表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
95/127

第95話 ちょっとアレな女神様、再び

  魔導大図書館での調査を終えたラットは、宿へと戻った後、マナベルを利用してヒーロと情報共有を行っていた。


 どうやらヒーロたちは、少しずつだが暗殺者へと迫れているらしい。


「まだ足掛かりを見つけたってだけだけどね」


 ヒーロが肩を竦める。

 ラットも、得た情報を順番に共有していった。

 魔族の能力。

 大精霊。

 英雄伝説。

 様々な角度から調べた。

 だが……。


「……結局、決定的なものは見つからなかったね」


 ラットは小さく息を吐く。

 肝心の力については、最後まで正体を掴めなかった。


「ないものはないんだ。いつもうまくいくとは限らないだろ?」


 ヒーロは、いつもの調子で笑う。


「切り替えていこう!!」


 その言葉に、ラットも少しだけ肩の力を抜いた。


 __その時だった。


「あ、女神さま……」


 マナベルの先でヒーロが呟いた。


「ヒーローく〜ん♪ フィア、きたよ~!」


 マナベル越しに、聞き慣れた明るい声が響く。

 声だけのはずなのに。

 ポーズを決めながら登場している女神の姿が、容易に想像できてしまった。

 間違いなく女神〝アトモスフィア〟様だ。


「ごめんね〜! なかなか来れなくて! さみしかった〜?」


 いつも通り軽い調子。

 だが、その次の言葉は謝罪だった。


「あれからフィアも調べてみたんだけど〜、やっぱり何かの力に干渉されてるみたいなのよ〜」


 女神様の方でも、まだその何かはわかっていないようだ。


「加護への干渉……」


 考え込んでいたラットから言葉が漏れていた。


「あら〜? もしかしてラットく~ん?」


 フィアが気づいたような声を出す。


「お話し中だった〜?」

「あ、いえ。ちょうど終わったところだったので、お気になさらず」

「それならよかったわ〜♪」


 相変わらずの調子だ。

 だが、話している内容は軽くない。


「それにしても、加護に干渉なんて……。未だに信じられなくて……」

「そんな簡単なことじゃないんだけどね〜」


 女神は少し困ったように笑った。


「加護って~、この世界でも最上級クラスの力なの~。で~も~、唯一無二ってわけじゃないのよ〜」

「つまり、加護と同格の力に心当たりがあるってことですか?」

「例えば~、大精霊の力なんかはそ~ね〜」


 ラットの脳裏に調べていた文献がよぎる。


「基本的に~、大精霊って~、人間同士の争いには~、無関心なんだけど〜」


  軽い調子で話していた声が、


「世界のバランスが崩れそうなくらい大きな争いになると~」


 女神の頬を膨らませたような声に変わった。


「たま〜~~にちょっかい出してくることがあるのよ~」


 女神様の様子から、どうやら、あまり仲は良くないらしい。


「こっちにだって考えがあるのに~、失礼しちゃうわ~~~」


 世界への関わり方が違うということなのだろうか?


「だから二人とも、気をつけてね〜♪」


 再び、女神の声色は軽い調子へと変わっていった。


「あくまで同等クラスの力だから~、完全に無効化まではできないんだけどね〜」

「無効化できないってことは、多少は使えるってことなんですか?」


 完全に使えないと思っていたところへの、意外な発言……。


「そうよ〜♪」


 女神の間の抜けた声がそれを肯定した。


「大量の魔力を使うのが駄目みたいなのっ!」


 その説明に、ヒーロが反応する。


「……つまり……少しなら?」

「できるわよ!」

「そうなのっ!?」


 ヒーロの声が裏返る。

 そして、マナベルの向こうが静かになった。


「……」


(いや、かすかに音がする……)


 どうやら実際に試しているらしい。


 __次の瞬間。


「ほんとだ!」


 驚いた声が返ってきた。


「建物の外くらいなら普通に転移できた!」


 その報告に、ラットも目を見開いた。


「もっと早く知ってれば……」


 ヒーロは頭を抱えた。


「簡単に逃げ切れた場面、結構あったのに……」

「視界内の短距離転移とか〜、他の加護も割と使えるみたいだから、色々試してみてね〜」


 ため息をつき、深く頷いた……。


「わかり……ました……」


 心中お察しする……。


 干渉する力について、女神から一通り聞いた後。

 ラットは、一つ気になっていたことを尋ねた____。


「女神さま!」

「なぁに?」


 ラットは、風の国と水の国で起きた出来事を順番に説明していく。

 そして……。


「この力の正体を探るために、今日まで水の国の魔導大図書館で調べていたんです」

「あら〜♪」


 女神は少し興味深そうな声を漏らした。


「今日、たまたまなんですが、水の国の〝英雄伝説〟に目を通したんですよ」

「確かこの世界の有名な物語だよね?」

「そうよ~♪」


 ヒーロの疑問に、女神は楽しそうに頷いた。


「水の国の伝承では、〝時間〟へ干渉する力を持つ賢者が語られていました」


 ラットは気づきの確信に入っていく。


「加護の持つ〝空間〟に干渉する力。同じように〝肉体〟や〝精神〟へ影響する力などもあったりするのでしょうか?」


 女神は少し考えるように間を置いた。


「この世界って~、すご~く長い歴史があるからね〜。そういう話って結構あるのよ~ねっ!」


 女神がどこか、含み笑いをしている気がする。 


「まぁ、どれも……英雄伝説を元にした……〝創作〟になるわね……」

「創作……ですか?」

「〝英雄〟って人気あるから~♪ ヒーロくんの世界でもそうだったんじゃない?」

「そうだね……。最近は〝魔王〟や〝賢者〟……。なんだったら〝おっさん〟も人気だよ」

「〝おっさん〟も!?」


 どこか軽い調子で笑う。


「どこの世界でも、対象や能力を変えた派生作品って流行るってことなのよね~♪」


 それを聞いた瞬間、ラットは完全に肩の力が抜けた。

 つまり自分は、創作を相手に本気で推理していたことになる。


(結構、確信に近づいたと思ったんだけどな……)


 放心状態にあったラットに女神が語り掛ける。


「ラットくん! ラットくんは水の国の魔導大図書館で読んだのよね?」

「はい、そうですよ……」

「そうなの~♪ あそこは世界で一番本が多いから調べるの大変だったでしょ?」

「そうですね。でも、仲間も手伝ってくれてなんとか……」

「お疲れね♪ ご苦労様~~~♪」


 女神にまともに労われたのは、はじめてだ……。


「まだブルンネンにはいるの?」

「はい、明日準備を整えて、明後日の朝には立とうかと思ってます」

「そうなのね~。今は大変だと思うけど~、頑張ってね~♪」


 そして通信は途切れた。

 静かになった部屋で、ラットは小さく息を吐く。


 結局……。

 女神へ尋ねてみても、結局決定的な進展は得られなかった。

 いや、間違った方向に進まなくてよかったと思えば、まだましか……。


 やはり今ある情報を頼りに進むしかない。


 こうして、ラットたちの調査は幕を閉じることとなった____。



 __翌日。

 ミル、アリエス、リタの三人は、魔導大図書館へと向かっていた。

 ミルが閲覧を希望していたナレッジ博士の研究資料について、許可が下りたとリヴェルナ博士から連絡があったからだ。アリエスも、その研究内容に興味があるということで同行している。


「ちょうど講義と被らなくてよかったわね」

「ええ。でも、必要な部分はもう受け終わってるから、休んでも問題なかったんだけどね」

「せっかくなら全部受けていきたいでしょ? 風の国から長い時間かけてきてるんだし……」

「まあ、確かにそうね。あなたの言う通りだわ」


 リタは八重歯を見せて、笑う。


「そういうリタも。たまたま探し物ができたって言ってたわよね? 何探してるの?」

「ちょっとした人探しよ……」

「あ、人探しだったんだ!」


 一瞬、リタの表情が沈んだような、そんな印象を受けた。


「それよりミル。あんた、普段はそんな感じの服着てるのね!」


 空気を変えるように、リタがミルへ視線を向ける。


「……ん」

「さすが、普段から魔導機械を弄ってるだけあるわね。服装から違うわ」


 リタの表情は戻っていた。

 気のせいだろうかと、アリエスは思った。


 そして、今日は魔法学園ではないため、全員が普段着を着ていた。

 それぞれの職業にあった服。

 特にリタの服ははじめて見るから新鮮だ。

 黒をベースとした、赤が所々にちりばめられているのは、ちょっとした気品を感じる。


「せっかく三人揃ってるんだから、ポニも来れたらよかったのにね」


 アリエスが少し残念そうに言った。


「しょうがないでしょ。講義なんだから」


 リタが苦笑する。


「あの子も頑張ってるし、邪魔しちゃ悪いわよ」


 ポニは講義を優先することになっていた。

 授業についていくため、より一層努力を積み重ねている。


「待ち合わせって、図書館前の広場でいいの?」

「……ん」


 ミルが頷く。


「あなたたちの知り合いも来るのよね?」


 ラットとミルが連絡を取り合ったことで、ラットやリオンの二人もまた再び図書館へと向かうこととなっていた。



 図書館前の広場へ到着すると、そこには見覚えのある二人の姿があった。

 ラットとリオンだ。


 先に気づいたアリエスが、軽く手を振る。


「待たせたわね」

「いえ。こちらこそ、ミルたちがお世話になりました」


 ラットが穏やかに頭を下げた。

 その横で、リオンも気楽に手を上げる。


「よっ」

「紹介しておくわね」


 アリエスは隣にいるリタへと視線を向けた。


「こっちは私の友達のリタ。探し物があるみたいで、一緒に来たの」

「リタよ。よろしくね!」

「俺はリオン」

「で、こっちが……」

「ラットです!」


 ラットが答えた。


 その瞬間だった。

 リタの表情が変わる__。


「……ラット?」


 先ほどまでの柔らかい雰囲気が、一瞬で消える。


「ラット・クリアノート?」


 声のトーンが、明らかに低くなっていた。

 ラットは、その変化に自然と身構える。


「……はい」


 短く肯定する。

 一方リオンは、その空気を完全に勘違いしていた。


 勇者パーティの一員として、ラットのことを知っている人物なのだと思ったのだ。


「おっ、なんだラット。有名人……」

「邪魔……」


 次の瞬間。


 リタの杖へ魔力が走った。


「ぐっ!?」


 完全に油断していたリオン。

 それでも一瞬の間にラットの前へと移動し、それを防ごうとした。


 だが、攻撃は予想を上回り重く、

 轟音と共に吹き飛ばされ、そのまま壁へと叩きつけられた。


「リオン!?」


 アリエスが目を見開く。

 一方、ラットはリオンの助けもあり、咄嗟に後方へと飛び退いていた。

 警戒して、なおかつ、リオンが庇ってくれたおかげで、直撃だけは避けられた。


 だが……

 リタの周囲を満たす魔力は、本気だった______。


【改訂版のご案内】


一章・二章を大きく見直し、三章も一部再整理した改訂版を公開中です。

四章以降については、現状ほとんど変更は入らない予定となっています。


改訂版は二話ずつ更新しておりますので、追いついたタイミングで、そちらへ移行していく予定です。


なお、伏線や物語の本筋に変更はありませんので、

現在こちらを読んでくださっている方は、そのまま読み進めていただいて問題ありません。


あとがきでは、Xにてご要望の多かったキャラクター同士の雑談形式の小ネタや裏話、次回予告なども掲載しています。


最後に、もしよろしければ何かしら反応などもいただけたら励みになります。

引き続き、『元勇者パーティのアイテム係』をよろしくお願いいたします!!


改訂版

https://ncode.syosetu.com/n5295md/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ