彼女が堕ち炒る2h②
『呪い』の効果は、正確には、“今回”の『呪い』の効果は、装備が着用者から“希望”や“願望”を示すデータを抽出し、スキルとして固定する。固定した後、装備からアバターへスキルを移動、アバターの固有スキルとして“定着”させる。これらのスキルはアバターの意識、感情、行動を特定方向へ偏らせる。更にその状態を土台として偏った状態を上乗せし、より状態を過激化させていく。
『鬼魂の鎧』という名称と、その背景の概要を無視し、機能のみでの説明をするならば。
この装備は、『人を発狂に導くシステム』と言える。
「──とは言え、発動機能やスキル内容が分かれば、『呪い』はそう怖いもんでもない。つか、基本機能に組み込まれてる“もの”では『最高のシステム』と、オレは思う」
「『呪い』が? 何でだ?」
「事実上、上限無しでスキルを保有できるんだぞ。しかも、装備ではなくアバターにだ。大昔のシミュレーションで“空を飛び”、“弾数無限のロケット砲”を装備し、“透明状態”で被弾しない“歩兵ユニット”なんつー改造データが流行ったが、それをVRで再現もできる。作って楽しいかは知らんがな」
「そりゃまた……すげーなあ」
イワオはロレンス酒場近くのプレイヤーショップに来ている。
カッツェの馴染みの装備職人の店で、その店主はトキヤのクエスト内容の情報提供者でもある。
加えてトキヤの『呪い』に対抗するアイテム提供も約束してくれた、頼みの綱と呼べる人物である。
「ところでイワオ、マヤヤはどうしたんダ?」
「んむ、何か大至急『呪い』対策の処置をせんと危険らしくてな。今ウスネと“邪悪厄隷嬢”とで宿にいる」
「……ゲっ?!」
「ああ、どうやら“感染”してんだな」
店主はエヴァラの事も知っているようである。
マヤヤがそういう状況なのでイワオは単身移動し、店主と『呪い』解除の行動方針をまとめているのである。
「トキヤに連絡入れタ。店主の言うとおり、『呪い』のカウントダウンが始まってタ。恥ずくて言えなかったそうだ」
「まあプライドもあるだろからなあ」
「若いねえ。懐かしいねえ。つかゲロスケ、何時『呪い』が完了するか聞いたか?」
「大体後3時間だってサ」
「『呪い』完了後に馬車で帰って、まあ4時間以内か。今日一日は潰れる感じか」
「どうかねぇ。その、トキヤか。そいつの『呪い』がどう完成したかで“対消滅”させるための素材選定になる。場合によっちゃあ手元の在庫で足りないかもしれん。したらそれで、時間を食うぞ」
「なるほど……。というか“対消滅”って何だ? 『呪い』の解除をするんじゃないのか?」
「あー、それも説明いるかぁ」
店主の説明によると。
『呪い』は基本、付加する事しかできない。ほとんどがスキルという形を取るし、それをアバターデータに書き込むので、無理やり部分削除的にスキルを無くすと、アバター自体のバランスが崩壊するのである。
故に店主が使う方法は、元の『呪い』の効果と真逆の効果を作成して、それを『呪い』として追加するのである。アバターにはスキル所持制限が無いからこそできる荒技である。
問題は、結果として発現を抑制できるが、アバター自体には相反する『呪い』が存在し、それがアバターとプレイヤーへの負荷になる事だ。加えて相反する呪いが完全に相殺する状態にならなければ、何らかの症状がそのプレイヤーに発現する。
対処する呪いが一つならば、大雑把な相殺でも“問題無い”と妥協できる結果にする事は難しくない。
だが、トキヤの例では同系統複数の呪いがスキルとして既にあり、しかも当人だけではなく、周囲のプレイヤーにも“悪性”のスキルを刻むくらい質が悪い。
「だから最低限。その坊主の『呪い』が“固定”しないと、相殺用の『呪い』も作れないって事になる。エヴァラの嬢ちゃんが動いてるってことは、新人ちゃん等のエロい呪いが洒落になってねぇんだろうが、結果がどうなるか怪しいかねえ……、リーダーさんよ、その話は聞いてこなかったのかい?」
「いやあ、遭うなり“男は出てけ”と追い出された。仲間へのメールも、返事こないな」
「そういや、昨夜からテンマルと音信不通ダゼ?」
「誰そいつ?」
「ああ、仲間の一人だ。手分けして情報集めてたんだが。そういや、テンマルも結構『呪い』受けてたな」
「あー、そいつ。なるべく早く見つけた方が良いと思うぞ……。感染してねーわけがねぇ」
パーティー状態に居るメンバーは、互いに位置を確認できるマーカーを発信している。視界の任意の位置に置ける半透明の球体羅針盤があり、視覚に映らない位置に居たり遠く離れた場合、互いに居る方向へと矢印で表示されるのである。迷宮内で離れ離れになっても、この機能のおかげで合流することが容易い便利機能だ。
だが街や拠点の非戦闘エリアでは、待機状況として個人個人のプライベート行動になることも多い。であるから、デフォルト設定では非表示としているのがゲーム内常識なのである。
その機能により、テンマルは簡単に発見された。
モタルサ中心オアシスの、街でも男性プレイヤーが多く集まる一角。
ゲーム内サイトにアップされない、噂や不確実性の高い小さな情報。誇大妄想や嘘八百入り乱れるダメな系統が屯する半地下の、所謂“アンダーグラウンド”である。
これから有力な情報になる。そんな情報未満の戯言が集まる重要といえば重要な場所なのだ。テンマルが居るのも頷ける。
であるが、同時に怪しい情報繋がりでネットに上げるには危険な情報や情報が集まる場所でもある。
“男性プレイヤーが集まる”で意味は通じるだろう。
最初はマトモに『呪い』を調べていたテンマルだったが、雑多なネタから情報抽出する流れで“魅力有る題名”に脱線。やはり呪いの影響でエロい方面への精神が偏らされた挙げ句、『神!』やら『究極絵師!』やら『ケシカラんケシカラんもっとドウゾ!』と奇声をアゲるクズと化していたのであった。
「あー、こいつ実験台にして試作品でも創るかね……」
店主の言葉『是非、よろしく!』としか言えないイワオであった。
無双キャラのルーツって、今考えるとコイツかも?




