第15回 キャットオブドラゴンスレイヤー
少女キャミの猫探しのお手伝いが正式な冒険者ギルドの依頼となり、リュージェ独特の商業監査員カルディスを伴いミクスクの庭園で猫を探し続けるウォルドでした。
「だめだよ、ここにはいない。」
あらかた庭園内を探し終えたウォルドは皆に告げました。
「本当に?よく探した?」
キャミは不満そうです。
「お嬢ちゃん、抜けてるようにみえるけど冒険者は、そこはちゃんとしてるよ。」
カルディスはフォローになってないフォローをします。
「わぁ、過大評価だよ!その冒険者がウォルドなんだよ!!」
ウォルドにしか聞こえないビの声が重なります。
「なんか、色々とひどいよ。」
ウォルドは泣き声です。
「うーん。可能性は低いが『ワルス・ジタンの魔獣園』へ行ってみるか?」
カルディスが提案します。
「魔獣園!」
キャミが反応します。
「それ、目的がズレてないかなぁ?」
ビはキャミを見てつぶやきます。ウォルドは諦観の域に達しています。
「まぁ、うまく見つかれば儲けもんだからな。」
カルディスは微妙な笑みでキャミの頭を撫でます。
『ワルス・ジタンの魔獣園』は街の西側の郊外、タジハ山脈の麓を切り崩し広大な園を築きます。
「あぁ。必要経費で落ちないかなぁ」
入園料を支払ったカルディスがぼやきます。ありがたいことにキャミとウォルドの分まで支払ってくれたようです。
園内は魔獣の臭いが鼻につきますが、それぞれの魔獣が区域ごとに離されて飼育されています。主に大狼であったり、大猪といった一般的な魔獣が公開されています。
「ここ、下手に猫が入り込んだら大変だよな。」
ウォルドはキャミに聞こえないようつぶやきます。そのキャミは恐る恐るも魔獣に興奮しています。
冒険者なら誰でも知っている、もしくは駆逐したことのある魔獣ばかりで、珍しい、とか凶悪な魔獣はいません。ウォルドは拍子抜けしつつも本来の猫探しをするため、園内を回ります。ビは相変わらず飛び回り、気が付いたらどこかへ行ってしまいました。
「まぁ、一般的な魔獣しかいない、と思うだろ?」
カルディスが意味深にウォルドに話します。
「ここの魔獣園は定期的に珍しい魔獣を公開するんだ。意外と穴場なんだぜ。」
カルディスは周りを見渡して、
「うん。ただ今回は駄目だな。今は一般の魔獣しか公開していない。」
「そうですか。残念です。」
つい、猫探しを忘れてしまいます。そこにビが帰ってきました。
「ウォルド、この園、地下があるみたい。そこにも魔獣がいるみたいだよ。」
「へぇ。地下ねぇ。」
「!?どうした?地下って何だ?」
「いえ、これだけ大きな園ですから地下もあるのかなぁ、と。」
「あ、あぁ、それは考えられるな。」
それぞれがおかしな発言をしていました。
「折角だから、飼育員に話を聞いてみようか?珍しい魔獣に会えるかもしれないし。」
「他にも、まじゅうがいるの!?」
キャミは興味津々です。カルディスは身近にいた飼育員に声を掛けます。
「珍しい魔獣ですか。それに『猫』ですか。あぁ。ちょっと責任者に確認します。」
なにか思い当たるのか、飼育員は管理棟へ入っていきます。しばらくすると閑散期もあってか興行主を連れて戻ってきました。
「珍しい魔獣が見たいのですか?」
興行主は確認します。
「ちょっといまは、公開していないんですよ。きちんとテイムした魔獣だけを公開していますんで。でないと危険ですからねぇ。」
至極、まともな回答です。
「猫を探しているんですが、何か知りませんか?」
ウォルドが割り込みます。
「え?ね、こ、ですか?ここは魔獣園ですよ、やだなぁ。」
興行主は薄ら笑いを浮かべます。
「あぁ、そういえば、目玉は黒竜の子どもだったっけな?」
無理やりカルディスが話を変えます。
「よく、ご存知で。人に慣れたら公開しますが。」
「黒竜の子ども?」
キャミは気になるようです。
「こちらですよ。」
興行主は丸い黒竜の絵が描かれた看板を指さします。看板には近日公開とかかれています。
「へぇ、かわいいトカゲね!うちのみぃちゃん、おっきいトカゲ狩るのが得意なの!」
キャミは自慢げに語ります。
「えっ!トカゲを、狩る?ま、まさか!」
キャミの言葉に興行主は慌てふためきます。そして、突然走り出しました。
「お、おい、どうした?」
「!?」
ウォルドは反射的に追っかけます。キャミもそれに続きます。
「ちょ、おい、待てよ!俺は肉体労働だめなんだって!」
遅れてカルディスが追っかけます。
「うそだろ?エサになるはずの猫が竜をエサにするのか!?」
興行主は園の影で隠れている地下への階段を降りていきます。ウォルドとキャミ、そしてビも続きます。
地下は無数の檻と珍しい魔獣が収容されています。興行主は一目散に奥へと進んでいきます。
「無事だったかぁ。」
一番奥の檻にたどり着くと、興行主はつぶやきます。シャリン!ホッとしたのも束の間、次の瞬間には興行主の体が2つに分かれていました。ウォルドは反射的にキャミの視界を遮ります。
「なに?何があったの?」
どうやらキャミは気づいてないようです。2つになった興行主だった物の奥、綺麗にわれた檻の中から黒い竜の幼体、と猫がはい出してきました。猫は飼い主に気づき、キャミの元へとんでゆきます。
「みぃ!」
「あ、みぃちゃん!」
キャミは興行主だった物にまったく気づいていません。そして、幼竜はというと、ウォルドに気づきじっと見たあと、突如、ウォルドへ突進してきました。
「あ、これ、死んだ。」
「ウォルド!」
ビが叫びます。べちっ。ウォルドの顔に鈍い衝撃が走りました。
「きゅお!きゅお、きゅおーお!」
なぜか、幼竜はウォルドの顔にしがみつきます。
「く、くるしい!!」
呼吸ができずにウォルドは苦しみます。
「きゅお!きゅおお〜!! 」
幼竜はウォルドの顔から離れません。
「いい加減にしないと、ウォルド死んじゃうよ? 」
スパーン!風が幼竜をはたきます。
「きゅお? 」
幼竜は不思議そうに首をかしげると、じっと空間を見つめます。
「え!?な、なに、この子!境界に割込できた!! 」
ビの姿を確認すると満足げにウォルドの肩に座りなおしました。
「もしかして懐かれてる?」
「そうみたいだけど。この子、やばいよ。」
キャミは猫のみぃちゃんと再会を喜び合っています。
「あぁあ、こりゃ、また派手にやってくれちゃって。ここまでくると保安隊の案件だなぁ。」
遅れてきたカルディスは惨状を見てつぶやきます。
「それにしても、なんでこの幼竜捕まってたんだ?」
「ほんと、それよねぇ。」
ウォルドとビは幼竜を見ていいました。




