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Trillion of Labyrinth 一生懸命癒やします!  作者: 魚介貌
第1話【ある滋養治士のお話】
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彼女が堕ち炒る2h②

 『呪い』の効果は、正確には、“今回”の『呪い』の効果は、装備が着用者から“希望”や“願望”を示すデータを抽出し、スキルとして固定する。固定した後、装備からアバターへスキルを移動、アバターの固有スキルとして“定着”させる。これらのスキルはアバターの意識、感情、行動を特定方向へ偏らせる。更にその状態を土台として偏った状態を上乗せし、より状態を過激化させていく。

 『鬼魂の鎧』という名称と、その背景の概要を無視し、機能のみでの説明をするならば。

 この装備は、『人を発狂に導くシステム』と言える。


「──とは言え、発動機能やスキル内容が分かれば、『呪い』はそう怖いもんでもない。つか、基本機能に組み込まれてる“もの”(システム)では『最高のシステム』と、オレは思う」


「『呪い』が? 何でだ?」


「事実上、上限無しでスキルを保有できるんだぞ。しかも、装備ではなくアバターにだ。大昔のシミュレーションで“空を飛び”、“弾数無限のロケット砲”を装備し、“透明状態”で被弾しない“歩兵ユニット”なんつー改造データが流行ったが、それをVRで再現もできる。作って楽しいかは知らんがな」


「そりゃまた……すげーなあ」



 イワオはロレンス酒場近くのプレイヤーショップに来ている。

 カッツェの馴染みの装備職人の店で、その店主はトキヤのクエスト内容の情報提供者でもある。

 加えてトキヤの『呪い』に対抗するアイテム提供も約束してくれた、頼みの綱と呼べる人物である。


「ところでイワオ、マヤヤはどうしたんダ?」


「んむ、何か大至急『呪い』対策の処置をせんと危険らしくてな。今ウスネと“邪悪厄隷嬢”とで宿にいる」


「……ゲっ?!」


「ああ、どうやら“感染”してんだな」


 店主はエヴァラの事も知っているようである。

 マヤヤがそういう状況なのでイワオは単身移動し、店主と『呪い』解除の行動方針をまとめているのである。


「トキヤに連絡入れタ。店主の言うとおり、『呪い』のカウントダウンが始まってタ。恥ずくて言えなかったそうだ」


「まあプライドもあるだろからなあ」


「若いねえ。懐かしいねえ。つかゲロスケ、何時『呪い』が完了するか聞いたか?」


「大体後3時間だってサ」


「『呪い』完了後に馬車で帰って、まあ4時間以内か。今日一日は潰れる感じか」


「どうかねぇ。その、トキヤか。そいつの『呪い』がどう完成したかで“対消滅”させるための素材選定になる。場合によっちゃあ手元の在庫で足りないかもしれん。したらそれで、時間を食うぞ」


「なるほど……。というか“対消滅”って何だ? 『呪い』の解除をするんじゃないのか?」


「あー、それも説明いるかぁ」


 店主の説明によると。

 『呪い』は基本、付加する事しかできない。ほとんどがスキルという形を取るし、それをアバターデータに書き込むので、無理やり部分削除的にスキルを無くすと、アバター自体のバランスが崩壊するのである。

 故に店主が使う方法は、元の『呪い』の効果と真逆の効果を作成して、それを『呪い』として追加するのである。アバターにはスキル所持制限が無いからこそできる荒技である。

 問題は、結果として発現を抑制できるが、アバター自体には相反する『呪い』が存在し、それがアバターとプレイヤーへの負荷になる事だ。加えて相反する呪いが完全に相殺する状態にならなければ、何らかの症状がそのプレイヤーに発現する。


 対処する呪いが一つならば、大雑把な相殺でも“問題無い”と妥協できる結果にする事は難しくない。

 だが、トキヤの例では同系統複数の呪いがスキルとして既にあり、しかも当人だけではなく、周囲のプレイヤーにも“悪性”のスキルを刻むくらい質が悪い。


「だから最低限。その坊主の『呪い』が“固定”しないと、相殺用の『呪い』も作れないって事になる。エヴァラの嬢ちゃんが動いてるってことは、新人ちゃん等のエロい呪いが洒落になってねぇんだろうが、結果がどうなるか怪しいかねえ……、リーダー(イワオ)さんよ、その話は聞いてこなかったのかい?」


「いやあ、遭うなり“男は出てけ”と追い出された。仲間(ウスネ)へのメールも、返事こないな」


「そういや、昨夜からテンマルと音信不通ダゼ?」


「誰そいつ?」


「ああ、仲間の一人だ。手分けして情報集めてたんだが。そういや、テンマルも結構『呪い』受けてたな」


「あー、そいつ。なるべく早く見つけた方が良いと思うぞ……。感染してねーわけがねぇ」



 パーティー状態に居るメンバーは、互いに位置を確認できるマーカーを発信している。視界の任意の位置に置ける半透明の球体羅針盤があり、視覚に映らない位置に居たり遠く離れた場合、互いに居る方向へと矢印で表示されるのである。迷宮内で離れ離れになっても、この機能のおかげで合流することが容易い便利機能だ。

 だが街や拠点の非戦闘エリアでは、待機状況として個人個人のプライベート行動になることも多い。であるから、デフォルト設定では非表示としているのがゲーム内常識なのである。


 その機能により、テンマルは簡単に発見された。


 モタルサ中心オアシスの、街でも男性プレイヤーが多く集まる一角。

 ゲーム内サイトにアップされない、噂や不確実性の高い小さな情報。誇大妄想や嘘八百入り乱れるダメな系統が(たむろ)する半地下の、所謂“アンダーグラウンド”である。

 これから有力な情報になる。そんな情報未満の戯言が集まる重要といえば重要な場所なのだ。テンマルが居るのも頷ける。


 であるが、同時に怪しい情報繋がりでネットに上げるには危険な情報(ネタ)情報(オカズ)が集まる場所でもある。

 “男性プレイヤーが集まる”で意味は通じるだろう。


 最初はマトモに『呪い』を調べていたテンマルだったが、雑多なネタから情報抽出する流れで“魅力有る題名”(サブタイ)に脱線。やはり呪いの影響でエロい方面への精神が偏らされた挙げ句、『神!』やら『究極絵師!』やら『ケシカラんケシカラんもっとドウゾ!』と奇声をアゲるクズと化していたのであった。


「あー、こいつ実験台にして試作品でも創るかね……」


 店主の言葉『是非、よろしく!』としか言えないイワオであった。



無双キャラのルーツって、今考えるとコイツかも?

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