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第44話 裏切りの理由

「ロックはどうして、裏切ったと思う__?」


 触れた。

 ずっと仕舞っていた核心に。


 国王にあらぬ罪を着せられて逃走してからというもの、二人の世界は一変した。

 必死だった。生きるのに。マナベルが通じるようになっても、ラットたちにはヒーロのように周囲の状況を知る術がない。追手が近くにいるか把握できず、追跡や情報の漏洩を危惧して状況報告程度しかできなかった。故に、話せなかった。もっとも大事なことを。


 たが、今夜は違う。慣れ親しんだラインブリース。宿屋の個室。外とは違う。間に挟んでいるためだろうか。笑い合う余裕が、会話をする余裕が、ある。深掘りするには、絶好の機会だった。


「正直、今でも信じられないよ」


 ヒーロも、同じ気持ちだったらしい。話し始める。


「ただそれでも、実際に起こっているからね。結果から見て、どういう可能性があるか……」


「人質がいる。見限った。実はニセモノ。主義ってのもありそうかな」


 思い付く限りの可能性を列挙する。


「あとは……」


 ふ、とリオンの顔が浮かんだ。


「洗脳されてる、とかはどうかな?」


 突拍子がないと思うが、口に出してみて損はない。

 ヒーロの唸り声が聞こえる。


「その中だと、やっぱり一番ありえそうなのは〝人質〟かな。誰を? という疑問は残るけど」

「ロックの場合は女性なら、誰でも可能性はあるよね。ただ、気がかりなのは、その後の行動」

「なんで、俺たちに助けを求めなかったのか、だね」

「ロックは頭がいいから。脅されていたとしても、僕たちにしかわからない方法で伝えることはできたと思う」


 だがロックは、それをしなかった。

 つまり、〝人質〟は違う。


「〝見限った〟はどういうこと?」

「僕たちに至らないことがあって〝見限った〟ってこと。思い当たる節は何かある?」

「……ロックに見限られるようなことをした覚えはないかな」

「だよね。そもそも、戦争を終わらせるために中立の勇者パーティに入ったんだし。今更、しかもロックから見たら敵国につくなんて……ロックの方がよっぽど……」

「そこが一番不自然だよね」


 〝見限った〟も違う。


「〝ニセモノ〟?」

「ホンモノ。あの実力は絶対」


 実際に体感したのだ。あれが偽りな訳がない。


「〝主義〟っていうのは?」

「何かの目的を成し遂げるために必要だった。とか__」

「なくはないように思えるけど。そのために一方的に裏切るってのはロックらしくはないよね」

「道を違える前に一言ありそうではある」


 __なくはない。というくらいの可能性だろうか。


「となると、〝洗脳〟か……」

「まあ、ありえないよね。ロックは加護を持ってるもの」


 加護は強大だ。悪用されないために、状態異常を無効化する力もある。洗脳は不可能だ。


「ロックだけじゃない。王都の出方もおかしいよね」

「あれは見事な手のひら返しだったね。くるくるだよ」


 手のひらを返された張本人は、やはり堪えかねるものがあるらしい。おどけた口調の中に、毒が混じっている。


「そりゃあ、陛下は__と言うより大臣とかかな。完全な人間族ヒューマ至上主義だからね。どんな種族でも大歓迎の俺たちをよく思ってなかったのは知ってたよ。知ってたけれども、だからって、普通嵌めるかい?」


 ラットも同意見だ。

 自国の看板となる勇者パーティが多くの他種族で結成されていたのが気に食わなかったのはわかる。とは言え、ああも自国の勇者を寄ってたかって陥れるだろうか?


「ヒーロに、勇者に何かあれば、国民だって黙ってないのにね」


 ……いや。

 同調した後で、ふと頭に浮かぶ。


 黙っていないとわかっているからこそ、あの暴論なのか?

 国家転覆を企てる謀反人に仕立て上げれば。捕縛の正当性は、生まれる。

 …………いや、だとしても。やはり、嵌める理由がわからない。


「暴いてやりたいところだが、情報が少なすぎるね」


 結局は、ヒーロのその一言に尽きる。


「ロックだろ。陛下だろ。ああ、ラットがバーで言ってた魔族のことも無視できない。まったく、裏で何が起こっているやら。頭が痛くなる」


 情報がない。


「王都を追放されちゃったから、突き止める術もない。シュトルムへ行って協力を仰ぐしかないか。いつ到着できるか、さっぱりだけど」


 情報を知る術もない。

 けれど。


「……明日」


 ラットは呟いた。


「もしかしたら、ロックについては、わかるかもしれない」


 ヒーロの気配が、引き締まった。


「そっちに現れたの?」

「いや。ただ、現れないのはなんでか考えたんだ」


「〝ヴィントシュティレでの待ち伏せ〟って言ってなかったかい?」

「そうだと思う。ただ、もしかしたら僕たちの誰かが孤立するのを待ってるのかも」


「そうかな? 実力が拮抗してるならまだしも……」

「ロックの考えは違うのかもしれないよ」

「というと?」

「実力は拮抗している__」

「へえ」


 真剣だった声が、弾んだ。


「――そんなに強いんだ、あの二人」


 察した。


「うん、強い」


 笑い返す。


「ギアノイドのミルさんはともかく、リオンくんもかい? 剣の腕が立つとは聞いてたけど、鍛治師だろう?」


「鍛治師でも、だよ。好きなものは、極めたいでしょ?」

「そうだね?」


 いまいち、ピンときていないようだ。


「リオンは鍛冶を極めるために、剣や武器の扱いも学んだんだよ。使い手の気持ちを知るためにね」

「あ~、そういうこと」


 ラットと同類であると、わかったようだ。


「うーん、手合わせしたくなってきたな。もちろん、ミルさんとも」

「けど、ロックは戦いたくないだろうね。実力が拮抗してるなら、間違いなく避けると思う」

「だね。女の子にデレデレだし……」


 ヒーロの笑い声が、不意に止まった。


「__ラット、何をするつもりだい?」


 気付いたようだ__。

 ラットが、どんな行動を取ろうとしているのかを。


「一人になったら来るって、わかってるんだ。利用しない手はないでしょ?」


「勝算はあるんだよね?」

「なかったら仕掛けないよ」

「ならいい」


 ラットの断言に、ヒーロは安堵したようだ。自殺行為をしようとしている訳ではないことは、伝わった。


「あまり無茶はしないでよ。信じてるけどね、俺だって心配になるときはあるんだから」

「あはは、御心配おかけします」

 

 __こうして、マナベルを切った。



 考慮すべきことは多い。

 ロックの裏切り。王都の不可解な行動。

 頭を冷やすため、夜風に当たろうと部屋を出た。


 寝静まった廊下を歩いていく。

 途中、ミルの部屋から、明かりが漏れていることに気が付いた。


「ミル__、起きてるのかな___?」


【改訂版のご案内】


一章・二章を大きく見直し、三章も一部再整理した改訂版を公開中です。

四章以降については、現状ほとんど変更は入らない予定となっています。


改訂版は二話ずつ更新しておりますので、追いついたタイミングで、そちらへ移行していく予定です。


なお、伏線や物語の本筋に変更はありませんので、

現在こちらを読んでくださっている方は、そのまま読み進めていただいて問題ありません。


あとがきでは、Xにてご要望の多かったキャラクター同士の雑談形式の小ネタや裏話、次回予告なども掲載しています。


最後に、もしよろしければ何かしら反応などもいただけたら励みになります。

引き続き、『元勇者パーティのアイテム係』をよろしくお願いいたします!!


改訂版

https://ncode.syosetu.com/n5295md/

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