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第111話 神威の顕現

 シールが構えたことで空気が変わった。

 まるで大地そのものが震えているかのような重圧がその場を支配した。


 前線にいた兵士たちが思わず息を呑む。


「団長が加護を……!」


 誰かが声を漏らした。


 シールを中心にして、魔力が波紋のように広がっていく。


 広がった魔力は、やがて巨大な壁のような圧迫感を伴い始める。

 それはまるで、見えない城塞が戦場へ展開されていくかのようだった。


 敵側もその異変を察知したのだろう。

 女オーガが足を止めた。

 後方にいた剣士もまた視線を向けてくる。


「……思い知るがいい」


 シールは低く呟く。

 そして、その場で巨大な盾ごと腕を振り上げた。


「……来い」


 直後。

 広がっていた魔力が、一気に収束した。


「っ……!?」


 女オーガの身体が強引に引き寄せられる。

 地面を踏み砕きながら耐えようとするが、それでも止まらない。


 加護による強引な引き。

 空間が圧縮されることにより、女オーガとシールの距離は縮まった。


 そこへ。


「ぬぅぅぅぅぅんっ!!」


 振り上げられた巨大な拳が叩き込まれる。


 ゴオォォォォン______


 衝撃と共に、女オーガの身体が地面へ叩きつけられた。

 周囲の大地が砕け、放射状に亀裂が走る。


「……っ!」


 それでも女オーガは沈まない。

 砕けた地面の中から、野獣のように獰猛に感情を荒げながら、起きあがろうとする。

 シールの首に食いつかんばかりの剣幕だ。

 その眼光はさらに鋭くなっている。


「これでも倒れんか。なら……」


 再び拳を振り上げた。


「吹き飛べ!」


 ドオォォォォォ______


 拳が叩き込まれた瞬間、加護が発動する。

 女オーガの身体が砲弾のように吹き飛ばされた。


 それは単純な腕力ではない。

 加護による空間拡張がその勢いを増長させた。


「今じゃ! 撃て!!」


 シールの声が響く。

 盾となっていた女オーガが一時的とはいえ戦線を離脱した。


 今ならば、銃の攻撃が通る。


 ダダダダダダダン________


 銃士部隊が一斉射撃を開始した。

 無数の銃弾が剣士へと襲いかかる。


 その前へ、少年と甲冑兵が飛び出した。


「なっ!?」


 二人は剣士を守るように立ち塞がる。


 そして、甲冑兵が大剣を地面へ叩きつけた。


 ドッ、ゴァァァァァッ____


 衝撃と同時に暴風が発生する。

 迫っていた銃弾の軌道が逸れていく。


 だが、完全には防ぎきれない。

 少年と甲冑兵は剣を前へ構え、急所を守りながら銃弾を受け切った。


 撃ち抜かれる二人。

 銃弾は甲冑兵のそれすらも貫通した。


 それでも二人は倒れない。

 前衛が気を引いている隙に壁が展開される。


<守れ__シャドウ・ウォール>


 ヴヴヴ______


 周辺に影が広がる。

 同時に地面から巨大な闇の壁が何重にも展開された。


 銃弾が次々と壁へと突き刺ささる。


「来るぞ!」


 兵士の叫び声。

 影の壁に隠れながら近づいてくる。


 ザッ__


 剣士、少年、甲冑兵が飛び出してきた。


「ぐぁっ」


 土人族ドワーフの兵士たちが次々と斬り伏せられていく。


「こいつら、さっき銃弾を食らっとったよな!?」


 兵士の顔に動揺が走る。

 銃弾をいくつも食らったにも関わらず、動きがいっさい衰えていない。


 少年も甲冑兵も、たとえ致命傷を避けていたとしても確実にダメージはあったはずだ。それなのに、まるで何事もなかったかのように戦い続けている。


 その異常さが、兵士たちの士気を削っていった。


「ワシに続け!!」


 シールが前へ出る。

 巨大な盾を構え、そのまま影の壁へと突進した。


 ドオォォォォ______ン


 影の壁が砕け散る。

 衝撃音が肌に響く。


 だが、一枚では終わらない。


 さらに、二枚、三枚。

 何重にも展開された壁を、シールは強引に破壊しながら突き進んでいった。


 そして、視界の端に甲冑の兵士を捉える。


 甲冑兵は壁を破壊しながら突き進むシールに狙いを定める。

 大剣を振り上げ斬りかかる。


「届かんよ」


 次第にシールとの距離が広がっていく。

 そして、甲冑兵は壁へと叩きつけられた。


 ぐぅん______


 甲冑兵を壁へと押さえつけたまま、シールは一瞬で距離が詰める。


「っ!?」


 直後。


 ゴォォォォォン______ッ


 背後の壁と巨大な盾で挟み込むように押し潰した。

 鎧が軋み、壁が砕ける。


 衝撃で周囲の地面すら揺れた。


「まずは一人じゃ」


【改訂版のご案内】


一章・二章を大きく見直し、三章も一部再整理した改訂版を公開中です。

四章以降については、現状ほとんど変更は入らない予定となっています。


改訂版は二話ずつ更新しておりますので、追いついたタイミングで、そちらへ移行していく予定です。


なお、伏線や物語の本筋に変更はありませんので、

現在こちらを読んでくださっている方は、そのまま読み進めていただいて問題ありません。


あとがきでは、Xにてご要望の多かったキャラクター同士の雑談形式の小ネタや裏話、次回予告なども掲載しています。


最後に、もしよろしければ何かしら反応などもいただけたら励みになります。

引き続き、『元勇者パーティのアイテム係』をよろしくお願いいたします!!


改訂版

https://ncode.syosetu.com/n5295md/

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