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1500万円で異世界を買い叩く 〜ブラック企業で貯めた金で【銀行】を作り、【産業革命】を起こして魔法世界を経済支配する〜  作者: 高山 虎
第四章 現代編

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あるコンサルタントの苦労

香港の喧騒を見下ろす高層ビルの一室。


投資市民権取得を専門とするコンサルタント、チャンは、手元の端末に表示された依頼主――九条智からの追加資料を眺めて、ふっと息を吐いた。


「さて、これは少し手間だな」


本来なら、これは「簡単な仕事」のはずだった。 依頼主の九条は驚くほど金払いが良く、チャンには現地政府の閣僚級にまで届く太いコネがある。通常なら相手国との事務手続きだけで終わる案件だ。


しかし、今回の話を難しくしているのは、対象者であるエレナとカイルの二人に「元の身分を証明する書類」が、戸籍の一片すら存在しないことだった。


「身分証明書に、無犯罪証明書……。この世に存在しない人間に、存在していたという『過去』を作らなければならない」


だが、上乗せされた特別手数料(リスク・プレミアム)を含んだ依頼に頷いてしまった以上、プロとして「できない」という選択肢はない。


それに、この稼業を続けていれば、こうした「厄介な事情」を抱えた客は少なくないのだ。チャンは苦笑した。


「まあ、やりようは、いくらでもあるさ」


チャンは手慣れた手つきで、東欧とアフリカにある、腐敗が「機能」している国々のリストを呼び出した。


政情不安な国の役人に数万ドルを握らせれば、指定した人物がその国に実在していたことにするのは造作もないことだ。出生証明も、国籍証明も、公的機関が発行した「真正な書類」として作り上げられる。


もちろん、それだけでは不十分だ。 そうした国のパスポートでは、先進国への渡航は厳しく制限されるし、国際機関の精査が入れば一発で「幽霊」だと露呈しかねない。


「だからこそ、依頼主はセントクリストファー・ネイビス籍を欲しているんだろう。抜け目ないことだ」


投資市民権制度を持つ国にとって、国籍の実質的な販売は国家の主要な外貨獲得手段の一つだ。必要な金銭と書類さえ形式的に整っていれば、元の身分を深く追及しないという暗黙の了解がある。


一度その国のパスポートを手に入れれば、過去のしがらみは消え去り、身分は一気に「国際的な富裕層」へと塗り替えられる。


チャンは、この「人生のロンダリング」とも言える劇的な変化を見るのが楽しみでこの仕事をしている。


チャンはキーボードを叩き、二人の「前身」となるデータを捏造していく。ただ名前を登録するだけではない。かつての居住地の住所、通っていたはずの学校の記録にまで、それらしい過去を紛れ込ませる。


作業の合間、チャンはふと手を止め、エレナとカイルの写真を眺めた。


「……しかし、不思議な二人だ。本当に兄妹か?整形手術の痕跡もない。指紋も、網膜も、国際警察のデータベースにもヒットしない。文字通り、天から降ってきたような人間だ」


チャンの元を訪れる訳アリの「幽霊」の多くは消したい過去を持つ犯罪者か、死を装いたい政治家や資産家だ。彼らには必ず、隠しきれない傲慢さや逃亡者特有の卑屈な影などの特徴がある。


だが、九条が連れてきた二人の瞳にはそれらが一切なく、そのことが不思議でならなかった。


「よし、あっちの仕込みは終わったな。……次は、と」


サトシの依頼を難なくやり遂げたチャンは、新しいクライアントのファイルを開いた。


「ほう、国際指名手配中の中南米のマフィアか。これもまた、やり甲斐がありそうだ」


チャンは満足げに煙草に火を点けると、次の「生まれ変わり」のプロットを描き始めた。


だがその脳裏には、最後まで正体不明だったあの二人の顔が焼き付いていた。

最後までお読みいただきありがとうございます。


「続きが気になる!」「サトシの経済侵略を応援したい!」と思っていただけましたら、下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価いただけると執筆の大きな励みになります!


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