なりが成立しない区画構成を先に作るべきだからである。
四、人工打音装置
死の花の硬質化素材を用いた打音板、振鈴、残響板を水車駆動で鳴らし、畑音とは一致しない周期音を加えた。これは単に追い払うための大音響ではなく、オス、メス、花の音の重なりに人工的なずれを差し込むことを狙ったものである。素材には既報の硬質花葉加工法を用いた。自然音の固定を崩すことに加え、人工音によって重なりそのものを裂くことが、第二段階の防除である。
五、運営条件
本事業は、イシュの民の労働を前提としない。大規模労働力の投入、装置維持、定期交換部材の供給、補給食の確保、工芸品の生産を、すべて人間側の所領運営の中で完結させることを条件とした。これは技術試験ではなく、領地経営として持続可能であることが求められた。沈むはずだった土地を支えるという前提において、維持は例外ではなく、開発そのものである。
◆
はいどうも~、チーム・ミスリルの瑠璃ちゃんだよ!
いやぁ、テンション上がって来ましたねぇ!
次、M。
Methods。
方法です。
しかも、対象から書かれてる。
まず、対象地。
はい、ここ。
好き。
対象地は、ミッチェル領西部荒野のうち、既存の管理地で実用されている導排水装置を延伸し得る一帯である。
うん。
いいですねえ。
いきなり、
未開の荒野に夢を描く!
みたいな話じゃないんだよね。
既存の管理地がある。
そこで実用されている導排水装置がある。
それを延ばせる一帯を対象にする。
つまりこれ、
ロマンの話じゃなくて、
系の拡張なんです。
うわ、好き。
こういうの好き。
ゼロから奇跡を起こします、じゃない。
もう回ってるものがある。
だったら、どこまで延ばせるか。
どこで組み替えるか。
その話。
しかも、次でちゃんと釘を刺してくる。
ここで目指されたのは、中心部の維持技術をそのまま複製することではなく、荒野側の土壌条件に合わせて、死の花資源畑と防除音響を含む新区画として再設計することであった。
はい、拍手。
複製じゃない。
再設計。
ここ、強い。
めちゃくちゃ強いです。
だってこれ、前の緒言からずっとそうなんだけど、
チェスカって、同じものをそのまま持って行けばいい、みたいな雑な楽観を全然しないんだよね。
中心部では中心部の均衡があった。
でも、西部荒野は荒野側の条件を持っている。
だから、技術は移すけど、形は作り直す。
いやあ、好き。
こういうの、ほんと好き。
で、その次がまたいい。
対象地は一枚岩の造成地として扱わず、
導水量、排水性、作業動線、維持部材畑、防除音響設備の配置を前提として、
複数の機能区画へ分割した。
はい。
来ました。
区画整理。
しかも、ただ畑を割る話じゃない。
導水量。
排水性。
作業動線。
維持部材畑。
防除音響設備。
うわ、嫌らしい。
褒めてるよ。
めちゃくちゃ褒めてる。
だってこれ、
畑を作るための地割りじゃないんだもん。
人がどう歩くか。
何をどう運ぶか。
何をどこで保つか。
どう鳴らして、どう寄せ付けないか。
その全部が、最初から区画に入ってる。
しかもさらに。
新しい土地は、収穫のためだけにあるのではない。
維持、流通、防除、補給、工芸、生産の各機能を最初から抱えたまま、街へ変わっていく必要がある。
はい、ここです。
ここ、かなり好き。
街へ変わっていく必要がある。
これ、さらっと書いてるけど、だいぶ重い。
畑を作る話じゃないんだよね。
最初から、街になる前提で切ってる。
だから、収穫だけでは足りない。
流通だけでも足りない。
防除だけでも足りない。
全部抱えたまま、街へ変わっていく。
うわあ。
これ、Methods の顔してるけど、
ほとんど都市計画の宣言じゃん。
はい。
好き。
で、いよいよ方法。
一、導排水制御。
はい、来ました。
大河からの引水。
既存水路の勾配調整。
対象地の区画分割。
各区画に独立した給水口と排水口。
うん。
いいですね。
だいぶいいです。
しかも、ここで止まらない。
水分量を均一に固定するのではなく、周期的に変動させた。
はい。
そう来たか。
固定しない。
揺らす。
目的は作物維持だけではない。
死の花の鳴音を一区画ごとに固定させず、求愛成立に必要な音域の持続を断つことにある。
うわ、好き。
ここ、すごいよね。
普通、灌漑って、安定させたいじゃん。
均一化したいじゃん。
でもこの論文は、均一化しない。
なぜなら、均一にうまく行くと、今度は翼竜がうまく来るから。
いやあ、嫌な賢さだ。
好き。
つまりこれ、
農業の成功条件を、農業だけで決めてないんだよね。
生態系全体の失敗条件まで含めて、ちょうどよく不安定にする。
ゼロか百じゃない。
育つ。
でも定着しすぎない。
その中間を、水で作る。
うわあ。
Methods の一番目から、かなり性格が悪い。
褒めてます。
もちろん褒めてます。
二、死の花定期部材畑の造成。
ここ、名前がもう好き。
定期部材畑。
いい言葉だねえ。
畑っていうと、食べるものを作る場所みたいに思いがちだけど、
ここでは軸受け用種子、油脂採取、補給食転用、工芸用素材に応じた畑として割り当ててる。
はい。
もう、畑が工場でもあり倉庫でもあり台所でもある。
しかも、この一文がいい。
死の花を作ることは、装置を回し続けることであり、
装置を回し続けることは、水と戦い続けることにほかならない。
うわ、来た。
好き。
水と戦う、がここで戻ってくるんだよね。
緒言で、人の代わりに水と戦う装置を整備すると言っていた、その戦いが、
今度は畑とつながる。
つまり、部材畑って、
畑です、じゃない。
戦線です。
水と戦うための後方支援拠点。
しかもそれを、再開発区画の中に最初から埋め込んでる。
いやあ、好きだねえ。
三、音響区画整理。
来ました。
ここ、だいぶ面白い。
営巣を防ぐため、畑を大区画化せず、給排水路、作業道、防風帯、小型の水車付属構造物を挟んで分割した。
はい。
つまり、邪魔物だらけにしたんだよね。
ただ広くて気持ちいい場を作るんじゃない。
途中途中に線を入れて、道を入れて、構造物を入れて、
同じ音が同じように伸びないようにする。
しかもさらに、給排水周期もずらす。
これにより、隣接区画の音域と残響がずれるよう配置した。
さらに、区画ごとに給排水周期を意図的にずらし、同時に同一音域が成熟しないよう運用した。
はい。
えげつない。
でも好き。
ここでのえげつなさって、
嫌がらせが目的じゃないんだよね。
相手の求愛がどう成立するかをちゃんと読んだうえで、
その成立条件を先回りして崩してる。
しかも、この一文がうまい。
ここで狙ったのは単純な忌避ではない。
プテラケファルスの求愛が、オス、メス、花の音の重なりに依存するならば、その重なりが成立しない区画構成を先に作るべきだからである。
はい、拍手。
追い払う、じゃない。
成立しない場を先に作る。
これ、すごく良い。
生き物に向かって、来るな、と怒鳴るんじゃない。
来ても、ここではうまくいかない、という場を作る。
うわあ。
ほんと、嫌な賢さ。
でも、こういう嫌な賢さがないと、公共事業って持たないんだよね。
四、人工打音装置。
ここ、またいいですねえ。
死の花の硬質化素材を用いた打音板、振鈴、残響板を水車駆動で鳴らし、畑音とは一致しない周期音を加えた。
はい。
来ました。
自然音に対して、人工音を差し込む。
しかも、大音響で脅かすんじゃない。
重なりを裂く。
ここ、好き。
すごく好き。
オス、メス、花の音の重なりに人工的なずれを差し込むことを狙った。
つまり、防除っていうと、
追い払う
壊す
消す
みたいな発想になりがちなんだけど、
この論文は違う。
成立条件に、一拍ずれるノイズを入れる。
うわあ、性格わる。
でも、本当に褒めてる。
しかも素材には既報の硬質花葉加工法を用いた。
ここもいい。
新技術をポンと生やさない。
既報を使う。
つまり、前の蓄積の上に立ってる。
ちゃんと Methods してる。
五、運営条件。
で、最後にこれを置くのが、また強い。
本事業は、イシュの民の労働を前提としない。
はい。
重い。
急に重い。
でも、大事。
大規模労働力の投入、装置維持、定期交換部材の供給、補給食の確保、工芸品の生産を、すべて人間側の所領運営の中で完結させることを条件とした。
ここ、Methods の最後に置くの、かなり本気だよね。
だって、これは実験条件であると同時に、
政治条件でもある。
人がいなくなったあとを、どう人間側だけで回すか。
そこまで含めて方法なんだよね。
しかも、最後の一文がいい。
沈むはずだった土地を支えるという前提において、維持は例外ではなく、開発そのものである。
うわあ。
来た。
締めが強い。
維持は例外ではなく、開発そのものである。
好き。
かなり好き。
これ、今回の M 全体の要約にもなってるんだよね。
導水して終わりじゃない。
畑作って終わりじゃない。
装置置いて終わりじゃない。
保ち続ける。
ずらし続ける。
回し続ける。
つまり、維持そのものが開発。
いやあ。
Methods、かなりうまい。
というわけで、今回の感想。
対象地の時点で、畑じゃなくて街を作る話だとわかる。
導排水制御で、均一化ではなく揺らしを選ぶ。
定期部材畑で、畑がそのまま装置維持の後方になる。
音響区画整理と人工打音装置で、翼竜の求愛成立条件そのものを崩す。
最後に、イシュの民の労働を前提としない、という運営条件を置く。
うん。
ガチです。
しかも、ただ賢いんじゃない。
条件をずらして、維持を織り込んで、街へ変わっていく区画を最初から切ってる。
マヂでエグい。
でも、めちゃくちゃ良い。
本文、だいぶ楽しみになってきました。
異世界ネットは来てないけど。
維持は例外ではなく、開発そのものである、なんて言い切る Methods は、だいぶ本気の再開発みたいです。




