第10回 帝国入国拒否
トール村での騒動が誰にも知られずに処理されていった一方で、ウォルドは王都プルサにたどり着きました。
「なにここ!?ひとばっかり!!」
ビが何処へ行っても人ばかりの街並みに驚きを隠せません。
「うん。しかもビと話していても誰も気にしないし。」
「それね。はっきり言って、ウォルドをみる白い目が見れなくて残念だわ。」
「いつも狙って話かけてたのか。」
ウォルドは溜息をつきます。街の人々はそんなウォルドには無関心です。
「さて、まずは冒険者ギルドに向かおう。」
「で、冒険者ギルドってどこにあるの?」
「そうだね。ちょっと聞いてみよう。すいません!」
ウォルドは身近な人に声をかけましたが、するっと、通り過ぎ去ってゆきます。
「あ、あれ?」
「いっちゃったね。」
「あの、すいません!」
また通りかかった人に声をかけます。が、やっぱりウォルドには目もくれず通り過ぎてゆきます。すると、後ろから声をかけられます。
「お困りですか?」
振り返ると、籠いっぱいに花を入れたウォルドより少し若いぐらいの少女がたっていました。
「あの、冒険者ギルドへ。」
「一輪、2リュードです。」
少女は花を1輪、ウォルドに差し出します。
「え、えっと、冒険者ギルドの場所。」
「一輪、2リュードです!」
これ以上ない笑顔で少女が花を差し出してきました。
しばらくして、ようやくウォルドは冒険者ギルドの前に辿り着きました。
「ウォルド、王都って怖いトコだね。」
「うん。怖い。」
ウォルドの手には花をはじめ、色々な品々を抱えていました。
「それにしても、でかいね。何階まであるんだろう?」
ウォルドは建物を見上げて感嘆します。
「ちょっと見てくるね!」
ビは飛んで建物の上へむかいます。
きゃあぁ!ビは叫びながらウォルドのところに戻ってきます。
「な、なにあれ!?6階で鳥飼ってる!!」
「鳥!?」
ウォルドには理解できないところのようです。
「と、とにかく中へ入ろう。」
「もう、こんなへんなの、なしにしてよね!」
「僕に言われても。」
ウォルドは建物のなかに入ります。
冒険者ギルドのなかは、ロビーと酒場を兼ねているため、とても広いスペースをとっています。いい時間であるにも関わらず、冒険者たちは好き勝手に飲んでいます。入り口のすぐ横に冒険者向けの掲示板があり、ここに仕事の依頼が貼られます。たまに、注意情報といったことが貼られたりもしますが、大抵は他所のことで見向きもされません。
「まずは受付で情報収集だね。」
ウォルドはフロアの奥の方にある受付へ向かいます。
ばしゃっ。突然、何かをこぼした音がしました。音がした方を見ると冒険者の一人が派手にエールをぶちまけていました。
「はわわわわ。よ、ようせ。」
なぜか、ウォルドの方を見て驚いています。
周りの冒険者たちはどうした?と不思議そうに声をかけたり、エールを拭く雑巾をもってきたりしています。
「あ、あれ、い、いや、なんでもないです。ごめんなさい。驚かせて。」
エールをぶちまけた冒険者はまわりに平謝りです。
「へぇ。王都の冒険者って、変な人もいるんだねぇ。」
ウォルドは呑気につぶやきます。
「変も何も、あれ、エルフじゃない。」
ビはウォルドに聞こえないように答えました。
奥の受付には幅広いカウンターに無表情で座る受付嬢がいます。
「いつも思うんだけどさぁ。」
「なによ。どうしたのよ?」
「なんで受付の人って女性なんだろう?」
「それ、わたしに聞く!?でも、確かに。」
「でしょう?」
「今まで見た感じ、冒険者は粗野な人多いし女性だと大変だよね。」
「一応、カウンターが壁になってるけど。あと奥の部屋に黒い服着た怖い人が控えてるってきいたことがあるけど。」
「その黒い人が受付すればいいのに。」
そんなことを話している内に受付の前まできました。
「すみません。ギーニスの居場所を知りたくて、何か情報はありませんか?」
「申し訳ありません。冒険者ギルドでは個別に冒険者を指名して依頼することができません。依頼にはこちらの蝋板にご記入下さい。」
受付嬢は淡々と答えます。
「いえ、僕は冒険者なのでルールは知っていますし、依頼ではないです。それに、僕、ギーニスと一緒のパーティーで。今は違うんだけど。あ、冒険者証!どこやったかなぁ!?
」
鞄をあさりだすと、からん。乾いた音がカウンター越しに受付の方へ落ちました。受付嬢は黙って拾い上げます。ウォルドは気づかずに冒険者証を探しつづけます。
「うーん。どこだろう?あ、あった冒険者証!みてください!ほら!!」
受付嬢は冒険者証を受け取ると隅々まで確認します。
「ウォルドさんですね。たしかに元ギーニスさんのパーティーに所属、ですね。」
「はい、ですので、情報があれば教えて欲しいのです。」
「冒険者個人の情報は教えることはできません。仮に知ろうにも今現在どこにいるかは把握できません。ですが、ここからは私の独り言ですが、ギーニスさんが最後に当ギルドに立ち寄ったのは約10日前です。ですから今はスバルニア帝国の帝都ソフィリアスにいる頃でしょうね。」
「ありがとうございます!」
受付嬢は軽く微笑んで、冒険者証をウォルドに返します。
「大事なものだから、なくさないようにしてください。」
「すみません。気をつけます。」
さらに、だまって受付嬢はウォルドの手にカウンターの内側で拾った木彫りのキートップを握らせました。
「あ、すいません。」
思わず2度もあやまります。
「ウォルド、予定通りギーニスを追っかけるの?」
「そうだね。まずはそこからだね。」
受付カウンターを離れると、入り口の方から見知った冒険者がウォルドに声をかけてきました。
「おい、ウォルドじゃねぇか!おまえ、いったい、何をやったんだ!!」
「なにって!?なに?」
冒険者はボルデモアの冒険者ギルドでよく顔を合わせた戦士でした。
「おいおい。おまえ、掲示板、見てないのか?」
「掲示板がどうしたの?」
「あぁ、とにかく掲示板をみればわかるよ。」
言われるままに掲示板を見るとそこには、
『ウォルド ミギノモノ スバルニアテイコクノ ニュウコクヲ キンズ』
と羊皮紙が貼られていました。




