第48話 隠された弾丸
周辺を覆う、眩い光――
ロックが影に入りかけた瞬間、ラットは光玉を投げていた。
影から炙り出されたロックが、手で光を遮りながら、舌を打つ。
「また光玉か……」
影に潜られたら厄介だ。潜られれば最後、距離を取られ、蜂の巣になる。まずはこちらの土俵に持っていく。
「だがラット。お前一人じゃ、影を封じたところで意味がないな。まさか一人で勝つつもりか?」
構えられた魔銃がラットを狙う。
引き金が引かれた、その瞬間。
「なっ!?」
マジックバッグから、二つの弾丸が飛び出した。
漆黒の弾丸__ミルは、ロックの弾を躱し、標的を撃つ。
虚をつかれたロック。
一息で距離を詰めるミル。
振るわれたガントレットがロックに命中する。
――ガキン!
寸前、魔銃が防御した。
衝突音と共に散る火花。ミルの奇襲を間一髪で防いだロックは、口笛を吹いた。
「驚いた。まさかこの展開を読んでたのか?」
ミルの連撃を捌きながら言う。
「とっくに追ってない……そう判断してると思ったよ」
追ってこないと油断させ、ラットが一人になったところを襲う算段だったのだ、と。
そう。だから、あえて、一人になった。
わざと一人になり、誘き寄せた。
ロックをここで、倒すために__。
「相変わらず速いね、お嬢さん」
目にも留まらぬミルの殴打。銃身で的確に食い止めながらも、ロックの表情は渋い。
「正直、君とは戦いたくなかったよ。――ッ手加減出来そうにないからね!」
攻撃を受け流したロックは、ミルの勢いを逆に利用し、彼女を後方へ投げた。バランスを崩すミル。宙に放り出される。
向けられる銃口。
空気を貫く閃光。
――ピアスレイ。
ミルにまっすぐに放たれた貫通弾は、斬撃により、斬り捨てられた。
飛び出したもう一つの弾丸。
赤茶の弾丸__リオンが、ミルを守り、貫通弾を弾く。貫通弾の勢いにバランスを崩しそうになりながらも、リオンは脚に力を込めて耐えた。
「やっぱりこれを弾くんだな。だけど、ガラ空きだぞ」
バランスを崩し、一瞬動きが止まったリオンの前に、銃口が向く。
「!?」
だが、リオンは脚の力を抜き、姿勢を低く潜り込ませることで、突き出された銃口を素早く掻い潜る。
さらに、
――速力の水。
ラットが放った強化水が、リオンを推進させる。
姿勢を低く保ったまま振るわれた刃は、ロックを掠めた。
刃が振るわれる直前。ロックは、リオンの動きに反応し、バックステップで躱そうとした。だか、ほんの少しだけ、リオンの踏み込みが上回った。
響き渡る舌打ち。
反撃をしようと、ロックは再度魔銃を構える。
だが忘れている。ロックの敵は、一人だけではない。
「くっ!」
同じくスピードを底上げされたミルが跳ぶ。
暴走する金属音。ロックの左右で火花が激しく噴き出る。左は剣。右はガントレット。二体一の絶え間ない猛攻を、ロックは銃身で、体術でせき止める。
「いい連携だ。だけど、ちょっと前に集中しすぎだね」
二人の後ろに血液の塊が発生する。
<血魔法__タロットレイ>
しかし、
(リオン、後ろ!)
リオンは振り向き様に、発射前の血液の塊を斬り落とす。
(ミル、上!!)
ミルもマナベル越しのラットの合図で破壊した。
ロックは次々と移動砲台を発生させるが、ラットの合図で発射前に破壊される。
ミルとリオンが攻撃を担うなら、ラットは目だ。
全体を見渡し、二人の死角を守る。破壊を免れようと距離を離せば、避けられるだけの距離を与えてしまう。
これにより、移動砲台が攻略された。
ロックは応戦する。
しかし__
ミルと、
リオンと、
そしてラットの、三人での連携に、
削られていく。
徐々に、確実に。
ロックの額に、汗が滲む。
後方へと流れるロックの視線。
彼が求める濃い影は、ない。
与えない。
頭上で弾ける白い光。
投げた光玉が、影を霧散させる。絶やさない。逃げ場は、ラットが決して与えない。
「くそ、盤石か、俺への対策は……!」
ロックが吐き出す間にも、ミルとリオンの攻撃は止まない。
拳が髪を千切る。
剣が頬を切り裂く。
――追い詰める。
「ちっ! 不本意だが、仕方ない!!」
瞬時__。
集めた血液の塊を地面に落とす。
<血魔法__ブラッドボム!!>
地面に触れた血液の塊は炸裂し、三人の足元を中心にした十数メートルの地面を吹き飛ばした。
足場が崩れる。
ミルとリオンの攻撃の手が緩む。
着弾の直前で飛び退いていたロックだけがすぐに動いた。
逃げた__。
気づいたミルが体勢をいち早く立て直し、追う。
縮まる距離__。
直後、ロックが振り向いた。
銃声。
撒き散らされた散弾が、ミルの接近を阻む。
飛び退きながら発砲を繰り返すロック。
攻撃を避けるミル。
こうも乱射されてしまえば、さしものミルでも簡単には近づけない。
足止めされる間に、逃げ込まれてしまう。
――森へ。
【改訂版のご案内】
一章・二章を大きく見直し、三章も一部再整理した改訂版を公開中です。
四章以降については、現状ほとんど変更は入らない予定となっています。
改訂版は二話ずつ更新しておりますので、追いついたタイミングで、そちらへ移行していく予定です。
なお、伏線や物語の本筋に変更はありませんので、
現在こちらを読んでくださっている方は、そのまま読み進めていただいて問題ありません。
あとがきでは、Xにてご要望の多かったキャラクター同士の雑談形式の小ネタや裏話、次回予告なども掲載しています。
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改訂版
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