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ライバルは前世~生まれ変わりだから愛するのではなく今の私を貴方には愛して欲しいんです~  作者: リラックス夢土


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59/72

59 人は心変わりするもの




 その日の夜。

 私がいつも通り烈牙様の夜のお酒を運ぶと烈牙様の私室に景虎がいた。

 昼間吹雪と景虎の話をしていたのでなんとなく気まずい。



「では景虎。後のことはお前に任せる。必要な人員は好きに使え」


「分かりました。父上」



 仕事の話だろうか。

 まだお酒を出すのは早かったかしら。



 私がお酒を出そうか迷っていると烈牙様はチラリと私を見た。



「仕事の話はこれで終わりだ。真雪、酒を用意しろ」


「はい」



 私がお酒の準備を始めると景虎が書類を片付けて席を立とうとする。



「待て。景虎。たまには酒に付き合え」



 烈牙様の言葉に景虎は無言でソファに座り直した。



 二人で飲むなら景虎の分も用意しないとね。



 何かあっても対応できるようにグラスはいつも予備を用意している。

 私は景虎の分のワインも準備して二人の前に置いた。



「真雪。お前も飲んで行け」



 え? 私も?

 おしゃべり相手なら景虎がいるからそれでいいんじゃないの?



 そう思っても烈牙様に言われたら断れない。

 私は自分の分のワインを用意して烈牙様の隣に座った。



「真雪は酒が飲めるのか?」



 景虎が少し驚いたように私に尋ねる。



「はい。お酒は強い方ですよ」



 私は隠しても仕方ないので素直に答えた。

 既に雷禅や火堂と一緒にお酒は飲んでいるもの。



「そうか」


「真雪は私と飲んでいても酔い潰れたことはない。いつも夜は酒の相手をしてもらっている」


「そうでしたか」



 烈牙様の言葉に頷きながら景虎もワインを味わっている。

 そして景虎は烈牙様の鋭い視線を向けた。



「父上は真雪を妻になさらないのですか?」



 景虎の投げた直球に私は飲んでいたワインを噴き出すところだった。



 ちょっと、景虎。

 急に何を言い出すのよ!



 私が焦って烈牙様の顔を見ると烈牙様はどこか余裕さえ感じる笑みを浮かべている。



「私が仮に真雪と結婚したとしてお前は真雪を母と呼べるか?」



 烈牙様の口から「真雪と結婚」という言葉が出ただけで私の胸はドクドクと高鳴る。

 烈牙様には真雪を想ってくれる気持ちがあるのだろうか。



「……父上と結婚するなら真雪は私の母です」



 景虎は少しの沈黙の後に言葉を続けた。

 その表情からは感情が伺えない。事実を淡々と告げただけのように感じる。



 元々貴方の母親なんだけどね。



 でも今世の真雪は公子たちと血の繋がりはない。

 もし烈牙様と今の真雪が結婚すれば公子たちは自分より年下の者を母と呼ぶことになる。



 う~ん、そう考えると公子たちに抵抗はないのかな。

 景虎は母だと言ってくれたけど。



 そんな疑問が浮かんだ時に烈牙様の硬い声が聞こえた。



「そうか。だが私は真雪と結婚しない」



 その言葉を聞くのは何回目だろう。

 何回聞いても私の心を抉る言葉だ。


 「妻にはしない」「結婚はしない」

 それが烈牙様の今のお気持ちなのだ。



「真雪には決まった想い人がいるのだから真雪の気持ちは尊重しなければな」



 ああ、それは烈牙様のことなのに。



 その想いを伝えたくてもここには景虎もいるので今伝えることはできない。



「そうなんですか。それは公子の誰かですか? 真雪」


「いえ。違います」



 景虎の問いに私は首を横に振る。

 ここはハッキリと言っておいた方がいい。



「そうですか」



 どことなく景虎が気落ちしているようにも見える。



 もしかして景虎は本気で私のことが好きだったのかしら。

 自分の好きな飴玉をくれるぐらいだもんね。


 でも、ごめんなさいね。景虎。

 貴方の気持ちには応えられないの。



「でも人の気持ちは変わるものです」



 え? 今なんて?



 景虎は私の顔を見ながらそんなことを言い出した。



「景虎の言う通りだな。人の気持ちは変化する」



 烈牙様もワインを飲みながら何かを考えている様子。



「真雪が心変わりすることもあるし父上が心変わりすることも考えられる」


「人の気持ちほど単純なようで難しいモノは無いからな」



 烈牙様は景虎の言葉にそう答えた。

 私はその言葉を複雑な気持ちで聞いていた。


 私が烈牙様を想う気持ちは変わることはない。

 だが烈牙様にはアリシアより真雪に心変わりすることを私は求めている。

 それは贅沢な話だろうか。



「真雪。下がっていいぞ。久しぶりに息子と二人で飲みたくなった」


「はい。承知致しました」



 私は自分の分のお酒を片付けて部屋を出る。

 烈牙様と景虎の会話が気になったが盗み聞きするわけにもいかないので自室に戻る。



 人は心変わりするか。

 確かにそうよね。私は生まれ変わっても烈牙様への愛は変わらなかったけど烈牙様はどうだったのかしら。

 今もアリシアを愛しているとは言うけれど本当にアリシアだけを愛しているの?



 そんな疑念が私の中に生まれた。





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