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第45話 疑似太陽〝ソルミナ〟

 __コンコン


「ミル、起きてる?」


 扉はすぐに開いた。

 現れたミルの身体越しに、机の上の様子が見える。多種多様の工具と、様々なアーティファクトが置かれている。


「ミル、今日もアーティファクトを修理していたんだね」

「ん……。早く直したかったから……入って」


 ヴィントミューレで破壊されたアーティファクトは多い。ミルは旅をしながら少しずつ、修理を進めていた。ミルの日課である。

 ミルは椅子に座り、作業を再開する。ラットは少し離れた位置で、その手元を覗き込む。


「今日は何を修理してたの?」


 ミルは手を止めずに答える。


「さっきの作戦……」


 小さな部品を持ち上げ、魔力を通す。


「こういうの……」


 瞬間、目が眩んだ。

 光__


 魔力を通された部品は、部屋を明るく照らした。


「光を放つアーティファクト……ロックの影対策だね」

「回り込む……障害物に強い」


 そうだ。王都での戦闘で使用した光玉は、障害物の少ない平地だからこそ効果的に働いた。だが、そうでなければ、逆に影を作ってしまう。

 ミルはそれに気づいたのだろう。


「いいね。光玉は障害物があると防がれやすいから」


 障害物に対しても回り込んで照らすことのできるアーティファクト。これならば、障害物が多い場所でも関係ない。さすがミルだ。

 それにしても、話を聞き、一から造るにしては早い気がする。


「これは何かを改良しているの?」


 ミルは短く答えた。


「洞窟用……」


 どうやら元々は、洞窟を探索できるように光を灯すためのアーティファクトらしい。確かに、障害物が多い洞窟を探索するにはうってつけだ。


「あ、でも……ロック対策となると、射撃の対策を考えないとすぐに撃ち落とされてしまうかも」


 ミルの手が止まる。

 ラットは考え込み、言った。


「アーティファクト自体が光るんじゃなくて、発光する魔力をいくつも放つ……とか?」


 一瞬の沈黙。


「できる」


 ミルは頷いた。

 部品を早速外し、別のパーツへと差し替えていく。よどみない手腕を、ラットはじっと見つめる。目の前で、組み上がっていく。アーティファクトが、滑らかに。

 まもなく、完成した。


「光を放出するようにした」


 ふわりと浮かび上がる、無数の小さな光。輝きが集まり、部屋の中が輪をかけて白くなる。


「すごい……」


 浮遊する光が視線を次から次へと惹く。


「これだけの光の中なら、本体はまず見えない。それに、それぞれの光を撃ち破られたとしても、またすぐに作り出せる……ということだね」


「自動の防御魔法もつけた」


 ロックは広範囲の射撃も可能だ。

 本体に偶然にも攻撃が被弾したときのために、自動で発動する防御魔法もつけた、と。至れり尽くせりだ。

 文句なしの出来栄えなのに。ミルはなぜか、少しだけ、困ったような顔をした。


「……消費が多い」


 元々が洞窟用で、光を灯して移動するだけのものだ。それを放出し、さらにこれだけの数の光となれば、そうなるだろう。


「最大まで魔力を貯めたとして、どの程度保つ?」

「五分くらい……」


 ラットは顎に手を当てた。


「五分……使い時が重要だね」


 顔に、ミルの視線が留まる。


「大丈夫だよ。それだけあれば、十分戦えるから」


 ミルが少し、微笑んだ気がした。


「ラット、他には?」


 突然質問され、咄嗟に口から漏れた。


「そうだなあ。もしまた洞窟探索でも使うなら、切り替えができたら便利だよね」


 言うや否や、ミルがさらに弄り出した。


「いや、ミル? 言ってみただけだよ。そこまでやらなくても」

「大丈夫……」


 無言で手を動かし続ける。小さな音が重なり、重なり。程なくして、改良版が出来上がった。


「これでどう?」


 ミルの指先がアーティファクトを操作する。光が一つに収束し、また分散する。


「すごい、完璧だよ!」


 すごいという意見と共に。ここまでさせてしまったことに、少しだけ胸が痛くなった。


「ごめんね、いろいろ注文が多くて」


 ミルは首を横に振る。


「実用的意見、大事……」


 杞憂だったようだ。ミルは気にしていないらしい。


「名前……アーティファクトの……」

「名前? 元々あるんじゃ?」

「魔道ライト……でも生まれ変わった」


 ミルの言うように、ここまで生まれ変わると、確かに別物だ。となれば……。


「太陽……ロックには当てはまらないけど、本来吸血鬼が苦手とするそれをもじって、〝ソルミナ〟なんてどうかな?」


 ミルは親指を立てる。


「ナイス……」


 どうやら気に入ってくれたようだ。


「ソルミナ……」


 ミルは出来上がったソルミナを起動させ、夢中で試運転を行っている。

 そんな彼女の、どこか浮かれた様子を最後まで瞳に刻み付けながら。ラットは、部屋を出た。



 冷え切った、相変わらず暗い廊下を歩いていく。


 ロックとの戦闘用に改良してもらったアーティファクト。

 本来であれば、あれだけ素晴らしいものを、血生臭いことなどに使いたくはない。

 戦闘にならなければいいのに__。


 だが、きっと、思い通りにはいかない。

 それでも。


 立ち止まり、ミルの部屋を振り返る。


 灯り続ける優しい明かり。

 笑みが零れる。


 それでも__足を止めたりしない。


 明かりに背中を押されるように、ラットは暗がりへと進んでいった。


【改訂版のご案内】


一章・二章を大きく見直し、三章も一部再整理した改訂版を公開中です。

四章以降については、現状ほとんど変更は入らない予定となっています。


改訂版は二話ずつ更新しておりますので、追いついたタイミングで、そちらへ移行していく予定です。


なお、伏線や物語の本筋に変更はありませんので、

現在こちらを読んでくださっている方は、そのまま読み進めていただいて問題ありません。


あとがきでは、Xにてご要望の多かったキャラクター同士の雑談形式の小ネタや裏話、次回予告なども掲載しています。


最後に、もしよろしければ何かしら反応などもいただけたら励みになります。

引き続き、『元勇者パーティのアイテム係』をよろしくお願いいたします!!


改訂版

https://ncode.syosetu.com/n5295md/

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