第22話 おそるべき魔物の支配者?
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「私はジカ村の娘ストレと言います」
俺達が騎士だと思っていた少女は、なんと普通の村娘だった。
「え? 騎士じゃないのか?」
「平民が何故騎士の鎧を身に纏っているのです?」
ククミスも同じことを思ったのだろう、ストレと名乗った少女に事情を尋ねる。
「それには事情がありまして……実は……私は魔法が使えないのです」
『っ!?』
その言葉に俺達はストレがなぜ一人で聖域に居たのかを察する。
「私の村は戦士を育てる村です。そこでは一人前に育った者を傭兵や冒険者、そして騎士の従者として送り出す事で生活の糧としていました」
おお!? そんな漫画みたいな村が実在するのか……!?
「ですが魔法を使えない者は戦士にとって足手まとい以外の何ものでもありません。事実私は村の若手で一番上手く剣を扱えますが、魔法が使えない事で一番にはなれませんでした」
寧ろ魔法が使えないのに同じように鍛えてる連中相手にある程度勝てるの凄くね?
「そうした事情もあって魔法を使えない者が生まれると聖域に生贄として差し出すしきたりが生まれたのです」
まじかー、思った以上にこの世界生贄の風習が多いんじゃないか?
王家が把握していないか、それとも把握していてあえて黙っているのか……
「この鎧もその一環で、その年最も良い出来の武具を生贄と共に差し出す風習があるのです」
つまり、人柱の生贄と神様に捧げる御神刀って事? なんか風習がごちゃ混ぜになってるな。いや異世界だからそういうものなのか?
「成る程、そういう事情でしたか」
「はい、ですから命を助けて頂いた事は大変ありがたいのですが、例え助かったとしても私にはもう帰る場所が……」
と、ストレは顔を隠すように下げる。
きっと悔しさに震える顔を見られたくないんだろう。
どれだけ鍛えて自分の強さを誇示しようとしても魔法を使えないという一点で運命を変えられなかったことに。
「そうだったのですね。ですが嘆く事はありません。貴方には新たな道が開かれたのですから」
と、ククミスがストレの肩を掴む。
「貴方は偉大な人物にお仕えする機会に巡り合えたのです」
「偉大なお方……? 貴方様ではなく?」
頷くククミス。
どう見てもお姫様にしか見えないククミスに自分以上の存在と言わせるのは一体何者なんだと困惑するストレ。
そしてこの後の状況を察してとても胃が痛くなる俺。
「そう! こちらのお方こそ、偉大なる聖域の主フォルス様です!」
バーンと効果音でも出そうな勢いで俺を紹介するククミス。
「……え?」
俺を見て一文字だけ絞り出すストレ。
寧ろあれ? こんな人いたの? とすら言いたげだ。
ですよね、今の会話に俺全然参加してなかったし。
何なら他に人はいないかって周囲をキョロキョロしだす始末。
凄く失礼オブ失礼だけど気持ちは分かる。俺でもそうする。
「どこを見ているのですか。こちらフォルス様こそ聖域において最も貴きお方なのですよ!」
「……はぁ」
どんな反応をすればいいのか分からずストレは困惑の声をしか出せないでいる。
「はぁ、仕方のない方ですね。フォルス様そのお力をわたくし達にお示しください」
「あーうん。ダンテ、ゲイル」
俺は騎士、ではなくストレを脅かさないように隠れさせていたダンテ達を呼ぶ。
「ミッ!」
「ガウ!」
俺に呼ばれたダンテ達が姿を見せる。気持ちゲイルはいつもよりも力強い鳴き声だ。
「魔物!?」
突然現れた魔物にストレは剣を構えようとするが武器が無い事に気付いて慌てる。
うん、突然襲い掛からない様に剣は取り上げてあるんだ。
「大丈夫だから。ほらおいで」
「ミミッ」
「ワウ!」
俺が手招きするとダンテ達はまるでペットの様にすり寄ってくる。
「魔物が人を襲わない!?」
「驚きましたか? これこそがフォルス様のお力。フォルス様は魔物を従える権能をお持ちなのです!」
「魔物を従える力!?」
この世界において絶対あり得ない力の持ち主と言われ、ストレが信じられない者を見る眼差しで俺を見てくる。
もしかして、ダンテ達を隠しておくように言ったのはストレを驚かさないだけじゃなく演出の意図もあったのだろうか? だとすればククミス、恐ろしい子!
「つまり、魔物の王……という事ですか?」
「その通り。フォルス様こそ、わたくし達生贄として捧げられた者達の主たるお方なのです」
「ということはこの人を殺せば生贄を捧げる必要が無くなって私も大手を振って村に帰れる?」
『え?』
「……」
気持ち腰を落としてこちらを見つめてくるストレ。その眼差しは肉食の狩人のごとく。
「シャーッ!」
だがそんなストレを、俺の懐から飛び出したオロチが威嚇する。
「キャッ!?」
驚いたストレは思わず尻餅をつく。
うん、万が一の時の護衛にオロチを忍ばせておいてよかったー。
しかしまさかそう来るとはなぁ。
いや、魔物を従えているなんて言われたら普通はコイツが諸悪の根源かと思うだろ。
「す、すみませんフォルス様。わたくしが迂闊でした」
ククミスも自分のミスを察したようで俺に平謝りしてくる。
「いやいいよ。俺も迂闊だったから」
寧ろお姫様のククミスに全ての人の反応を予測しろというのが無茶な話だ。
というか何でもかんでもククミスに任せる訳にはいかない。
ここは俺が自分の力で説明するのが筋ってもんだ。
「まず勘違いを解いておきたい。俺は昔からここに居る訳じゃなく、生贄として連れてこられたんだ」
「え? でも魔物の王って」
「それも含めて説明するから」
俺はストレに自分が聖域にやって来た事情を説明する。
「そ、そうだったんですね。貴方も私と同じように……」
「俺達の場合は武器も持たされずに送り込まれたから、君よりも酷いかもな」
「それは……そうかもしれませんね」
俺の言葉に同意していいのかと僅かな戸惑いを見せるストレ。
思うに、ストレに武具を与えた村のしきたりというのは、生贄を定めたジカ村の人達なりの罪滅ぼしだったんじゃないだろうか。
せめて少しでも長生きできるように。運よくどこかに逃げ延びて欲しいという相反する望みを込めて。
まぁ自己満足なんだけどね。
「まぁそんな訳で俺達はダンテ達のお陰で聖域で生きていける訳だ」
「な、成る程……」
さて、ここからが本番だ。
「という訳で君も俺達の所で暮らさないか?」
「え? 良いんですか?」
俺はストレに一緒に暮らさないかと誘う。
「俺達はまだ戦力が少ない。だから戦士として育てられた君の力を貸してくれると凄く助かるんだ」
実際、戦闘が出来て町で護衛をしてくれる人材が来てくれると凄く助かる。
更にストレは平民だから、箱入り育ちの俺やククミスに足りないものを色々と考えてくれるだろう。
「よろしいのですか?」
ちらりとククミスを窺うストレ。
「わたくしに決定権はありません。全てを決めるのはフォルス様の御心のみです」
その割には君、俺に対してアレをしてほしいコレをしてほしいってお願いしてくるよね。
「……分かりました。私の剣の腕なんかでよければ、是非使ってください!」
「ああ、よろしくな」
「よろしくお願いしますね」
「ミッ!」
「ワウ!」
「シャー!」
こうして、新たな生贄が俺の下へとやって来た。
それも戦力として期待できる人材が。
「こうなると、他にも生贄が集まってきそうだなぁ」
いや、流石にそうそう増えないよな。
「ふふふ、貴方は幸せ者ですよ。これからこの国が滅茶苦茶になる様をその眼に出来るのですから!」
「ええ!? どういう事ですかそれ!?」
こらこら、さっそく新人を国家転覆に巻き込まない。
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