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第24話 添い寝で一夜を共にした2人と気遣う男子大学生

 辰巳は目を開ける。その視線の先には、まだ見慣れないソウセイに充てがわれた部屋の天井が見える。彼は全身の倦怠感に包まれている。


「戻ってきたのかぁ。悪いことしたなぁ、ジェミニさんに」


 そう言った彼は右手に圧迫感がある。それで頭を少し上げ右手のある腹の方を見る。すると、透き通るような白肌の5本の指が彼の指に絡みついている。いわゆる恋人繋ぎというやつだ。


 彼は切り替わった別の夢の中なのかと思う。彼は絡まった指を離そうと試みる。力を入れた瞬間、彼れは引き寄せられてく。


 横向きになった彼の眼の前には、目を見開いたソウセイの顔がある。2人の鼻先同士が触れる。辰巳は体が硬直して動かない。そんな彼の頬に彼女が右手をシーツと彼の顔に滑り込ませ頬に触れる。


「戻って来たんだな、君。この距離なら、はっきりと君の顔が見える。夢の中じゃ君の顔は見えないからな。あれが君か?……ようやく私も実感できた。一瞬の断片の記憶だけで、現実か虚構なのか判断できず私の精神を掻き乱し深淵へと誘われる寸前だったんだ。君は私のきゅう……」


 言葉に詰まった彼女のキレイな瞳が潤む。それを見て彼は、また彼女の精神不安定さが再発したのかと思う。


「寝ぼけてるみたいですね? ソウセイさん」


「私はっ!……そうみたい、君」


「手を離していただけないかと、はい」


「その前に君?」


「何でしょう?」


「私に触れている君の手を退けてくれないか?」


 そう言われた彼は自分の右手の行方を追う。すると、彼の握り拳が彼女の胸を圧迫している。目を見開いた彼は、引っ込めようとする。


 正常な判断能力を失ってしまっている彼は、事もあろうに更に押し付けてしまう。それにより、彼女は押し出されベッドの端から落ちそうになる。


 彼は指が絡み合っている手で彼女を引き寄せる。彼女は、彼の体の包み込むような形でで四つん這いになり彼を見下ろしている。


 2人は見つめ合っている。しかし、気恥ずかしい彼は顔を背ける。その彼の横顔は次第に紅潮していく。


「君?」


「はひぃ」


「君は手を話してほしいんだよな?」


「そっ、そうです」


「離したくても君が強く握っているせいで出来ないんだか」


「あっ……」


「痛っ!!」


 彼女は激痛に顔を歪めながら言った。なぜなら、彼が離そうとした時に一瞬だけ強く握ってしまったからだ。彼は自分がそうしたと全く気付いてない。


「どうしたんですか?」


「一瞬、君が力を込めたから思わず声が出たんだ」


「あっ、すみません」


「気にするな」


 そう言うと彼女は右手と右膝でベッドを押す。その反動を使い、ベッドに横たわる。彼女は左手を上げ右手で摩《さす》っている。一方、彼は彼女の背中に対して顔を背けたままである。





 2人の間に暫く沈黙が続いていた。彼女はベットから体を起こす。そして、その上の端に座る。彼女は彼へと振り向くことはなく背を向けたまだ。


「私は行くぞ、君」


 その声に彼は、声の方へと向き体を起こす。そして、彼はベッドから出て立ち上がる。


「あっ、はい。本当に申し訳ありませんでした」


 そう言った彼は頭を下げる。


「私は気にするなと言ったぞ、君」


 その言葉に彼は頭を上げる。すると、彼女は振り向くことなく背を向けたまま歩き出す。それに対して、彼は彼女の背中を見送る。





 あの後、彼はベッドに戻り体を横にして天井を眺めていた。その彼はスマホを手に取り画面の時刻を只々《ただただ》眺めている。暫くすると、彼はベッドから出て丸テーブルへと歩く。そして、その前の椅子へと座る。


 彼はノートを開くと缶ケースを開け中からシャープペンを手に取る。彼は夢の中での出来事を書き始める。





 それから、10分程が経過した。その後、暫くして彼は書き終える。彼はノートを閉じようとした手を止める。そして、彼はパラパラと捲っていく。彼が探していた該当ページを見つけると手を止める。


 この間、見た【なんで私を捨てたんだ。でも会いたいよ】と殴り書きの文章が彼の瞳に映っている。


「実の両親のことだったんですね、ソウセイさん」


 そう彼は呟いた。そして、彼はその文章の一文字ずつを目でなぞっている。それを何度も繰り返す。終えると彼は該当ページをキレイに破く。それを彼は折り始め紙飛行機を作った。


「ソウセイさんの想いが届きますように」


 そう言うと彼は、それを手首のスナップを効かせて投げる。しかし、それはずくに床へと落下した。すぐに彼は拾い上げる。


「これじゃ、ないかなぁ」


 そう彼は独り言を言った。彼は紙飛行機を元に戻す。すると、彼は彼女の書いた文字が残る様に三角にそれを折る。そして、折り目の部分を爪で丁寧に何回も擦る。そして、彼は手で丁寧に切り離す。


 再び彼は折り目始める。彼は心を込めて丁寧にキレイに折り進めていく。そして、彼は折鶴を完成させる。すると、彼は丸テーブルの中央にそれを置く。


「ソウセイさんの願いが成就しますように」


 そう言った彼は目を閉じ頭を下げ心の中で念じる。その様子を彼に飲みを届けに来たソウセイが、少しだけ開けた扉の隙間から見ている。





 辰巳は大学へと行った。ソウセイが彼の部屋へと入る。そして、丸テーブルの上のノートを手に取る。そして、パラパラと捲っていく。お目当てのページで手を止める。


「気を遣うなら、完璧にやってくれ」


 そう言うと彼女は、ほんの少しだけ残った切り残しを手で千切る。


「君の気持ちは有り難く受け取っておいてやる」


 そう言った彼女は折り鶴を手に取り部屋出ていく。そして、彼女は自室に戻るとデスクの上にそれを飾った。





 辰巳が授業を終え帰ってきた。部屋に入った彼は折り紙がないことに気が付く。部屋中を探してみるが見つからない。


 彼は部屋を出てリビングでくつろいているソウセイへの元へ行く。


「折り鶴を見ませんでしたか? ソウセイさん」


 そう彼は恐る恐る言った。


「あっ、あれか。あまりに不格好な折り鶴だったので失敗作だと思って捨てたぞ。通勤の途中、コンビニのゴミ箱に」


「……あっ……そうですか?」


「なんだ大切な折り鶴だったのか? 恋愛成就でも願っていたのか?」


「いえ…………なんとなく折ってみただけです、はい」


「そっかぁ。ほら君も食え」


 そう彼女はワインの肴を勧める。彼が躊躇していると彼女はソファを叩く。彼は恐縮しながら彼女の隣に座る。


「口を開けろ、君」


 その彼女の言葉に彼は従う。すると、彼女は彼の口にカマンベールチーズを突っ込む。


「礼だ」


「なふぅのでひょう?」


 口が塞がっている彼は口籠りながら言った。


「ノートを書いてくれた礼に決まったるだろ、君」


「あふぁ」


「早く食えよっ!」


 酒の回ってきた彼女は語気が強く言った。凄まれた彼は一気に飲み込んでしまう。咳き込む彼の背中を彼女が軽く叩いた後、摩《さす》ってあげている。





 その後、彼女はワインと肴を楽しんていた。時折、彼女は餌付けでもするかのように彼の口にカマンベールチーズを突っ込んであげた。一方、彼は縮こまりながら彼女の横顔を見つめていた。そして、2人は各々の部屋へと戻ると眠りについた。

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