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Trillion of Labyrinth 一生懸命癒やします!  作者: 魚介貌
第1話【ある滋養治士のお話】
31/69

彼女が堕ち炒る2h⑨

 マヤヤの寝落ちより3時間後。『唐揚げ定食』一同の探索は再開した。

 全員が軽くスリープを入れた事で心機一転。と言いたいところだが、やはりマヤヤとウスネの受難は変わらない。

 せめてもの救いは、野郎組の殲滅ペースが秒殺に近くなり、完全に“媚薬漬け”となる前には助けられる事だろうか。


 加えて。


「はう~あ~。このケープ、助かります~」


「ちょっと、こういうシチュに慣れかけてるのが、怖いけどにゃぁ」


 アバターへの被害は少ないが、少女等の真っ裸状態回避までには至れない。だがカッツェの機転と裏技で、少なくとも“全裸引き回し”にはならない状況にはなっていた。


 少女組二人が身にまとっているのは、カッツェが職人スキルで作成した、補修布や皮の有り合わせの素材クズを継ぎ接いでタオルケット大にした素材としての“布アイテム”である。

 ウスネとマヤヤはそれをカッツェから貰い、ストレージへと収納した後、単にアイテムとして顕現化させたのである。所持する当人ならば、アイテムを自由に持つのに制限はかからない。装備としての機能は得られないが、裸体を隠すために“頭から被る”には問題無いのである。


 優れたところは、例えこの状態でエステルスライムに襲われても布が破壊対象にはならないところである。対象となるのは“武具”であること。装備していること。襲撃され手放すと布自体は消えるが、それはストレージへと回収されるだけであり、戦闘後には即用意できるのだ。

 自我がヤバいほど刺激された状態では辛いが、休憩後は幸いにも、そこまで酷くは悶えていない。


 とは言え普通枠の感性なウスネは、裸体を布一枚で隠し歩くのにはまだ抵抗あり、であるが。


「何となく分かった。このスライム、“女子プレイヤー”がいるから出るな。ていうか、襲うのが確定してからじゃないと“実体化してない”」


「うう~、傍迷惑にゃーぁ!」


「そのプロセスが基本なら、他のエリアにも居るかもしれんでゴザルな」


「どうかなア、“ToL”って案外女子率多いし、ドワーフ系のクエストだってあるゼ。鍛冶師関係なんて定番すぎるしヨウ」


「いや、ほぼ無いと思うよ。俺はドワーフの鍛冶師関係で、しかも戦闘可能エリアでなんて知らない」


 トキヤの指摘に皆が“あ!”と納得する。例えドワーフ系鍛冶師とエステルスライムの関係が深くとも、『襲撃される』という状況は戦闘が可能なエリアでしか有り得ない。


「なるっ、じゃ、このエリアに再入場が不可だった場合、対象エリア探しに走る。な流れデ」


「「「了解だ」」」


 少々過剰にやる気を見せる野郎組。反比例するようにスライムのエサ扱いの女子組の視線は、やや零下である。


「マヤヤ、当然のように連れてかれると思うにゃが、嫌は嫌と言えるんにゃよ」


「うーん。でもあそこまで楽しみな風に見えると、断り辛いよう」


「ホントにもう、いい子過ぎだにゃあ」


 実は、休憩後は1~2回の戦闘で城へと向かう予定であった。だが再開早々に初回の戦闘でエステルスライムからドロップした素材が、野郎組の目の色を変えてしまう。

 『堕神の骨鋼(小)』(ヴァンスクラップ)。何に使えるのか全く不明の謎素材であった。だが、概要ヘルプが読まれたとたん、単なる興味は“餓え”へと変わる。


 『堕神の骨鋼とは、太古から天空より飛来する謎の金属塊である。火の巨人族がこの金属塊を素材に武器を打ち、それらは後に、各種族の王族に神器として伝わるようになったという、伝説がある』


 印象としては隕石、または隕鉄の扱いに思える。が、イワオ等の関心は別だ。現在、確認される最前線迷宮は、地下百階規模の迷宮が三塔。どれもが今は滅んだ謎の王族を祭る古墳扱いで、最下層にはその王族の“神器”が収められている。という設定が解禁されている。

 これだけなら“凄い性能の武器?”で終わるのだろうが、実は先日、その迷宮の一つがクリアされたのである。それて神器の性能もある程度公開され、附属する“権利”も行使された。


 それは、『建国』である。


 神器には最強の武器という意味と同時に、プレイヤーに建国の権利を与える“鍵”という役割もあるのだ。最初の国が造られた事で、初期の候補地もサービス側から発表された。その数は20。確認された迷宮より、遥かに多い事となる。

 そう言うことで『トリオン・オブ・ラビリンス』では、残り二つの迷宮の踏破と並行し、未確認らしき17の神器探しにも躍起になっているのが現状なのである。


 その神器が、新たに創れれる可能性の誕生。となると、ゲーマーとして燃えないわけがないのである。例え、未成年女子にヤバい性癖を持たせる事になろうとも、だ。

 まとめ役であるイワオも、やや正気を失いつつある感情の高ぶりを隠しきれていない。そして、本来の目的を蔑ろにする、重要な問いを発した。


「さてトキヤ、ここで重要な選択だと思う。『呪い』の早急な解除と、神器の素材の確保。優先度はどっちだ?」


 マジな目のイワオにマジな目で即答するトキヤ。


「神器!」


「よく言った! さすが現役の地質天文野草調査部、副部長。でゴザル!」


再発生(リポップ)するかの確認も要りそうジャネ? 手分けする? 何なら片方(マヤヤ)受け持つヨ!」


 と、効率重視なヤる気のセリフも飛び出す始末。

 すっかり『呪い』の話題も消し飛び、瞬殺モードで街中を浚う勢いの一行なのである。


「よし、隊列も変える。どうせエクセルスライムの先行は抑えられん。だからウスネ達の防衛は“辞め”だ。独りで先行してもらい、襲撃のエサ役にする」


「うにゃあ! 堂々の捨て駒宣言来たぁー!」


「はーぁい~♡」


 “慣れ”なのか、女子組の対応も変化しかけていた。

 カッツェ作のケープに身を包む二人は、既に武具系の装備は身に着けていない。無装備状態を表すインナーだけの姿である。


「よし、ゴー!」


「はいー♡」


イワオの指示で、室内に鍛冶設備のある廃屋を選び少女等のうち片方、今回はマヤヤが無造作に侵入する。エクセルスライムが湧く場所ならば──


「ひやんっ!」


 ボタボタと空気中から湧き出すようにマヤヤを押しつぶし、呑み込み現れる。戦闘状態となりケープはストレージへと消失。マヤヤのインナー表示が弾けるように消され、状態異常になったと全員に知らせる事となる。

 後はもう、完全な作業プレイである。マヤヤを呑み込んだスライムに火属性の攻撃が集中して叩き込まれ、水風船が割れるようにして倒されマヤヤを解放する。そのマヤヤを狙い、新たなエクセルスライムが寄るか湧くかなので、それを次の標的として倒す。一度の戦闘で現れるエクセルスライムは約三体だ。戦闘が終わり、室内にへたり込むマヤヤを手の合いている誰かが回収して介助介護し、しかし回復する暇は惜しむのでそのまま移動だ。次のエサはウスネが担当するからマヤヤはその間に休む恰好である。

 そして、ウスネが休む時はマヤヤの出番である。


 回復役が囮というパーティー戦闘では致命的な陣容だが、戦闘状態で攻撃役がダメージを受ける状況にすらならないので、特に問題にはなっていない。

 というよりも、ヘイトが少女等から離れないと言おう。HPへのダメージも無いのだが、取り込んだ少女等を執拗に“どうにかしよう”という行動を優先しているのである。

 今のところ攻撃にヘイトを持つのは、仲間が少女を取り込んでフリー扱いになったスライムだけである。


 こうして、その場対応ながら効率の良い殲滅戦闘は続けられた。


 約4時間毎に小休憩が挟まれ、各段に上がった戦闘スピードも合わせ、戦闘時間が12時間にもなろう頃には300体近くのエステルスライムが倒されていた。

 成果は『高純度霊銀』が64個。売るにしても自炊にしても、装備の性能的にはかなりのプラスとなる数である。『堕神の骨鋼』は“小”が27個に“中”が5個。そして“大”が1個である。

 その他、鉄や銅など一般の素材も大量だがまとめて誰かのストレージに格納されたので数は憶えられていない。『堕神の骨鋼』と同じく未知の素材『核』も大量ドロップだが、ヘルプを読んでも意味が分からないので、一般素材と同じ扱いで放置気味である。


 これら希少素材の数がどういう価値を持つかは誰にも分からないが、野郎組は全員、充分な満足感を得ていたりする。そして満足感を得ているが、これで終了という事でもない。再び野営地にて一休みの後、“巡回狩り”を再開するのが当然。という暗黙の了解の流れになっていた。

 既に城へ向かうのは“ついで”の気分で、もう1日は街中でスライム狩り、という流れである。


 だから、誰も気づかなかったのだ。


 先ずは、女子組の装備ダメージのシステム以外の検証不足。秒殺による恩恵で、女子組が乱れる事は激減していた。だが、その影響がどんな結果を。例えばアバターへと効果が累積するのだとは、思い至っていなかったこと。

 次に、マヤヤはとっくに、ウスネも休憩前には呪い除けのクリスタルを全損していた事だ。さらに首輪で抑えられていたはずの、彼女等に刻まれたスキル『情欲恋慕』の経験値がマヤヤは『Lv6』へ。ウスネもレベルが発生し、『Lv1』へと上昇していた事に。


 その結果である。

 良く見れば、彼女等の瞳には実に分かりやすい“エフェクト”が発生している。点滅するハート模様。派手にチークを吹いたように、頬も真っ赤に染まっていた。

 所謂、『好き好きモード』というやつだ。


 しかし、効率重視となった野郎組は少女等の変化に気づかなかった。野営地にて無言で大人しくニコニコと微笑む少女等に。そして休憩時間の流れの説明をして、次の狩りの時間まで、各人スリープへ。


 だから、野郎組は誰も気づかなかったのだ。


 彼女等が、明らかに正気を無くしている少女等が、ベッドで休む野郎組に、何故、にじり寄っていくのか。


 その時は誰も知り得なかったので、ある。



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