第18話 住む家をなくした男子大学生
あの後、辰巳は嘘かのように夢の内容を鮮明に思い出し書き終えた。その書き終えたノートをなんとなく捲ってみる。
捲り終えた彼は、ふと気になったことがあった。なので、もう一度ゆっくりと捲り返す。すると、文字の書かれているページを見つけた。そのページで手を止めて読む。
そこには【なんで私を捨てたんだ。でも会いたいよ】との殴り書きが。
――彼氏と別れた直後なのかな……だから、精神が不安定なのだろうか
そう頭の中で思った彼は、そっとノートを閉じて丸テーブルの上に置く。そして、彼は部屋を出る。
今、彼はリビングにあるソファに座っている。その彼は、落ち着かずソワソワしている。
ソウセイがソファの前のローテーブルに置いてあるリモコンを手に取る。そして、彼女はボタンを押す。すると、電動カーテンが開いていく。
彼は窓の方を見る。すると、青空が広がっている。気になった彼は立ち上がり窓へと行く。眼下には建物が密集している。それらは、かなり小さく見てる。
「どうした? 君」
そうソウセイが言った。その言葉に彼は振り向く。
「かなり高い所にいるんだなと思いまして」
「まぁ、実際高いからな」
「ホテルだったんですね? ここは」
「違うぞ、君。マンションだ」
「えっ……ここに住んでるんですか?」
「そうだが」
「高層マンションに住まわれているんですね」
「高層マンションと言えば高層マンションだな。一般的にはタワマンと言われているが」
「タワマン……」
「そうだか。それがどうした? 君」
「……いえ、何でもないです」
「そっかぁ。今日、大学のコマは入っているのか? 君」
「あぁ、午前からありますけど」
「送って行ってやる、君」
「出勤前ですよね? お気持ちは嬉しいですが慮しておきます」
「今日は有給を取った」
「えっ……」
「所用があってな」
「なら、そっちを優先してください」
「君を送り届けた後でないと都合が悪い」
「えっ! どういう意味でしょうか?」
「……あっ! ちょうど君を送った後が待ち合わせ時間なんだ。場所も近いしな」
「あぁ、そういう意味ですか」
「よし! 決まりだ。送って行ってやる」
そう言うと有無を言わさず、彼女はキッチンへと向かう。
彼女が戻ってきた。彼女は手にお盆を持っている。
「お腹空いてるだろ? これを食え」
そう言った彼女はシリアルの入ったボウルを彼へと差し出す。それを彼の前に置く。そしてパック牛乳を並々と注ぐ。溢れそうな程にだ。
ただ、その様子を彼は眺めていた。彼が顔を上げると彼の目の前にはスプーンがある。その先を追っていくと指先、腕そしてソウセイの顔が映る。彼女と目が合う。
「手で食うのか? それとも飲み込むのか? そうなら、シリアルをしなしなにしないとな。でも、それじゃ時間かかるから、これで食え」
そう言った彼女はスプーンを上下させる。彼は会釈して受け取る。しかし、スプーンはシリアルへと進むことなく持ったままだ。彼は彼女の視線を感じていて気になっているのだ。
「早く食え。大学遅刻するぞ」
「いただきます」
そう言った彼は一気に掻き込む。そして、牛乳を飲み干す。終えるとボウルを置き顔を上げる。
その視線の先の彼女はCMでよく見るゼリー飲料を手に持ってる。すると、彼女はキャプを開け握りつぶしならから口に流し込む。
終えると彼女は彼のボウルとスプーンをお盆に乗せキッチンへと向かう。その後、水道から流れる水の音がした。
彼女が戻ってきた。
「早く身支度しろ。あっ、君はその必要はないか? ちょっと待っててくれ、君」
彼女は自室へと向かう。
その後、彼女が戻っていた。彼女は紫色のパンツスーツを着ている。手にはバッグを持ってる。これも同じ紫色だ。その上、かけているサングラスも紫色のフレームだ。
彼は紫色を彼女は好きなかと思う。決して派手だなんて思ってないし、絶対に顔に出してはいけないと気を引き締める。
「行こうか? 君」
2人は玄関を出た。
2人は駐車場まで来た。辰巳は彼女に頼まれっ箱を持っている。前方に停まっている車のハザードランプが点灯する。紫色のスポーツカーだ。
辰巳は、これも紫色かと思う。昨夜は暗かったし特段気に留めてなかったので今知ったのである。今、彼女が履いているスニーカードも紫色なのだ。
ソウセイが車へと乗り込む。そして、エンジンをスタートさせる。ウインドウが開く。
「早く乗ってくれ」
その言葉に後部座席に乗り込もうとする。
「助手席に乗ってくれ。後部座席に人が乗っていると落ち着かない」
その言葉に彼は疑問が浮かんだ。しかし、聞くことなど出来ない彼は言われたまま助手席を乗り込みシートベルトを締める。すると、彼女は車を発信させた。
アパートに寄り大学に着いた。辰巳は送ってくれたことを感謝している。しかし、正門の少し手前に車を停めたので、彼は人目が気になり降りづらい。
一方、ソウセイは正門を行き来する学生たちを眺めている。そして、彼女は視線を彼へと移すと彼は俯いている。すると、彼女は運転席を降り、助手席へ向かうとサイドガラスを叩く。
それに彼が反応し見る。すると、彼女が人差し指を上下に動かす。察した彼は窓を開ける。
「知ってるとは思うが着いてるぞ、君。降りないのか?」
その言葉に彼は急いでドアを開け降りる。
「その箱取って開けてくれ」
そう言われた彼は開ける。すると、ハイヒールが入っているのか。これも紫色だ。
「肩貸してくれ」
そういった途端、彼女は彼の肩に手を置く。そして、彼の女はスーニカーを脱ごうとしているが苦戦している。
「ぴったりのを買ったので脱げないわ。余裕を持たせて買うべきだったわね。悪いが脱がしてくれないか? 君」
彼は、この場から一刻も立ち去りたい。なので、従い脱がせる。すると、彼女は箱からハイヒールを取りだり履く。確認した彼が片方も脱がせる。彼女はもう一回同じ動作をし履き終える。
彼は箱を助手席に置きドアを閉める。そして、彼は足早に歩き彼女の元を去っていく。
「君!」
明らかに彼女の声であるが、彼は無視しようかと悩む。しかし、後が怖いので止まり向き直る。すると、歩いて来た彼女が彼の前で立ち止まる。
「お金ないんだろ? 君」
「ありますって」
「タクシー代が払えないから家に泊まっていったじゃないか?」
「それはそうですが」
そう彼は小声で言った。彼女はクラッチバッグから財布を取り出す。そして、人差し指と中指で挟み取り出すと彼へと差し出す。
「これは何です?」
「一万円札だ。あっ、すまない。足りないのか? 君」
そういった彼女は同様にもう一枚追加して差し出す。
「ほらっ、受け取るといい」
「遅刻するんで、もう行きます」
彼は受けとらず、彼女に背を向け歩き出す。そして正門を潜る。
「金に困ったら連絡くれ。すぐに届けに来るぞ」
その言葉を背に彼は学生たちの冷ややかな視線を浴びながら歩いていく。特に女子大学生は大半が軽蔑の表情を浮かべながらゴミでも見るような強烈な視線を彼に刺し続けている。
今、彼はアパートの自室の前にいる。彼は鍵を鍵穴に刺す。しかし、回らず施錠できない。
その後、何度も試みたが結果は同じである。彼は途方に暮れる。彼は大家が帰宅時に掃除していたのを思い出す。それで、そこへと向かう。まだ、掃除している。彼は挨拶し近づく。
「すみません、大家さん。鍵が開かないみたいなんですが」
「何を言ってるんだい。そりゃ、そうだよ。鍵変えたんだからね。なんの冗談だい? 今日、即日退去したじゃないか」
その言葉に彼は絶句した。




