26 花束と記憶をつれて
第十七回文学フリマ頒布
『春子・ザ☆ダイジェスト 春子と不思議な物語作品集』(2013年8月30日発行 作品情報:http://ameblo.jp/midorimushi-show-bow/entry-11602693759.html)収録 書き下ろし
「よいか、春子」
祖父は重々しく言った。
「先方には礼儀正しくご挨拶をすること。あまり緊張しすぎず、ガチガチにならぬこと」
「はい」
「まぁ、どうせ知己の孫娘相手じゃ。狸じゃ。柔らかくてふわふわした相手と思っておったらよろしい」
「はい」
千鳥格子模様のハンチング帽を被った祖父は、春子の礼儀正しい返事にぷくぷくと笑いを返した。
電車内の座席に夏の日差しが投げかけられる。向かいにいるおじさんが憮然とした表情で遮光カーテンを下げた。眩しくて攻撃的な光りが閉ざされたが、それでも遮光カーテンの向こうで夏は目一杯に主張をしている。
春子と出掛け姿の祖父は、並んで空いた座席に座っていた。下り電車で田舎の方に向かうのである。目的は祖母の墓参りと昔祖父がお世話になった寺への挨拶である。
すっきりした白いワイシャツに、アイロンのかけられた千鳥格子柄のズボン。しわくちゃな顔に、ちょこっと尖った耳。丸い背中。仏然とした顔つきの老人なのに、どこか只者でない雰囲気を醸し出す。それが春子の祖父『脱妖怪』の猫尾猫十郎である。
春子は『脱妖怪』が何たるものなのか、よく分かっていない。よく分かっていないが、妖怪的指導や、さまざまな不思議の解説を行う祖父が、只者でないことはよぅく知っている。
その祖父が「世話になった」という寺である。何かしら、強い因縁があるのだろうと思う。祖父が恋して妖怪を辞めたという祖母が眠っている墓も、その寺の敷地内にある。
お墓参りには毎年行くけれど、祖父と二人で、お寺の人に会いに行くのは初めてである。何でも、前のご住職が隠居して、修行から帰ってきたお孫さんがお寺を継いだのだそうだ。
緊張を漲らせ、手汗を握り締めて、春子は電車に揺られる。
祖父はお孫さんがどんな人なのか、その点をあまり詳しく話してくれなかった。
果たして、どんな人なのやら。
緊張しすぎてガチガチに固まっている春子を見て、祖父にぷくぷくと笑われた。
これはいかん。もう少し、余裕のある態度をみせないと。
春子は何でもないように装って、祖父に訊ねた。
「おじいちゃん、何で千鳥格子柄が好きなの?」
「鳥がおると血が騒ぐからじゃ」
なるほど。意味が分からない。
電車を降りるとジージーと蝉の鳴く声が春子を包み込んだ。うだるように暑い。春子は麦藁帽子を深く被り、祖父について行った。
住宅街を歩いて行くと、坂道に差しかかったところに青々とした木々に囲まれた寺の入り口があった。石階段が遥か上方へ続いている。
祖父は見た目は腰の曲がった老人である。階段を前に佇んでいたら、近くを通りかかった元気そうなおばさんに「まあまあ、おじいちゃん!手伝いましょうか?」と訊ねられた。
「いえ、お構いなく。丁度いい運動じゃわい」
そう言って、祖父は杖をひょっと背の後ろに回して持った。
「ふん。毎度見ても面倒臭い階段じゃの」
と、サクサクと石階段を上り始め、おばさんを唖然とせしめた。
階段を上り切ると、明るく開けた石畳と砂利の前庭があり、白っぽい光を反射している。その向こうに大きな木造寺院がある。階段を上がり切った祖父はすっくと立ち、春子は少し後に辿り着いて、ぜぇはあと息を切らしながら、いつ見ても立派なお寺と思いながら膝に手をついて休んだ。
お寺に行くと、丸い雰囲気の和尚さんが迎えてくれた。
春子は目を丸くした。
和尚さんはしずしずとやって来て、衣の袖をさっと畳み込み、木の床に正座して指をついた。
「これはこれは、猫さま、よくお越しでいらっしゃいます」
春子は目をぱちりぱちりとさせて、祖父に訊ねた。
「尼さんだ」
「さよう。久しいの、狸の孫よ」
丸くて、柔らかい雰囲気の若い女性が、ふんわりと微笑んだ。
春子は『脱妖怪』の孫という、異色の出自を持つ。
それゆえ、おかしなものや、不思議な現象によく遭遇する。
春子は悟った。
彼女が祖父の言っていた「狸の孫娘」なのである。「猫さま」と呼ぶ彼女は、祖父の正体を知っている。
そして祖父は「狸の孫よ」と彼女に対して呼びかけた。
この尼さんは、きっと春子と同じような『脱妖怪』の孫なのである。
畳の部屋に通されて、祖父は尼さんと昔話と世間話に花を咲かせた。
茂林さんという尼さんは、目がつぶらな女の人であり、祖父のやや居丈高な物言いにも、穏やかに言葉を返した。
春子はしげしげと茂林さんを観察してしまった。この人も妖怪が見えるのだろうか。不思議なことに巻き込まれたのだろうか。祖父を「猫さま」と呼び、祖父に「狸の孫」と呼ばれて違和感がないのなら、春子と同類の可能性が高いといえた。
もし、そうなら、同じ境遇の人に初めて会った。
祖父の陰に隠れてじぃと茂林さんを見つめていた春子は、ふっと茂林さんと目が合ってぴくりと固まった。
茂林さんは目をにんまりさせた。春子はぎょっとした。
そのタイミングで祖父が立った。
「手水はどこかの」
「縁側に沿って左手に曲がった、その奥にございます」
ソツなく答える茂林さんの言葉に従って、祖父がすっくと立ってすたすたと行ってしまった。
蝉の鳴き声が聴こえてくる和室に、春子は茂林さんと向き合って、ただ一人残された。
ごくり。緊張感が漂う。
茂林さんがすすいと畳の上を移動して近付いてくる。春子は一応少し下がった。
また、茂林さんがすすいと法衣を引きずって近付いてくる。春子はまた少し下がった。
暫しの沈黙の後、茂林さんが目をにんまりとして、「隙ありっ」と飛びかかってきた。
「む?!」
「捕まえましたっ」
茂林さんの黒い法衣が春子を包み込んだ。
ぎゅむっ
「くぅ!噂通りかわゆいですな!」
固まる春子に関わらず、茂林さんは春子をすりすりと頬ずりする。
いくら小柄とはいえ小学五年生の春子は妙齢のお姉さんにこんなことをされるのは恥ずかしい。
「はなれて下さい」
「あ、はいはい、すいません」
意外とあっさり茂林さんは引き下がったが、春子が穏やかでない心地でじぃっと見上げていると、またにやにやした目をした。
何だろうこの人、と思いながら春子は訊ねた。
「茂林さん」
「茂林三世子と申します。ミヨコちゃんって呼んで下さい」
「ミヨコさん」
「は・あ・い♪」
尼さんが自分の頬に人差し指をちょんちょん当てながら言う。
この人、さっき祖父と話していた尼さんと同一人物なのだろうか。少し戸惑いながら春子は訊ねた。
「ミヨコさんは、『脱妖怪』の孫ですか?」
「はい、そうです」
おお、やっぱり。
春子は質問を続けた。
「ミヨコさんは、妖怪が見えますか?」
ミヨコさんは目を細めて、頷いた。
「ええ、見えますとも。こういう環境ですし、出自が出自ですから」
おおっ、と春子は声を上げた。
やはり、ミヨコさんは春子と同じ部類の人間なのだ。
俄かに心浮き立った春子は手を差し出した。
「ぜひ今後ともよろしくお願いします」
「あら、こちらこそ」
春子の小さな手を握って、ミヨコさんはにんまりした。
春子はミヨコさんの不思議遭遇エピソードをいくつか話してもらった。
例えば、近所で飼われていた主のような鶏に追い駆け回された話。
「あいつ、喋ったんです。しかも第一声が『豆よこせ』だったんです。怖すぎます」
ふらり火という、火を発しながらふよふよ飛ぶ鳥のような妖怪の話。
「案外小さくて可愛いやつでした」
学校の女の子のソプラノリコーダーに何かが住んでいた件。
「心穏やかにはいられませんでした」
狐の嫁入り行列を目撃してしまったとき。
「見つからないようにヒヤヒヤしました」
「見つかっちゃいけないのですか」
「ええ、狐と狸はわりと出会うとライバルのようなものですし、私は一応人間ですから、妖怪は危険なのです」
春子はその意見に大いに同感の意を示した。怖いものは怖いのである。
「そういうの、分かります」
「分かってもらえて嬉しいですっ」
ミヨコさんが再び春子をぎゅむっ包み込んだ。
うーむ同じ『脱妖怪』の孫娘でも全然違うなぁ特にテンションが、と春子は思った。
ミヨコさんが春子をすりすりしながら言った。
「ううっ、癒される。うちの二人の兄たちは全くその手のことはワカランチンなのですよ。父か祖父にしか相談できなくて。話ができる同性がいて嬉しいですっ」
「むっ、私のお母さんも分かってくれません。最近兄と話せるようになりましたが、やっぱりピンとこないことがあるようです」
「あら、そうなのですか。なかなか同じくらい分かり合える人というのはいないものですよね」
ミヨコさんは春子を離してしみじみ頷く。
そうなのだ。『脱妖怪』の子孫というのは人間でありながら人間離れしているという酷く曖昧な存在で、常識的範囲内で理解できること以外は拒否するのに妙な事件を起こす春子の母だったり、おかしなものや不思議な現象を半分認識しつつスルーする春子の兄だったり、様々なパターンの人間に枝分かれするようなのである。
春子やミヨコさんのように自らのあり方に自覚的で、おもしろいものを見つけ、不思議な出来事に対処する人間は案外少ないのだ。
「しかしですね、春子ちゃんは結構有名人なのですよ」
「むっ。どういうことですか」
寝耳に水の春子は目を丸くする。
「あの猫尾さんのお孫さんですし、結構自分で対処されているらしいと風の噂で伺っております」
「風の噂ってなんですか」
「風の噂は風の噂です」
くふふ、とミヨコさんは悪戯っぽく笑う。
春子は首を傾げた。何がどうやって伝わっているのだか。
なんだか複雑な気分だ。
「学校や家で色々あるんだもの」
「そうですね、色々ありますね」
ミヨコさんはうんうんと頷いた。
「まあ、それでも世界を愛そうではありませんか」
「愛?」
「はい。時に楽しく、時に辛い。わけの分からないこともあり、むかつくこともある。世界とは、人とはそんなものなのです」
ミヨコさんは優しく微笑んだ。ふんわりしているのに、強さを秘めたその微笑みが、春子には頼もしく見える。
蝉の鳴き声が遠くに聞こえ、縁側に軒の陰と太陽の光のコントラストがくっきり映る。寺の和室のこの一室は、隔絶されたように静かだ。
「猫尾さん、春子ちゃんのおじいさまはですね、私にとっては衝撃的な存在だったのですよ。普通のおじいさんなのに、とてつもなく強いものを前にしている気分になって、こんな人もいるのか!と驚きました」
ミヨコさんは懐かしむように目を細めた。
「あとから、父に猫尾さんのことを教えてもらいましたけどね。私もまだ小さかったので、不可思議な方に対する衝撃もひとしおでした。あの頃は、奥様・・・春子ちゃんのおばあさんとですね、あと柳さんと柳さんの旦那様がいらっしゃったんですよ。猫尾氏はとても奥様を気遣っていらっしゃって。うちも『脱妖怪』家族ですが、おじいさまのそういう姿がとても印象に残っています。うちは既に祖父が〝故人〟、亡くなっていることになっていましたから」
「そうなのですか」
と、頷きつつ、春子はおばあちゃん、と思いを馳せた。
春子の知らない景色を、ミヨコさんが見せてくれた気がした。
祖父と祖母、若い母と父が家族で寺にやって来る姿。
春子の家族が、春子の知る範囲以外で、誰かの中に息づいている。
「春子ちゃんはきっとおばあちゃん似ですよ」
「む、何故そう思うのですか」
ふふ、とミヨコさんは笑う。
「なんとなく、そう思うのです」
昔『脱妖怪』修行をした、勝手知ったる寺である。
己に人間との恋を成就させる方法を授けたのは、この寺の娘に恋をして『脱妖怪』になった狸であった。
寺の歩廊に座り込んで佇んでいた猫十郎の側に、古びた木の廊下の色と同化したモフモフしたモノがやって来た。
そちらをちらとも見ずに猫十郎は声をかける。
「何じゃ、お前か」
その生き物は、喋った。
「はい、狸でございます」
ふんふんと鼻を鳴らして、件の狸は頷いた。
猫十郎はうむ、と頷く。目線の先には松の木があり、その向こうには襖の開け放たれた和室がある。そこで若い尼と小学生の孫とが話をしているのだ。
「おぬしの孫娘も変わり者じゃのう」
「お陰様で」
狸は猫十郎の隣にちょこんと座る。これが、妖怪としては猫十郎より格下であるのにも関わらず、『脱妖怪』の先輩として猫十郎を指導していた狸である。妻が亡くなって暫く後に、狸は『脱妖怪』であることを辞め、妖怪に戻ってしまった。今では完全に古寺の古狸である。
狸三郎、というこの古狸の妖怪は、こうして偶に孫娘の様子を眺めているらしい。
「どうやら我が孫は猫殿の孫娘ちゃんをいたく気に入っているようです」
「こういうのを同じ穴のムジナとでも言うのかの」
「類は友を呼ぶ」
「同業他社」
「商売しているのではないから同業他社はおかしいですよ」
「おぬし、妖怪に戻ったくせに人間的感覚はそのままじゃのう」
狸三郎はおかしそうに笑った。
「案外身に付いたものはとれないようです。まぁ、一度自転車乗れるようになったら忘れない、というやつですよ」
「またそれも人間臭いのう」
猫十郎は呆れた。まったく、狸というやつは。
松の木の緑色の向こうで、再びミヨコが春子にぎゅむ、と抱きついているのが見えた。
狸三郎がまたおかしそうに笑った。
「ほんと、大分気に入ってます」
「そのようじゃな」
「妹が欲しいと昔は言っておりましたゆえ」
「上に兄が二人いたのう。そやつらはどうした」
「寺の修行が嫌だったみたいでね、二人で変な会社を立ち上げましたよ」
「なんじゃ」
「野生の動物にアポをとって動物番組等への撮影許可を得るんだそうです。事前にテレビ局や写真家のイメージ通り撮れるよう打ち合わせをしておくんですって。あいつらに頼むと決まった動物の映像や写真が予定通り撮れると結構評判なようですよ」
蝉の鳴き声をバックに、暫し沈黙が流れた。
「わしの感覚がおかしくなければ、そやつらも妖怪じみているようじゃが」
「そうなんですよ。自分の存在の非常識さに反抗はするのですが、変てこです」
狸三郎はふるふると毛を震わせて、円らな目で孫娘たちの様子を見つめた。
「私たちが活躍した話というのはあまり好きではないようで、自分の特異な出自を金儲けに利用する手を考え付いたみたいですがね」
猫十郎はふん、と鼻を鳴らした。
この暑いのに、寺の歩廊はひんやりとしている。陰になったそこで、二人はしばしじゃれ合う孫娘たちを見つめた。
こういうのを微笑ましいというのだろう。猫十郎も、狸三郎も、その感覚を理解していた。
「ミヨコは息子と同じように悪戯者で、変てこなものたちが大好きでしたけどね」
狸三郎はふふ、と嬉しそうに笑って、では、と寺の歩廊の下に潜り込んでいった。
ミヨコさんとメル友になった。最も春子はパソコンのメールアドレスを教えたのだが。
思わぬ収穫を得て、春子はほくほく気分で祖父と墓地へ向かった。
「狸の孫娘とは楽しかったかの」
「はい。色んなお話を聞いたよ。お菓子ももらったよ」
「よかったのう」
春子の手には仏花の束の入った水桶が握られている。祖母が眠る墓地を参りに行くのだ。
段々になっている土地に墓地は所狭しと並んでいた。風が吹くたびに卒塔婆がカタカタと鳴る。墓地からは町を見渡すことができ、景色は美しかった。空はどこまでも青く、四角い墓石に降りかかっている。
猫尾家の墓にやって来ると、先客がいた。スーツをきっちり着た、目がぱっちりとした黒髪の、小柄な男の人である。猫尾家の墓に手を合わせて熱心に祈っている。
誰だろう、と思っていると、顔を上げた相手が祖父を見て慌て出した。
ぺこりぺこりと頭を下げながら話す。
「猫殿っ、おひさ、おひさしゅうございまして、何よりでございますっ」
「お前も相変わらずだのう」
祖父は鷹揚に受け答えした。
春子は男の人を見てなんとなく変だ、と思った。見た目は普通である。だが、どこか雰囲気が違う感じがする。
春子が大きな目でまじまじと見つめるので、男の人は怯んだようであった。春子に向かって、慎重そうに両手を広げ、何かを宥めるような動作をした。
「猫殿、こちらは娘さんですか」
「孫じゃ」
「まごっ?はっ、そうかっ、娘さんがずっとこんな小さいわけがないかっ」
「おぬし大丈夫か」
猫殿、と呼んだことで春子はぴんときた。
「『脱妖怪』の人?」
祖父は頷いた。
「鬼塚、という」
「はい、鬼塚といいます」
多分、名前の通りのものなのだろう。
春子は驚いた。今日だけで「脱妖怪」関係に二人も会った。祖父を見上げ、少し尖った耳を見つける。祖父はやはり只者ではないのである。
墓に新しい花が活けてあるのを見て、祖父は言った。
「悪いのう、活けてくれたか」
「ええ」
鬼塚さんは目を細めた。
「猫殿の奥さまのお墓ですから」
花は仏花ではなく、一輪草のような簡素な野花だ。可愛らしくまとめられて供えられている。
祖父は何故か苦々しそうに言った。
「お前のこういうところが腹立つんじゃが」
「はっ、すいませんっ、すいませんっ」
鬼塚さんはひたすらペコペコと頭を下げ、シャシャシャシャと砂利道を移動して去って行った。
呆れたように鬼塚さんを見送った祖父はしかし、その花をどけたりせず、仏花と共にまとめて備えた。墓石に水をかけ、声をかける。
「はる」
その一言で、周囲の木々や草花がざわめき、風が起る。
日の暑さも、蝉の合唱も遠退く。
祖父の中には妻としての祖母がいる。鬼塚さんの中にも、祖母の姿があるに違いない。
祖母と、春子は会ったことはない。写真でしか見たことのない肉親である。
それでも、祖母は確かに存在していて、誰かの中に根付いている。
祖父の隣に、ミヨコさんの記憶に、鬼塚さんの花に。
春子の中のどこかでも、きっと祖母は息づいているのだ。何故か、春子の中でそう論理が成り立った。
春子は墓に手を合わせる。
春子は元気です。色々ありますが、なんとか頑張ってます。
あら、そう。よかったわね。
どうしてか、そんな声が風に乗って聞こえてくる気がした。




