第三十二話 ゲームのアレ
早速私はソーシャルゲームで見たアレが出来るか聞いてみた。
「使い魔を召喚出来ますか?」
アレとは使い魔の事だ。ノアは私が命の危機になるのが嫌だからこんな事をしているのだろう。なら使い魔が近くにいたらノアは安心して外してくれるだろう。
ノアが得するって言うより私が得しているような気がするけど…。この際、得なんて関係ない。足枷を外してくれるのならば。
「ああ。出来る」
「ならお願い出来ませんか?ノアは私が命の危機になるのが嫌なのですよね?なら使い魔が近くにいたら安心ではないですか。その代わり足枷を外してください。でないと…婚約破棄させて頂きますわ」
条件は悪くない筈だ。それに婚約破棄だと言えばノアは承諾するしかないだろう。婚約破棄は嫌だが足枷を外すためだ。腹を括るしかない。
「アメリアはなぜそこまでしてでも外に行きたがる?」
「騎士団長としてのプライドですわ。今行かないと私が私で無くなる気がすしますので」
だって今行かなければ騎士団長として何をしていたか聞かれる。国民を置いてノコノコと帰ってきたのだから。まぁ、本当のことを言ってしまえばノアがここに連れてきたのだが……。
「……分かった。その交渉を飲もう。だが一つ条件がある。」
何だろうか。一体。ノアの事だし何かとてつもない事を言ってきそうだわ。
「毎日俺に会いに来てくれないか」
あれ…?意外と普通だったわ。それに騎士団に入団してからは毎日来てはいないけれど出張の日を除いて三日に一回のペースで来ている。なのにノアは私と毎日来て欲しいと言った。何か嬉しい。
だけど他国に行かないといけない日もあるから流石に毎日は無理かな…でもこれを承諾しないと足枷を取ってもらえない。ノアめ…分かってやっているな。
「ノア、他国に行く日はこちらに来れないと思いますが…」
「なら転移魔法が使える使い魔を渡す」
使い魔まで魔法が使えるのか。でも転移魔法って便利すぎる。行きたいところに行けるのかな。ゲームでは一度行ったことがある所にしか転移出来ないって言う設定はよく聞くけどこの使い魔はどうなのだろうか。
「使い魔が使える転移魔法って行ったところしか使えないのですか?」
「ああ」
やっぱり。なら使い魔を連れて色んな所を行って転移魔法を使いまくろうかな。そしたら私の行動範囲が広がる。本当に私だけが得しているような気がする…。
その後、私とノアは使い魔を呼び出すために屋敷から出た。ノアがここにはいない、と言ったので他の所に移動しようとしたらノアが翼を出して私を持ってどこかへ行った。下を見ると景色がとても綺麗で夜だったらもっと綺麗になるかなと思っていた。
そしたら別の山に着いた。その山はとても植物が多くて何処か寂しい感じがあった。その寂しさの原因はすぐに分かった。ここはとても静かで動物が見当たらない。それにこの山は少し不気味だ。
山に着いたらノアは真っ直ぐ歩き出した。するとノアの家と比べて一回り小さい屋敷があった。そして私達はその屋敷に入っていった。
「邪魔するぞ」
入るとそこには150cm程の小さい女の子がいた。大きな帽子を被っていて黒いマントを全身に覆っていた。屋敷の中は危なそうな色の液体が幾つもあった。それに…屋敷の中は色んなものが散らかっており、とても汚かった。人様の家に入ってこんな事を思うのは失礼極まりないが。
「ノアか。来るのなら事前に言え。こっちだって用事がある」
「何を言っている。いつも暇そうにしているだろ。それよりあれをしてくれ。使い魔を連れてくる」
「使い魔?なぜ急に。……ああ、その女の子が例の婚約者か。意図は少し掴めてきたな。フム…」
女の子は顎に手を当てて考え込んでいた。その姿はとても可愛かった。小学生の女の子が目の前にいる感じでついついお姉さんになった感じがする。私に妹がいたらこんな子なのかな。
「ノア、この子は誰ですか?」
「こいつは魔女のイザベラだ。今年で五百……何をする!」
イザベラはノアの溝内に殴りをいれた。見た目に合わずとても強そうな力だった。魔女と言ったが魔法を使わないのね。
「乙女の年齢を言うなんてお前には少し説教が必要みたいだな」
「お前は乙女って言う年齢では無いだろ」
「ノア…お前をここまで育てたのは誰かもう一度教えた方がいいみたいだな」
イザベラはそう言うと魔法書みたいなのを広げて何か唱えだした。私でも分かる。とてつもない威力の物が一発打ち込まれそうな感じがする。
「イザベラ!待て!ここでするな!」
「なら、すみませんでしたと言え」
「チッ………すみませんでした」
「それでこそ我が弟子だ。最初の方に舌打ちが聞こえた気がするが謝ったから許そう」
弟子?イザベラってノアのお師匠さんなのか。それに育ての親って聞こえたけどイザベラは一体何者なのだろうか。
それからイザベラは別室に行って何か持ってきた。手には見たことの無い動物の死骸と初めてみる植物を持ってきた。「これで釣れるだろ」とイザベラが言っていたが一体何のことだったのだろうか。