第21話 圧勝 ムゲンセンが発動したランクイン戦
辰巳の正面には着流し姿の男性が立っている。彼は右肩を露出してる。人相は強面で、いかにもそっちの筋といった感じの人間だ。彼は辰巳を睨んで威嚇している。
一方の辰巳は、さほど気にしていない。彼は周囲を見回す。チラホラと人を確認できる。お目当ての人物が見当たらない。なので、彼は上空を見る。すると、彼を見下ろし手を振っている。そう奇抜なショートカットの女性ことジェミニだ。
彼は上空の彼女へと手を上げ挨拶代わりにする。そうでもしないと前回みたいに絡まれたら溜まったもんじゃないからだ。そして、彼は再び正面を向く。
突然、仮面のモノが出現した。すると、両者に一瞥をくれる。いや、顔を向けたと言ったほうが正確だろう。
「これより#6さんのランクイン戦を行います。 No.20ことタウラスさん、#6さん。宜しいですね? 御二方とも」
辰巳は自分は#6だったなと思い出す。そして、彼は相手は名前呼びされたのでランカーなのだと瞬時に理解した。そして、彼は仮面のモノへ向けて頷く。相手もそうする。
「それでは想像し」
「待ってくれ、審判」
「何でしょう? No.39ことタウルスさん?」
「ムゲンセンを仕掛けたいっ!」
「ええっ!!!!」
思わず辰巳は声を出す。
「どうしました? #6さん?」
「ムゲンセンって仕掛けたら戻れないんですよね?」
「そうですよ。仕掛けたら戻れませんよ」
「私もなんですよね?」
「何を仰っいます、#6さん。貴方は、よくご存知のはずですよ。仕掛けて失敗、つまり敗北した者です」
「私が敗北した場合はどうなるんでしょう?」
「私をからかってます? #6さん。戻れないのは仕掛けて敗北した者だけです。受けた者には敗北したとしても何の影響も御座いません。まぁ、戦績に一敗としてカウントされますがね」
「あっ、はい。分かりました」
「では準備は宜しいでしょうか? 御二方とも?」
その言葉に2人は頷く。
「それでは想像し具現化せよっ! レディゴオーッ!!!」
その掛け声と同時に着流し姿の男性は懐に手を入れる。そして、手がそこから出てくると握っている右手に何が具現化されていく。
それは匕首だ。昔の映画やドラマで刺青を掘ったヤクザが持っている俗称ドスというやつだ。
男性が鞘からドスを引き抜く。そして、彼は右腕を伸ばし辰巳へと向け構える。
「安心しろ、兄ちゃん。まだ、攻撃はしねぇよ。いつでも仕留められるからな。ちょっと話させてくれや」
「何をです?」
「兄ちゃんが戦った眼鏡の奴いたろ?」
「いましたけど。それが何か?」
「あいつ初心者のフリしたんだよ。アイツこそが初心者狩りだ。ジェミニの姉ちゃんは兄ちゃんの方が初心者狩りしてると言ってたよな? 大声出して」
「だから、何なんです?」
「大体、アッチの奴らは兄ちゃんに一目置きすぎなんだよ。あの眼鏡野郎なんかコッチじゃランク外の奴に何度もボコボコされるような雑魚だぞ。それに苦戦した兄ちゃんが強いわけねぇだろ。コッチじゃ運が良くて雑魚としか対戦してないんだろ? きっと。なのに、なにが最後の門番、絶対的守護神だよ。そう思はないか? 兄ちゃんも」
「そう呼ばれるほど強くはないと思いますよ、自分でも」
「だろっ! アッチで兄ちゃんがランカー倒したの見たよ。たしかに弱くはなかったけどな。その時は多少ビビったけどよく考えれば、アッチで10位以下のランクの奴だぞ。俺はアッチじゃ8位で、コッチじゃ6位だぞ」
「アッチとやらで私はランカーと戦ったんですか?!」
「おい、おい、おい〜っ。記憶障害かい? 兄ちゃんよ。うんっ! 待てよっ! もしかしてギョウソウネン、いやコッチじゃ違ったな。ゲンソウネンが込めれなくなってるんだなっ! 兄ちゃん」
「それは何のことです?」
「今!! とぼけたなっ! やっぱりそうかぁ〜、うん、うん、うん。これりゃ間違いねえなぁ。ついてるぜ。ギョウソウネンを込めれないランク外を俺に充てがってくれるなんてよ。仮面野郎、いや審判様々だな。んっ? その上の御方がいるのか? まっ、どっちでもいいや。とにかく感謝様々だせっ!」
「ギョウソウネン、ゲンソウネンって想像し具現化する源みたいなものですか?」
「知ってんなら効くんじゃねえよ! 若造が!!」
「分からないから聞いただけたんですけど」
「挑発か? それとも下手に出て油断させようとしてんのか? 無駄、無駄、無駄〜ぁ。てめぇみてぇな若造には目を瞑っても勝てるわっ!」
「別にそういう訳じゃ」
「舐め腐りやがって。今すぐ、ぶっ殺してやるよっ!!!!」
そう吐き捨てた男は、ドスを突き出し辰巳の心の臓目掛けて猛突進してくる。ドスが彼の胸の直前まで迫っていく。
それに対して、辰巳の体は自然と反応し出す。彼は右へと流れるように動く。そして、男が突き出したドスが脇下を通過していく。
辰巳は脇と左腕で男の肘を挟む。そして、彼は挟んだまま勢いよく右回転する。すると、挟まれている着流し姿の男の肘がブチブチと音を上げる。その数秒後、ボキッと鳴った。
辰巳が挟んでいた腕を離す。すると、男は地面に崩れ落ちる。そして、その上をのたうち回り苦悶の表情を浮かべている。
辰巳は自分の体の反応はもちろんだが、男のことも不思議に思っている。それは、あらぬ方向に折れ曲がった腕を痛がる様子は見せず、体のあらゆる所を掻きむしっているからだ。
「体が燃えるように熱い。審判! 俺の負けだ。どうにしてくれっ!!」
「No.20のとタウラスさんが降参しました。よってこれにより、#6さんの勝利です」
そう言った仮面のモノは辰巳の方へと腕を向け勝ち名乗りをあげた。
「なんとかしてくれっ! 審判!!」
「少々、お待ちください。No.20さん」
「早くしろ!」
「ふぅ〜ん、了承しました。ムゲンセン敗北により、世界から消えてもらいます。消え去りなさい! No.20!!」
そう言った仮面のモノは親指と中指を弾く。パチっと乾いた音が鳴った刹那、着流し姿の男はプッと消失した。辰巳は背筋が凍る。
「お待たせして申し訳ありません、#6さん。手順を飛ばしてしました」
「…………いえっ」
「御理解感謝致します。では、続けさせていただきます。ランクイン戦の勝利により、#6さんは11位にランクされます。これによりランク名が授与され、スネークとなります。こちらでの次戦からは呼び名が#6ことスネークさんとなります。勝利おめでとう御座います。それでは、またお会いできることを期待しております。それでは失礼致します」
そう言った仮面のモノは消え去った。辰巳は大きく息を吸い込むと吐く。これを数回して落ち着かせる。
仕掛けてないが初めてムゲンセンを経験した。しかし、それが何なのかを全くと言っていいほど理解できていない。気になる点は幾つもあるのだが。
辰巳は肩に感触の後に重みを感じる。なので、彼は横を向く。彼は予想はしていたが奇抜なショートカットの女性ことジェミニが手を置いている。
「流石ね、君」
「何がなんだか分からないうちに勝ってました」
「謙遜かしら? 本心は相手が何がなんだか分からないうちに仕留めたって言いたかったんじゃないの? 君」
「違いますってっ!ジェミニさん?」
「私のこと?」
「だってジェミニって呼ばれてますよね? 仮面の方に」
「そうね。ランク外になるまでは確かにジェミニだわね」
「ランク外になった後、再びランクインした場合はどうなるんです」
「知ってるくせに。まだランク名が空いていたらジェミニで、そうでなければ他のランク名が与えられるに決まっでしょ。まっ、コッチとアッチともランク外になった場合だけど」
「あっ、そうなんですね。ジェミニさん?」
「何っ?」
「ムゲンセンって何なんですかね?」
「はぁ〜、なんで私に聞くのよ。勝てば何でも望みが叶うって知ってるじゃないの? 君。あっ、まだ君は規定勝利数に到達してそうにないからステータスウィンドウには表示されてないのかな?」
「なっ、何でもですか?!」
「そうじゃないの? しかし、やけに喰い付くわね。でも、これで私は失礼するわね。見たい対戦があるから。君も来るなら、そこで話しましょう」
「ちょっと待ってくださいっ!」
その彼が言った瞬間、彼女はプッと消失した。




