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第27話 領主の居場所

 バリトー邸のリビングに入ると、先にフィンから話を聞いた様子のバリトーが顔を曇らせていた。


「お帰り。収穫はあったか?」


 力のないバリトーに、テレサは驚いて走り寄る。


「私たちは問題なく証拠を手に入れたわ。それよりあなた、どうしたの?」


 肩に置かれたテレサの手を取り、バリトーは弱々しく笑いかけた。


「そうか、証拠が手に入ったんなら良かったな。こっちの状況は俺にはよくわかんねぇから、フィンさんに聞いてくれ」


 視線を動かし説明するよう促すと、フィンは頷いて報告を始めた。


「僕が気になっていた場所は妖精の遺跡だった。隠されていたから少し手間取ったけど、呪文を解除して中に入ってみた。風に乗って地下まで行ったら男が監禁されていたんだ」


「か、監禁!? まさか……」


 フィンは驚くテレサを真っ直ぐ見て真実を伝える。


「その“まさか”だよ。本人と話したら領主だと答えたからね。ちょっと意識が混濁していたけど」


「い、生きて……やはり私の感覚は間違ってはいなかったんだわ」


 テレサがその場に膝から崩れ落ちた。目には涙が浮かんでいる。バリトーはそんなテレサを気遣い、やさしくソファに座らせる。


 鼻を鳴らしているテレサに、また困った顔を浮かべたフィンが続ける。


「ひとつ困ったことがあるんだ。領主が居る牢を破る術式が複雑で、僕には解除できなかった。おそらく大地と風が協力しなければ無理だと思う。そこでテレサさんに手伝ってもらいたくて」


 テレサは無言で首を縦に振った。

 ミシャーナは力が入っているフィンの拳に気付くとその手を握り「私が一緒だから」と感覚共有をする。

 フィンは表情を緩めて笑顔を返し、話を続けた。


「おそらく、あの呪文は簡単に解除できない。しかもテレサさんは妖精の力が使えると言っても()()()()()()。相当体に負担がかかるし、最悪はしばらく意識を失うかもしれないけど……大丈夫ですか?」


 ミシャーナは、危険な行為をフィンとテレサにさせなくてはならないことに驚いて、握っていたフィンの手に力を込めた。同時にバリトーが青ざめていた理由も理解した。

 フィンは「大丈夫だよ」と感覚共有で伝えながら、もう片方の手でミシャーナの手を握り返すと、テレサの方を向いて意思を確認する。


「今更です。私は領主が小さな頃からこの国を一緒に支えてきたの。バリトーよりも長い時間を一緒に過ごしてきたのよ。私が心から愛しているのはバリトーだけ。でも領主には親のような情があるわ。()()()のためなら、何でもする覚悟がある」


 気迫というものがあるなら、今のテレサから伝わってくる感覚はそのものだろう。とても力強いうねりのような力をミシャーナは感じ取った。

 テレサとフィンは、今すぐにでもその場所に行くと言う。


 バリトーは領主とテレサの絆を知っているだけに引き留められず、複雑な顔をしている。ミシャーナはフィンの体が心配で不安げに彼を見た。


 フィンはミシャーナの頭にぽんっと手を乗せると、頭をなでながら続けた。


「ミサ、離れても僕らは一緒だから大丈夫。暫く時間がかかるから、その間に侯爵のところに不正の証拠を届けてくれないかな」


 続けてテレサがバリトーに話しかける。


「あなたは美味しい料理を作って待っていてくださる? 久しぶりにあなたお手製の野菜たっぷりパイが食べたいわ」


 テレサは茶目っ気いっぱいに話しているが、声に若干の緊張が感じられた。

 ミシャーナはフィンとテレサに託された仕事を何としてもやり遂げることを約束し、テーブルの上に置かれた書類を手に取った。


 それぞれが役割を果たすため動き出した。


 ※ ※ ※


「フィンさん。ところで、どうして私にはこの結界が分からなかったのかしら」


 バリトー邸の裏手にある山の中腹で、テレサはため息をついた。

 五年という歳月をかけて探した領主が、家のすぐ傍にある山に監禁されていたとは。日々を思い返すと情けなくてため息しか出ない。


「しかたないよ。大地の妖精には分からないよう上手く紛れるように術がかけてあるからね。僕は違う属性の妖精で……ミサにはまだ話をしていないけど、僕は妖精王の子どもだからそれなりに嗅覚がいいんだ」


 重要な秘密をさらりと話したフィンを、テレサは暫く凝視した。

 秘密を簡単に話すフィンに呆れ、ミシャーナに話していないことにも驚いた。


「あなた、あの子と夫婦になるのでしょう? 秘密を持ったままなのはいけないわ」


 テレサが苦言を放ったが、フィンは飄々とした顔で言ってのける。


「成約はしたんだよ、だけどなぜか言い出そうとすると言葉に詰まる。多分、父上がまだ何か制約をかけていると思うんだ。僕だって早く全てをミサに話したいんだけどさ」


 そう言いながら、フィンは「ここから入る」と小さな隙間を指さした。

 隙間は人が通れる大きさもなく、妖精しか入ることが出来ない構造なのが()()()


「行きましょうか、マダム」


 テレサが差し出されたフィンの手を取ると、一瞬で二人は隙間に吸い込まれていった。

引き続き、不定期更新です。

ざまあカウントダウン11

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