第六話 疲れ
あれから何度か交渉はしてみたものの、全て同じ返事だった。「無理だ」と。
「ノア!今日こそは認めて……ってどうしましたの!?疲れているような気が……」
ノアを見ると資料が沢山置いてある机に顔を伏せていていつもではしない姿をしていた。ノアの顔を見ると強ばっており、それに何かやつれている顔をしていた。
「ノア…疲れているならベッドに行って休んでくださいませ」
「アメリアも大胆だな。ベッドに誘うなんて」
「なっ…!?違いますわ!それよりも休んでください!」
そう言ったがノアはいっこうに動かないので私はノアに近付いて運ぼうとした。だが人を運んだことがあまりない私はとても戸惑ってしまった。
「の、ノア…!動いてくださいまし!」
「今、君を抱きたい気持ちになったな」
「抱く?それなら前からしていませんか?」
「そっちではない。下心がある方だ」
下心……?……………!?!?
そんな事を考えていたの!?
私が運んでいたら抱きついてきた。その事に身の危険を感じて剥がそうとするが中々剥がれない。
「逃げようとしても無駄だ」
「な、何をするつもりなのですか…!?」
「抱きたい気持ちと言っただろう?」
するとノアは顔を私の首筋に近づいた。そしてそこは赤くなっておりキスマークがついていた。
「…物足りないな。ベッドに行くか」
ノアはニヤリと笑って私をベッドに連れ込んだ。私は仰向けにされてノアはそこに覆いかぶさるようにしている。
「の、ノア…?私、用事を思い出したので離してくださると有難いのですが……」
「君が最初に誘ったのだろう?」
「誘うも何も!私は……って!」
ノアは私の背中に手を当ててきた。
「早く婚姻を結んで色々としたいものだ」
「そ、それよりも!て、手をおさえて下さいまし!!」
何とか手をおさえたが力が強くて中々引き剥がせない。何という馬鹿力。
「お取り込み中、すみません。ご飯はまだですか?」
ヴィヴィ!ナイス!!!助かったわ!早くここから出ないと……!
「向こうの引き出しに入ってる。今すぐに出ていったら後でもう一つあげるぞ」
「マジですか!?」
ヴィヴィはすぐに引き出しを開けて一瞬にして消えた。ああ!!ヴィヴィ!!戻ってきて…!
「これで心置き無く色々と出来るな」
「こ、こういう事は婚姻を結んでからして下さい…!!」
「なら今すぐにでも婚姻を結ぶか?」
「今は…」
「ならこれぐらいしても良いだろ?安心しろ。婚姻後はもっと凄いことをする」
安心出来なくない…!?
だが私はふと思い出す。ノアは今凄く疲れているはずだ。このやり取りは凄く疲れているはず…。あまり無理をして欲しくない。
「ノア……疲れているならそう言って下さいまし。私はノアの婚約者ですよ?」
「こうしてくれたら俺は癒されて疲れは吹き飛ぶ」
疲れているなら疲れていると言えば良いのに……。疲れている時はハグが一番癒されるわ。前世でも今世でも母親のハグは一番安堵するし。
そう思って私はノアを引っ張って胸の中に包み込んだ。
「…………っ!?」
「疲れている時はハグが一番ですわ。しっかり休んでくださいませ」
「……君は俺の気持ちを分かってやってるのか…?」
「気持ち?疲れたのでしょう?それよりも何故こんなに疲れているのですか?私が出来ることなら何でもしますわ!」
ノアが疲れている原因は恐らく机に広がっている資料が原因だろう。あんなに散らばっているし、くしゃくしゃになっていて読んでいる形跡が残っている。
「アメリアは何もしなくていい。これは俺の問題だ」
「だから何故こんなに疲れているのですか?」
「……一週間後に魔界でお茶会がある。それの出席についてだ」
お茶会!?それならヴィヴィも行くのかな。それだったら寂しい。
「安心しろ。これは吸血鬼中心のお茶会だ。エルフは行けない。それにこれは魔王が主催している。簡単に断れない案件だ」
魔王から招待されるってノアも魔界では凄い人なのかな?まぁ、でも吸血鬼自体が凄いからね。




