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EP.7 - 4

ジゼおじさんとの最後の訓練が終わって少し休憩した後、私は旅に連れていくユルクが居る厩舎に向かった。

ユルクは、荷車を引かせるよりも直接荷物を持たせて、ついでに人も乗ってしまった方が融通が利いて良いんだって聞いたから、そうすることにした。

力持ちのユルクは旅に必要な道具をどれだけ担がせても平気な顔をしていた。

ただ、私が背中に乗った時に驚いたような顔をしてこっちを向いた事がちょっとだけ引っ掛かったけど、深く考えないようにした。


沢山の人達にお別れを言って、私は出発した。

ユルクの歩幅は人間よりも広いから、街の喧騒はどんどん遠ざかっていく。

今日は一年で一番、街が活気づくお祭りの日。

たくさんの人が集まって、歌ったり、踊ったり、楽しそうに大騒ぎする日。

たくさんの人が集まって、食べたり、飲んだり、美味しそうに食事をする日。

そんな日なのに、もう出ていくのかって色んな人が言った。

夜からが本番なんだから明日出発でもいいんじゃないかって。

旅に出る準備はとっくに済んでるって知ってるのに今更そんな事を言うなんて、皆はきっと私を行かせたくないんだね。

だから色んな理由で私を引き留めようとしたんだ。

出発は早い方が良いんだって言い返した。

そうしたらジゼおじさんが、まだ一度も自分に勝てていないのは実力不足なんじゃないかって、意地悪な事を言ってきた。

だから言ってやった。一回は勝ってる――――って。

おじさんは首を傾げてたけど、私は忘れてない。

忘れちゃいけない、大切な思い出だから。


ユーシィとリニーは私に、ずっと秘密にしていた事を教えてくれた。

今日開催されるお祭りの、本当の意味。

表向きは村おこしの為って理由だったけど、本当はコアンをおびき寄せる罠だったんだって。

皆で楽しそうに沢山の料理を囲んでいたら、我慢できなくなって物陰から飛び出してくるんじゃないかって。

そんなことを十年近くも続けていただなんて、おかしな話だね。

本当なのかな、リニーは嘘が得意だからなぁ。

信じていないわけじゃないけれど、明日まで待てないかっていう提案は断った。

だって、お祭りが楽しくなってうっかり食べ過ぎちゃってお腹を壊したら出発の日がもっと伸びちゃうかもしれないからね。


神父様は私の両親と一緒にいつまでもお祈りをしてくれていた。

引き留めたりはしなかったから、きっと私の想いを解ってくれてたんだと思う。

神父様は、知り合いが世界中にいるから全員に私の事を伝えておくって言ってた。

困ったらいつでも頼れるようにって。

きっと私と、私の両親を安心させる為にそう言ってくれたんだ。

村のみんなの心の拠り所だった教会で、いつも色んな事を気にかけてくれていた神父様。

でも、自分が関係してることには無関心で、鈍感になっちゃうみたいだった。

あんまり他人が口を挟んで良い事じゃないから余計なことは言わなかったけど、それとなく教えてたつもりだったのに全く気付かないから、ちょっとガッカリしちゃったな。

でも今は二人とも幸せそうだし、まあ良いか。


故郷はどんどん遠ざかっていく。

みんなの事を考えていたら景色がぼやけてきた。

目を擦っても、頭を振っても、ぼやけた景色は直らない。

だから歯を食いしばって、それから空を見上げた。

雲一つ無い空は、眺めていると何だか吸い込まれてしまいそう。

空は上にあるのに、空に落ちていってしまいそうで少し恐かった。

でも、お陰で気が紛れた。

気合いを入れ直して、前を向く。

そして、改めて景色を眺めてみたら、何故だか懐かしい気持ちになった。

十年前の今日も雲ひとつ無いこんな天気だったような気がするから、きっとそのせいだ。

コアンもこの景色を見ながら歩いて何処かに旅立ったのかな。


今日は、お祭り。

今日は、コアンが旅立った日。

私がコアンを追いかけられなかった日。

だから私は今日、出発するんだ。

間に合わなくなる前に。

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