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第22話 連続夢と最上位ランカー登場

 取り残された辰巳は、今すぐにジェミニに会わなければと焦っている。それは、もちろんムゲンセンの情報を入手したいからだ。特に彼女が『勝てば何でも望みが叶う』と言っていた点にだ。


 彼は目を閉じ深呼吸して気持ちを落ち着かせる。目を開くと体の先々から体が次第に消えていってるのに気が付く。しかし、今の彼は取り乱すことはない。彼は目を閉じ彼女に会うんだと願う。暫くたった後、彼は完全に消失した。





 ゆっくりと彼は目を開ける。彼の視界は暗い。暫くすると徐々に明るくなってくるが無色透明で何も映らない。しかし徐々に、その彼の瞳の中に彼を中心に映像として荒野が広がっていく。そして、それが完全に形成された。


 彼は周囲を見回す。しかし、人っ子一人いない。望みをかけて上空を見る。彼の想いは届かなった。彼が期待していたジェミニはいない。


 彼は歩き出す。しかし、どこまで行っても変わり映えしない景色しか目に入って来ない。帰ろうにも、その方法が分からず途方に暮れている。


 仕方ないので再び歩き出す。歩き進めていると肩を掴まれる。彼は振り向く。すると、お目当ての人物が不機嫌そうな表情を浮かべてる。しかし、今の彼には全く気にならない。


「あら、自慢かしら? 君」


「何がです?」


「私が先に行ったのに君が先着していたからよ」


「ただ私は貴方、ジェミニさんに会いたいと願っただけです」


「きっしょ! 君は私が好きなの? それでストーカーしてんの?」


「ちっ、違いますよ。ムゲンセンのことについてお聞きしたくて、はい」


「ステータスウィンドウに表示されてないの?」


「それは分からないですが、その前に私は表示することが出来ませんから」


「想像し具現化すればいいだけよ。試しに、やってみなさいよ。表示出来るか」


「あっ、はい」


 そう言った彼は目を閉じステータスウィンドウをイメージする。しかし、頭の中には何も浮かび上がらない。諦めず集中し神経を研ぎ澄ませるが、一向に出現してはくれない。


「ちょっと! 君」


 その言葉に彼は目を開ける。すると、彼の眼の前にはタブレットが。それが落下していく。慌てて彼はそれをキャッチする。


「これ何ですか? ジェミニさん」


「私が知るわけないでしょ! 君が出現させたんだから。自分で試してみなさいよ」


 その言葉に彼はタブレットに触れる。すると電源が入った。画面の一番上には『#6(スネーク)』との表示がある。その下には数字と文字が画面いっぱいに表示されている。


「どうやら、私のステータスが表示されているようです」


「やっぱり嘘ついてたのね? 君」


「違いますって。今、やったら出来たんですよ」


「あれかしら? 自分は強いからステータスウィンドウなぞ表示しなくても目の前の相手を軽く捻り倒すだけだから不要だと。思い上がるのもいい加減にしなさいよっ! 君!!」


「そんなこと思ってませんてっ。私は初心者ですし」


「まだ、そんなわかり易い嘘を言うのっ! 君」


「ジェミニさんは私のことを評価してくれてるみたいですが私には本当に分からないですって」


「はい、はい、はい。わかりましたよ。そういう振りしときなさい。もうっ!」


「あのう〜、ジェミニさん?」


「何よっ?」


「ムゲンセンについてお聞きしたいのですか? 宜しいでしょうか? ジェミニさん」


「後にしてくないっ。もうすぐ対戦があるのっ。この為にわざわざ来たんだからさっ。すぐに、あの子が片付けてくれるからっ」


「あっ、はい」


「そう言っているうちに真打ち登場だわ」


 そう言った彼女の視線の先を辰巳は追う。そこには女性が立っている。髪は肩に掛かるか掛からないかでボーイッシュな顔立ちをしている。ラベンダー色のパジャマ姿だ。


 辰巳は、その色で妹を含めた家族全員でラベンダー畑にピクニックしたことを思い出す。しかし、彼は幸せだったその思い出を頭から振り払う。その時の映像は掻き消したが、あの時の匂いが一瞬だけ蘇った。


 彼女の服が一瞬でパジャマ姿から変わった。それはラベンダー色の狩衣姿だ。右腰の帯には細太刀、左側の帯には神楽鈴を差している。左手には薙刀を握っていて、右手には扇子を持っている。


「あのう〜、ジェミニさん?」


「何?」


「今って陰陽師のドラマか映画が流行してましたっけ? 私が幼稚園児だった頃にリバイバルブームになってました。よく陰陽師ごっこして遊んでました」


「あの子の儀式なんじゃないの? 初めは、あの姿になるのよ。陰陽師ブーム? そんなの興味ないし知らないわよっ! 」


「あっ、すみません」


 そう彼が言った瞬間、また女性の服が変わった。今度はセーラー服姿である。これまたラベンダー色のセーラーカラーとリボンとスカート姿だ。スカートは膝上でにハイソックスを履いている。靴はスポーティなスニーカーだ。


 彼は彼女の首から足下を往復しながら見ている。すると、また変化がある。今度はハイソックスがルーズソックスへと。


「あのう〜、ジェミニさん」


「何? 今度は」


「あのぅ〜、女子高生の間でルーズソックスが流行っているんですかね? 自分の親世代では大ブームだったみたいですが」


「なにっ、それっ! 私が女子高生に見えるってことっ?」


「いえ、どう見ても20代かと、はい」


「やっぱりねっ! 間接的に私が女子高生のあの子と比べたらババァだって言いたいんでしょうがぁ!!!」


「いへっ……誤解です」


「本当?」


「本当ですって。よく見てみると女子高生にも見えなくないですし、ジェミニさんは」


「あらっ、お世辞も言えるのね。この件は不問に付してあげるっ」


 そう言った彼女に対して、彼は体の向きをかえる。その先にはセーラー服姿の女性がいる。彼は視線を上方へと移す。すると彼女の顔が彼の方を向く。


 2人の視線が合う。すると、彼女の表情が一変し険しくなる。眼光鋭い。一瞬で彼は顔を逸らしジェミニへと向き直る。


「君、まさか っ! あの子が……流石の君でもコッチの最上位ランキングのオフィウクスは怖い、いや畏怖してるのかしら?」


「いや、そういう訳では。視線が合いましたので思わず逸らしてしまいました」


「あらっ、そっ。なんか睨まれてるわよ」


「でっ、ですよね……あっ、そうだ! 服って替えられるんですね?」


「そりゃそうよっ。想像し具現化すればいいだけだもの」


「あぁ〜、なるほど。でも着替える意味ってあるんですかね?」


「そうすることによって気分が高揚して、ギョウソウネン、いやそっちじゃゲンソウネンが高まったりすんじゃないの? まだ私はしたことないから分からないけど」


「そうなのかもしれませんね。よく分からないですけど」


「それって理解したことになんないでしょ!」


「……すっ、すみません」


「ったくっ、君は」


 そう言った彼女は辰巳の頭を小突《こず》いた。しかし、彼女が作った握り拳の指の関節曲げた尖った所が当たった。なので、彼は上半身を丸め該当箇所を右腕の内側で押さえる。


「何をしてらっしゃるんです? No.9ことジェミニさん」


 その背後からの言葉にジェミニと辰巳の2人は振り向く。すると、仮面のモノが腕組みして宙に浮いている。2人は一瞬だけ体を仰け反らせる。それはシンクロしていた。


「No.9ことジェミニさん?」


「……ちょっと、じゃれ合って小突いただけよ。知ったような口聞くから。あとコイツの顔が憎たら……スネーク君の表情が愛くるしくて少しイジワルしたくなったんですぅ〜。レフリー様ぁ」


「本当ですか? #6ことスネークさん?」


「彼女の内心までは読み取れませんが、概ねそういう気持ちだったんだと思います、はい」


「ちょっと! てめ……ぇ君」


「No.9ことジェミニさん。話を遮らないで下さいますか?」


「そうします」


「では故意ではなかったんですね? #6ことスネークさん」


「それは本当だと断言できます。ただ、つい手が出るタイプの女性かと、はい。じゃれ合いの一環だと思います、はい」


「ちょ……」


「また遮ろうとしましたね? No.9ことジェミニさん?」


「ちょっと咳が」


「そういうことにしておきましょう。貴女の場合は端《はた》から見ると一方的な暴力にしか見えないので誤解されるような行動は謹んで下さい。次からは弁明の機会を与えることなく処分を下しますよ」


「畏まりましたぁ。レフリー様ぁ」


「それでは私はこれで」


 そう言った瞬間消え、2人が視線を前に戻した時は既にセーラー服姿の女性たちの前に現れていた。





 仮面のモノが腕を下ろし試合の合図を告げる。すると、セーラー服姿の女性の相手の男性が彼女に背を向け走り出す。物凄い速度である。彼は走るのを止めた。2人の距離は目測ではあるが500mほどだ。


 それからパッタリと男性は動きを見せない。一方のセーラー服姿の女性は首を回し始める。次に手首を素早く振り、その次に爪先を地面に付け足首を回す。逆の足もそうする。この3つの動きを彼女は同時に行う。それを見て、辰巳は準備運動といった所かと思う。


 その様子を見てか、相手が摺り足でジリジリと彼女との間合いを詰めていく。これに対して辰巳は疑問に思う。それは、こんなに離れているのだから摺り足する必要があるのだろうかと。


 相手は摺り足を続けていく。かなり時間が経過した。しかし、彼は10mも進んていない。


 一方のセーラー服姿の彼女は退屈なのか余裕なのか地面に座り込む。そして、両膝を抱える。そこに顎を乗せ相手を無表情で見ている。辰巳は余裕の方だったのかと思う。


「えっ…………」


 そう辰巳から思わず声が漏れた。それは、相手が遥か後方に吹っ飛んでいっているからだ。地面が迫る。そして、相手は後頭部から地面に激しく叩きつけられる。その際、ドンッと音と共に地響きが轟《とどろ》いた。


 辰巳は呆気に取られるばかりで脳の処理が追いついていない。

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