第二十八話 城下町の悪夢
私はエレナが企んでいることが恐ろしく感じて城に戻った。だがエレナは特に何もしていないようで、それはそれで不気味に感じてしまった。私はとりあえず、案内してもらった客室へと足を運ぶ。
ーーこの事を後々、後悔するとはこの時は思いもしなかった。
そう思ったのは城下町を警護していた兵士の言葉によって思い知らされる。
「あ、アメリア騎士団!」
兵士はとても息を切らしていて、とても苦しそうだ。私はそう思い椅子に座る事をお願いしたが断られた。
「じょ、城下町に…!」
「まずは深呼吸をして下さい。それから落ち着いて話してください」
兵士に私はそう言うと兵士は深呼吸をした。落ち着いた頃に兵士は再び話し始める。
「城下町に魔物が襲ってきたようです!!」
このタイミングで魔物の襲撃…?まさかエレナ?
「ねぇ、エレナはどこにいるの?」
「え、エレナ様ですか?それなら他の兵士がベランダに出ていたから保護したと聞いたのですが…」
今度は魔物の襲撃を仕掛けるなんて…仮にもこの国の将来の王妃になる人がそんな事をしていいわけない。ーーだがエレナならきっとやる。エレナと共に過ごしてきた私の記憶がそう言わせている。
私は今度、仕掛けるのは前のように私の物を取っていくと思っていたがそれよりも明らかに規模が大きい。
今の私は騎士団だ。エレナとの対決より国民の命を守らなければならない。だから私は報告を受けたあと、すぐに城下町へと向かった。
城下町に出ると私が目にした光景はまさに悪夢のようだった。前からも後ろからも横からも悲鳴が聞こえてくる。「助けて」「殺される」と言う声が街に溢れていた。
辺りを見回すと魔物の中の中級モンスターがゴロゴロいた。その中には上級モンスターが数体。
私は中級モンスターは対処が出来る。だが上級モンスターは手こずってしまう。元々、上級モンスターはフィリップ王国の中で一番優秀とされる第一騎士団が対処していた。
これなら騎士団が力を合わせて魔物の討伐をしなければならない。とてつもなく多いい数で嫌気がさしたが私は騎士団長だ。人々を守らなければ。それに今回の原因は私にあるかもしれない。もしもエレナがこれをしたのなら私は騎士団長としてーー絶対に許さない。私を陥れるのは構わない。だが関係の無い人を巻き込むわけにはいかない。そう思い私は魔物の討伐に精を出した。
それから私は魔物を討伐し続けた。魔物が討伐出来る腕がたつ者は魔物狩りを。新人などまだ剣術が未熟な者は怪我した人を助けていく役割にした。
第一騎士団は上級モンスターの対処、第二騎士団は北側、第三騎士団は南側の魔物を討伐した。討伐していると私の目の前に上級モンスターが現れた。その正体は龍だ。トカゲに尻尾が生えた生き物。とても大きくて表面は硬そうな鱗に包まれていた。前世ではゲーム感覚でこの龍を倒していくだろう。だが実際に龍を見たらそんな気が失せる。ゲームでは何度でも龍に挑むことは可能だろう。だが実際は死んだらそれまでだ。何度も挑むのは不可能だ。
私が躊躇っている間に龍はある少女に目をつける。そしたら龍は尻尾を動かし始めた。目をつけた少女に尻尾をぶつけようとしている。このままでは龍の尻尾は女の子に当たり、この子は死んでしまうだろう。早く助けなければ。だが私の足はすくんで動けなくなってしまった。
こんな時になって分かってしまう。まだ私は弱い自分を捨てきれていないみたいだ。間に合わなくても良い。この子の所へ駆けつけなければ。そうしなければ私は後悔するだろう。それだけはしたくない。
私は少女に向かって走り出した。いつもの足のスピードより速い。これが火事場のバカちからと言うやつか。普段の足の速さは他の騎士団と劣らず速い方で、今回はそれよりも速かった。だがそんな事はどうでも良い。目の前にいる少女を救わなければいけない。もっと速く、速く、速く走らないと間に合わない!目の前にいる命を放ったらかしに出来ない。
龍の尻尾が少女に当たろうとしていた。
「危ない!」
私は少女に追い付き、守るように抱きついた。だがバランスを崩して少女を抱えたまま転がっていった。壁にぶつかり止まったが背中がとても痛い。
「騎士様、大丈夫ですか…?」
少女が不安そうに尋ねてきた。目も潤んでいた。私は少女が無事かどうか見たが何処にも傷は無かった。良かった。何も怪我は無いみたいだ。その後、私は少女を他の騎士団の元に送っていった。
だが安心するのはつかの間。少女を助けたことによって私は龍の怒りを買ってしまったみたいだ。さて、どうしよう。私に龍を撃退出来るくらいの剣術はあいにく持っていない。それに私が持っている剣ではこの龍に突き刺さらないだろう。ここは逃げるしかない。
私は逃げる為、足を動かした。しかし、ピキっと音が鳴って動かなくなった。先程、思いっきり走ったせいで足を痛めたのだろうか。それに転がって壁にぶつかり骨に悪影響を与えてしまったみたいだ。
龍が私に近付いてくる。私はここで死ぬのかな。少女を助けれたし、後悔は無い。強いてあるとすれば最後にノアの姿を見たかった。




