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魔物畑で快適ライフ!~生贄にされた少年は掟破りの魔物栽培で快適生活を手に入れる!~  作者: 十一屋 翠
第二章 辺境の生贄

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第24話 危機感と飢餓感

いつも応援、誤字脱字のご指摘を頂きありがとうございます!

皆さんの声援が作者の励みとなっております!

 ◆領主の屋敷◆


「それは本当なのか!」


 魔物に関する危機的な報告を受けた領主は無意識に声を荒げ、情報の提供者に問い質す。


「事実です。聖域との境界付近で複数種の魔物が行動を共にしている姿を見たものがおります」


 実際には聖域の中での目撃なのだが、聖域内での採取や狩りは多くの人々にとって重要な収入かつ仕入先となっている為、こうして目撃した場所を境界付近と誤魔化す事が暗黙の了解となっていた。

 そしてその事は領主も理解しており、


(境界付近、つまり聖域外周での目撃と言う事か)


「ギルド長、この情報はどこまで広まっている?」


「報告してきたものには口止めをしてありますがどのくらい口をつぐむかは分かりません。ただ数日は秘匿するかと」


「ならばすぐにはパニックにならんか。こちらで騎士団の準備をする。冒険者ギルドには聖域から出てくる魔物の群れが居ないか監視を頼む」


「承知しました。ギルドに所属する冒険者の中で口の堅い連中を選びましょう」


 そう言って報告に来た男はすぐに部屋を出ていく。

残ったのは領主とその側近である家宰の二人だ。


「複数種の魔物の集団、まさか大移動でしょうか」


「……わからん。だが見間違いでなければその可能性が高い。メンター、ロスボーン家は間違いなく生贄を出したのだな?」


「は、監視の者がロスボーン家の子息が魔物に襲われている姿を確認しております。ただ監視者が子息を襲っていた魔物に見つかったことで襲い掛かられた為、死体の確認は出来て降りません。ですが魔物の生態を考えれば生きているとは思えません」


メンターと呼んだ家宰の言葉に領主は頷く。


「そうだな。魔物は必ず人間を襲う。止めを刺さずに他の人間に襲い掛かる事は無いだろう」


「ロスボーン家では領主一家が子息の墓を作って日々泣き暮らしているそうです。かくまっている事はあり得ないでしょう」


 ロスボーン家の子息は言うまでもなくフォルスの事だ。

 この町の領主は、いやこの地域の領主達はロスボーン家の当主が貴族間のしきたりに従いちゃんとフォルスを生贄にしたのかを秘密裏に確認していた。

 全ては魔物から身を護るために。


「となれば王家の方か? 我が子可愛さに生贄を出し渋ったか?」


「いえ、王家もククミス姫を生贄に捧げました。むしろ王家の方が生贄になる者には冷酷ですから、疑う余地もないでしょう」


「ならば本当に偶然か、それとも生贄を捧げる時期が遅かったか……」


「どのみち複数種の魔物が行動を共にするのは聖域内で増えた魔物が別の土地に移住する時だけです。今は魔物がどちらの方角に向かうかの確認、そして万が一町に近づいてきたときに備えて騎士団に警戒態勢を取らせる事が重要かと」


「そうだな。せめて魔物の群れが我が領地の町とぶつからない事を祈るとしよう。


 ◆冒険者ギルド◆


 冒険者ギルド、それは冒険者と呼ばれる荒くれ者達が仕事を得る為の職業斡旋所である。

 なんとなくカッコ悪いのでもっぱら冒険者ギルドと呼ばれている。

 実際ロマンのある仕事もあるのである意味冒険者でも間違いはないが、まぁ大抵は雑事か魔物退治だ。


「帰ったぞ。口の堅い連中を3パーティ俺の部屋に呼べ」


「また厄介事ですか?」


 領主の館から帰って来た冒険者ギルドの支部長は受付嬢にメンバーの招集を頼む。

 この場合腕利きな事は当たり前なのであえて口にしない。


「かなり面倒なヤツだ」


「分かりました」


 ギルド長が自室に戻るとすぐに数名の冒険者達がやってくる。

 ギルド長の部屋は彼の執務室というよりも、面倒な仕事や人前では言えない話をする為の密談場所としての側面の方が強かった。


「俺達を揃って集めるとは何事ですかい?」


「面倒ごとなのは間違いないでしょ」


「それも危険な奴ですね」


 集められたのは各パーティのリーダー格ばかりだが、それでも荒事をする者達ばかりな為部屋が狭くなる。


「魔物の大移動の兆候がある。調査を頼みたい。


『なんだってっ!?』


 魔物の大移動と言われて冒険者達が色めき立つ。


「調査内容は魔物のグループの規模、そして進行方向だ」


「おいおい、気軽に言ってくれるぜ」


 冒険者達が悪態を吐くのも無理はない。万が一魔物に見つかった場合、無数の魔物に追いかけ回される事になるのだ。

 その中に足の速い魔物が複数居たらそれこそ命に係わる。


「何もしなけりゃ準備無しで町が襲われるかもしれん。報酬は弾むから無理してでもやれ。一日一人金貨3枚。群れの規模および進行方向を確認したら追加で10枚だ」


『おお!』


 偵察だけと考えれば破格の報酬だ。

 冒険者達もそれならと心惹かれる。


「急いで頼むぞ」


 状況が状況な為、ギルド長は採算を度外視して情報収集に奔走する。


 ◆


「ピー!」


「おおー、ちゃんと鳥の魔物だ!」


 先日ゲイル達に狩りを任せた際、運よく鳥の魔物と遭遇した事で俺達は鶏肉を得た。いや、鳥の魔物素材を手に入れた。

 で、それを埋めたところ次の日には鳥の魔物が生まれた訳だ。


「よし、お前の名前はマッハだ!」


「ピー!」


 マッハとなずけた魔物は喜んで空に舞い上がる。


「これで偵察機をゲットだな」


 他にも狩りで得た素材で新たな魔物達が生まれている。

 中でも大きかったのはゲイルに続く狼型の魔物が生まれた事だ。


「この子はクロンと名付けましょう!」


 ついに自分の相棒が生まれたとあってククミスが大はしゃぎで名前を付ける。

 他にも牛の魔物など、獣型の魔物が増え、荷物の運搬に期待が持てる。


「あ、でも町の中では俺達だけで買い物しないといけないし、何度も買い物で町の中と外を往復するのは不自然か」


「それなら買い出しは複数の町で行えばよいのでは?」


「あ、そっか」


 ストレの提案を受け、確かに一つの町で全部の買い出しをしなくてもいいかと思いなおす。


「それにしてもこれだけ増えると食料の確保が大変ですね。野菜を生やす魔物達が居ますが、数が足りませんし、なにより肉しか食べられない魔物もいますから」


 あー、確かに。こりゃ狩りを効率的に行わないとだな。


「よし、ゲイル、グループを分けて複数で狩りをしてきてくれ。マッハはゲイル達についていって上空から獲物が居る場所を教えてやってくれ」


「ピー!」


 よし、これで食糧問題が解決するといいな。


「あとは引き続き拠点の改造か」


「高額な財宝を買い集めてイスタちゃんのように価値のある排泄物を生み出してくれる魔物も増やしましょう。そうすれば食料を狩り以外で得る事が出来ます」


 ああそうか、確かに金があるなら買えばいいもんな。


「そうして食料を買い占める事で食糧不足を招き、さらに鉄や食料の買い占めで周辺国にこの国が戦争を起こそうと準備をしていると勘違いさせられます」


 なんかまた企んでるし。



 ◆聖域外周◆


 ギルド長の指示を受けて聖域に侵入した冒険者達は背筋が凍る思いに駆られていた。


「魔物が魔物を狩ってる!?」


「しかも種族の違う魔物同士がまるで俺達みたいにパーティを組んでやがる。どうなってるんだ!?」


 通常野生の生き物は他種の生物と行動を共にすることはあり得ないからだ。


「連携も見事だ。下手な新人パーティよりも腕がいいぜ」


 連携を取る魔物達の戦いぶりをみて、もしあの牙が自分達に向いたらと想像して冷や汗を垂らす冒険者達。


「魔物の大移動の前兆って事か。複数の群れが居たが個々の群れの規模はそこまででもないな」


 それならばまだ焦る時ではないかと安堵した彼等だったが、分かれて偵察していたパーティと情報を共有する事である事実に気付く。


「狩りを終えた魔物達だがその場で獲物を食わず持ち帰っていた」


「言われてみれば俺達が見た群れもそうだったな。どこかに仲間の集落があるのか?」


 動物が自分達の巣に獲物を持ち帰ることは珍しい事ではない。だから彼等もたいして気にしてなかったのだが……

 

「いや待て、って事は魔物の集落にはもっと大量に魔物が居るって事か? 連携の取れるもっと大きな魔物の群れが!」


『っっっ!!』


 冒険者達の間に戦慄が走る。


 複数種の魔物が同居する群れ、その数は彼等の知っている魔物の群れを遥かに超える者になるだろう。勿論危険度も。


「ヤバいな、事態は思った以上に深刻かもしれない。すぐにギルドに報告に戻るぞ!」


 こうして恐怖は加速してゆくのだった。

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