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魔物畑で快適ライフ!~生贄にされた少年は掟破りの魔物栽培で快適生活を手に入れる!~  作者: 十一屋 翠
第二章 辺境の生贄

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第29話 真夜中の魔王覚醒

 それは夜に起きた。


ドォォォォォォォォン!!


「な、何だぁ!?」


「ミミミッ!?」


突然の爆発音に飛び起きる。

慌てて家の外に出ると、周囲が火に包まれているじゃないか。


「なんだこりゃあ!?」


「一体何事ですか!」


 寝間着姿のストレがしかし剣と盾を手に飛び出してくる。


「分からん! なんか外が燃えてる!」


「まさか騎士団の襲撃ですか」


 数日前の討伐隊の事を思い出し、ストレは討伐隊が再び派遣されたのではないかと推測する。


「いや、騎士団はいないっぽい」


 一旦玄関の中に避難しつつ隙間から外を見ても騎士団や冒険者の集団は見当たらない。

 外にいる魔物達も戦う様子は見えずキャンキャンギャーギャーとパニックになっているばかりだ。


「ですが襲われているのは確かです。魔物達に指示を出して迎撃をさせましょう」


「そうだな!」


とその時、再び爆音と共に衝撃が走る。

しかもさっきより激しい!


「キャーーーッ!」


「ククミス!?」


 ククミスの悲鳴に駆け付けると、彼女の部屋の壁が破壊され燃えているじゃないか!


「ククミスこっちだ!」


「は、はい!」


 俺達はククミスの部屋を出ると玄関まで避難する。


「何が起きているんですか!?」


「分からん。何かの襲撃を受けてるっぽい!」


「家の中に居たら火に巻かれます。外に出て魔物達の傍にいた方が安全です!」


「そうだな!」


 俺達は家を出ると魔物達の下に逃げ込む。


「敵がいる! 探して倒すんだ!」


『ガォォォォォォ!』


 魔物達が一斉に敵を探して動き出す。

 だが魔物達は周囲をキョロキョロしたり匂いを嗅いだりするものの敵が見つけられない。


「マズいですね。火事で物が焼ける匂い……だけじゃありませんね。何か強い匂いの出る物も焼いています。これで魔物達の鼻を誤魔化されています。それに周囲が燃えて明るくなっていますが、逆に光が強すぎて暗い場所が見えなくなってます」


 眩い炎で夜目が利かなくなってしまい、家から離れた場所が全く見えなくなっている。

 というか結構近場でも陰になっている場所があるから近づかないと誰かいるのか分からないから危ないな。

 匂いの事といい明らかに魔物の仕業じゃないなこれは!


「遠距離から矢で攻撃されたら敵の位置が把握できません! どこか遮蔽物に隠れ……」


「シャアァァァァァッ!」


 ストレの言葉が終わる直前、突如服の隙間からオロチが飛び出した。

 しかもオロチは牙をむき出しにしてククミスに飛び掛かってゆく。


「キャッ!?」


「オロチ!? 何を!?」


「ぐわぁっ!」


 だが次に聞こえて来た悲鳴はククミスの綺麗な声ではなく、野太い男のものだった。


「え? 誰だ!?」


 気が付けばそこには短剣を構えた見知らぬ男の姿があった。


「くっ!」


 男は舌打ちすると一気に後ろに跳び、その姿が消える。


「消えた!」


「隠遁の魔法です! 姿を消す暗殺者の魔法です!」


「隠遁の魔法!?」


 姿を消す、つまり光学迷彩って事か!


「成る程、魔物の鼻を誤魔化す事で接近出来たんですね!」


 やばいな、視覚に頼らずに敵を察知できる魔物達が無力化されちまってる。


「シャアアッ!」


 が、そんな中オロチが空中に産み出した水を虚空に向けて放つ。


「ぐわっ!」


 またしても悲鳴があがり一瞬だが人影が浮かび上がる。


「分かるのかオロチ!」


「シャア!」


 そうか、ピット器官!

 蛇はこの器官で熱を察知して獲物を探せるんだった。


「皆、オロチが攻撃した場所を狙って一斉攻撃だ!」


『ガォォォォォ!』


 よし、これなら襲撃者を倒せるぞ!


「シャアァ!」


 オロチがククミスの傍に再び攻撃を放つ。

 が、読まれていたらしくダンという地面を蹴る音だけが響いた。


「ボウッ!」


「ジュジュー!」


 しかしそこに魔物達が攻撃を集中させる。

 よしこれで!


「シャアア!」

 が、またしてもオロチがククミスの方向に攻撃を放つ。

 そして聞こえる小さな音。


「ククミスが狙われている!?」


「はぁ!!」


 ストレが盾を突きだして突っ込むとギィンという金属が擦れる音が響く。


「やはり!」


「何か分かったのかストレ!」


「敵は複数います! 理由は不明ですがククミス様が狙われています!」


「ククミスが!?」


何故、と思ったがこの状況でククミスが狙われる理由なんて一つしかない。


「生贄だからか!」


恐らくこの襲撃者はククミスを殺しに来た刺客。


「けどどうすればいい!? オロチだけじゃ対応できないぞ!」


「シャアアアア!」


 と、その時オロチが甲高い鳴き声を上げた。


『シャアアア!』


 するとそこかしこから蛇の魔物が現れ俺達の下へとやってくる。


「そうか、討伐隊が倒した蛇の魔物!」


 討伐隊との戦いて彼等が倒した魔物達の素材を奪った俺達は手当たり次第にそれらを埋めて魔物を産み出した。

 その中には俺が把握しきれていなかった蛇の魔物もいたらしい。


「シャアア!」


「シャアアア!」


 蛇達はそこかしこの虚空に攻撃をしかける。


「くっ! ぐあっ!」


 蛇の魔物達の攻撃を避ける透明の刺客達。

 けれど夜の闇の中で四方八方から音も無く襲ってくる蛇の魔物達によって今度は彼等が見えない暗殺者に襲われる結果となる。


「キキィッ!」


 更にコウモリの魔物達も虚空に向けて攻撃を行う。


「グワッ!」


 そうか、コウモリは超音波を反射させて潜水艦のソナーみたいに獲物の位置を確認できるんだったか。

 これなら実体がある以上隠れていても位置が分かる!


「ガォォォ!」


「ギィン!」


「ぐわぁ!」


「がはっ!」


 完全に隠密行動のメリットが無効化され、さらに無数の魔物達にあらゆる方向から攻撃を受け刺客達は次々に倒れてゆく。

 そして全ての刺客を倒したのか、ようやく蛇の魔物達も戦いを止める。


「ふぅ、何とか撃退出来たみたいだな」


「シャア!」


 と思ったら暗闇の中からオロチとゲイル達がやってくる。

その背中には黒装束の男達の姿。


「まだ居たのか!?」


「恐らくは指揮官と作戦失敗を報告する為の控えかと」


 そうか、相手が暗殺者なら全員で襲い掛かってくるわけないもんな。


「オロチ悪いけど周辺に潜んでいる敵がいないか捜索を頼む。他の魔物達を使ってかまわないから」


「シャ!」


オロチは蛇の魔物達に指示を出すと蛇の魔物達は狼の魔物、フクロウやコウモリの魔物と共に偵察に向かう。


「はぁー、オロチたちが居てくれて助かったよ」


「シャア!」


「まさか姿を隠した暗殺者に襲われるなんてなぁ」


 正直予想外の出来事過ぎてびっくりしたよ。


「フォ、フォルス様」


 そんな俺の口をストレが慌てた様子で塞ぐ。


「むがっ!? 何を……あ」


 ストレに強引に首を曲げられた俺は、炎に照らされて立ち尽くすククミスの姿を見る。


「あっ」


 しまった。この状況で一番ショックを受けているのはククミスだった!

 そんな状況で暗殺者に襲われて迷惑みたいなこと言ったら、標的にされたククミスが自分の責任だとショックを受け……


「ふ、ふふふ、そうですか」


 と、そんな中で、ククミスが震えた声で笑い出す。


「ク、ククミス?」


「王家の暗殺者を送ってまで私に死んでほしかったんですねお父様……」


「お、王家の暗殺者!?」


「ええ、この者達は王家の擁する暗殺者です。実際に見たことはありませんでしたが、魔物達に気付かれる事無く接近する技術。そのなかで私を狙った事。間違いなく王家の関係者でしょう」


 マジかよ。親が娘を殺そうとしたのか!?


「驚くことはありませんよ。私達は生贄なんですから。生贄は死なないと意味がありませんからね。ですが……」


 とククミスは言葉を切る。


「生贄として送られた以上役目を果たす死に方をしなければ意味がありません。暗殺者に殺させるなど言語道断ではないですか」


「それはまぁ……」


「きっと私が死んでいないと疑われる事件が起きたんでしょう。だから慌てて私の生死を確認して暗殺者を送って来た。恐らくそれを確認する為のマジックアイテムを私の身に付けた品に紛れこませていたのでしょうね」


 ククミスが死んでいないと疑われる出来事……


「あっ、もしかして討伐隊!?」


 ククミスは静かに頷く。


「誤解とは言え魔物の大移動が発生したのなら王家が役目を果たしたのかと疑われるのは当然のこと……ですが」


 くっくっくっと喉を震わせるククミス。


「よりにもよってその尻拭いがこんな雑な暗殺計画ですか。どうやら王家は私が思っていた以上に腐りきっていたようです。これは……国を亡ぼす時が来たようですね……フフフ、アハハハハハハハッ! ははははははははははははははははははっ!!」


『わ、わぁ……』


 煌々と燃える炎に照らされ、完全にブチ切れたククミスの哄笑を聞きながら、俺とストレはプルプルと震えるのだった。

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― 新着の感想 ―
フォルス・トランカル(黒髪→銀髪になった主人公)よりも、ククミス・ナル・ロドルファース(正ヒロイン)のほうが、やはり作中で正式に魔王と呼ばれる存在になるのか? いや、現実の漫画家として有名な「藤子不二…
わぁぁぁ…
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