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ライバルは前世~生まれ変わりだから愛するのではなく今の私を貴方には愛して欲しいんです~  作者: リラックス夢土


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62 烈牙の想い人




 その夜。私は烈牙様にお酒と軽食を運ぶ。

 いつも通り烈牙様の部屋に入ると烈牙様はソファに座っていたがとても機嫌が悪そうだった。



 どうしたのかしら?

 今日の試合でお疲れになって不機嫌なのかも。



 圧倒的な力の差があった試合でも戦えば烈牙様だって疲れるはずだ。

 それならば今夜はお酒を置いたら私は早々に退室して烈牙様にゆっくり休んでもらった方がいい。


 そんなことを考えながら私はお酒を準備して烈牙様の前に軽食と共に置くが烈牙様はお酒も軽食も口になさらない。



 もしかしてどこか体調が悪いのだろうか。

 体調が悪いならお酒は飲まない方がいいとは思うけど。

 それともまさか試合でどこかケガをしたとか?



 私は段々心配になってきた。

 このまま退室するべきなのだろうが烈牙様の体調が気になってその場から動けない。


 すると烈牙様の赤い瞳が私を射抜いた。

 その瞳の鋭さに私は息を呑む。



 烈牙様は私に怒っているの?



「真雪。話がある。座れ」


「は、はい」



 何か気に障ることをしてしまったのだろうか。

 だから烈牙様は機嫌が悪いの?



 ソファに座り私は烈牙様の次の言葉を待つ。



「……お前の想い人はサイラス侯爵家の怜王か?」


「は?」



 予想できなかった烈牙様の言葉に思わず間の抜けた声を出してしまった。



 怜王様が私の想い人?

 どうしてそうなるの?



「怜王は評判の良い奴だがサイラス侯爵家の跡継ぎだ。普通であれば男爵家の真雪とはつり合わない」


「い、いえ、あ、あの…」



 淡々と烈牙様が告げることの意味がよく分からず私の頭は混乱と焦りが入り混じる。



「だがどうしても奴が良いというなら真雪を私の養女にしてサイラス侯爵家に嫁がせることはできる。真雪が望むならすぐにその手続きをしてやる」



 私が烈牙様の養女!?

 ちょっと待ってよ! 私は烈牙様の妻になるのを望んでも娘になるなんて冗談じゃないわよ!

 いえ、それよりも私の想い人は怜王様ではないことを伝えないと。



「あの! なぜそうなるんですか? 私の想い人は怜王様ではありませんが…」


「しかし今日剣術大会の会場で人目を忍んで二人で会っていたではないか?」



 まさか手紙を渡すところを烈牙様に見られていたとは。

 烈牙様は誤解されてるんだわ。ここはきちんと誤解を解かないと。



「いえ。あれは友人に頼まれた手紙を怜王様に渡しただけです」


「……本当に?」


「はい。怜王様には今日初めてお会いしました」



 まったく冗談ではないわ。

 怜王様が私の想い人なんて。



「だが真雪の想い人は高位貴族だと言っていたではないか」


「高位貴族ではありますが怜王様ではありません。怜王様は私の友人の想い人です」


「……そうだったのか」


「そうです」



 ここはハッキリと否定しなければならない。



 烈牙様の養女とか絶対にありえないわよ。

 私は烈牙様の妻になりたいんだから!



「私の勘違いだったようだな。悪かった」



 烈牙様は私に謝った。



 とりあえず誤解が解けて良かったわ。



「いえ。私のことを考えてくださったことにはお礼を申し上げます。私の想い人については私自身で想いを伝えようと思いますので」



 それは烈牙様ですけどね。



 私はその言葉を呑み込む。



「そうか。真雪の想いが届くといいな」



 烈牙様は切なげに笑みを見せた。

 一瞬、私はこのまま烈牙様に自分の想いを伝えてみようかと思ったが想いを伝える前にどうしても確認しておきたいことがある。

 私は勇気を出してそのことを烈牙様に訊いてみた。



「あの。烈牙様は再婚なさるつもりはないのですか?」


「私が? そうだな、今のところはないな」


「どなたか好きな方はいらっしゃらないのですか?」


「……想い人はいるが彼女は他の男性が好きなようでな。私に振り向いてはくれないだろう」



 その言葉が刃のように私の心を貫いた。

 烈牙様には想い人がいる。だけどその女性には他に好きな男性がいる。

 その女性が誰か分からないが今の烈牙様の心はその女性に向けられているのだ。



「……そうですか。だから麗華王女様のお誘いも断っているのですね?」


「まあ、それもあるな。自分に想い人がいるのに他の女性と結婚するなど考えられないからな」



 アリシアが亡くなってから随分経つもの。

 烈牙様にアリシア以外の想い人が出来てもおかしくない。



「……烈牙様は亡き奥様のことを想っていらっしゃるのだと思ってました」


「もちろん、アリシアのことを忘れたことはない。だが、その女性と出逢って再婚したいと思ったんだが私の気持ちは届かないようで難儀している」


「……諦めるなんて烈牙様らしくありませんわ。人は心変わりするものです。烈牙様がその女性と結ばれる可能性は十分にありますわ」


「そうだといいのだがな」



 烈牙様はお酒を一口飲んだ。



 もし烈牙様が再婚する時は私は魔公爵邸を出て行こう。

 烈牙様の隣に私以外の女性がいる姿を見たくない。



「では私はこれで失礼します」



 胸が締め付けられるような苦しさを感じたが私はそう決心して烈牙様の部屋を出た。





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