第14話 無理やりお泊まりされられる男子大学生と奇抜なショートカットの女性の実戦
「こっ、こっ、困るって何でしょうか?」
「やっと見つけたんだ、君を」
「やっと……見つけた?ですか?」
「……ほらっ、あれだっ。防犯カメラの映像から血眼になって君を見つけたからな」
「血眼?だったんですね?」
「そりゃそうだ。睡眠時間を極限まで削って見つけたんだ。土曜日なんかは一睡もせずに映像分析とウェブ上の映像と画像を自作の顔認証システムで照合して一致させたんだ。君の画像はネット上に数枚しか落ちてなかったから苦労したんだ」
「あっ、そうだったんですね」
「そうだ。君が写っていたあの映像の3人の内の1人の失踪事件の有力な手掛かりだからな、君は」
「本当に知りませんよ。それなら、その人の顔画像から捜査すれば宜しいかと」
「ほぼ失踪者で決まりだろうってだけで確定はしてない」
「顔認証で確認したんですよね?」
「いや、君以外は顔認証出来なかった。高度な映像妨害システムが仕込まれていたんだろう。いくら試しても無理だったからな。自作の体格と歩行一致認証システムでほぼ決まりってなだけだ」
「その妨害システムってその周辺の広域に渡ってされてたんですか?」
「いや、あの場所だけピンポイントでだ」
「片田舎の公園に高度なシステムをピンポイントでですか? わざわざ、そんなことします?」
「最高レベルの軍事機密の為なら、そのくらいの労力は厭わないだろ」
「………………」
「今の言葉は忘れてくれ、君」
「……ふぁい」
「とは言っても、他国も映像を入手して君を特定中、いや特定済みかもな。既に君の周辺で暗躍してる可能性も捨てきれない」
――つい今、忘れてくれって仰っいましたよね?
「どうした?」
「いへぇ…………」
「最近、君の周辺で変わったことは無いのか?」
――あの柄シャツのチンピラ風の男の人くらいか。たしかサークルドックことイヌマルさんだっけ?
「心当たりがあるんだな?!」
「最近、バイト先によく来るチンピラ風の男性ならいますけど」
「そういう人間がスパ……」
「今、スパイと言いかけました?」
「……いやぁ〜、全く」
「また、スパとか言いませんよね? そういう人間がスパに行ったりするとか言おうとしたとか」
「…………なっ、何を言ってるんだ、君は。スパイスの効いた奴だなと言おうとしたけど、失礼かと思って止めたんだ」
――気を遣うような性格でしたっけ? しかも、会ったこともない人間に
「なんだっ! 疑ってるのか? 君」
「……いえ」
「ならいい。泊まっていくといいぞ、君」
――てか、さっきの言ってた保護対象って何だったんだ? もう忘れてたのか? やっぱり精神が不安定なんだな
「なんか言いたげだな? 君」
「いやぁ〜、先程の保護対象って何だったのかと思いまして、はい」
「そうだったっ! 君は私の保護対象で庇護下に置かれたんだ。帰れないぞっ。いや、帰さないぞっ」
――うぁ~、最悪だ。聞くんじゃなかったぁ
「これで拒否権はないぞっ、君」
――粘っても無理だなぁ、これでは
「これは決定事項だ。いいな? 君」
その言葉に彼は力なく頷く。
今、辰巳はソウセイに寝る部屋を案内された。そして、彼はベットの上に横たわっている。なかなか彼は寝付けないでいる。
あの後、多少は緊張が解けて気づいたことがある。ソウセイの住んでいる所は、かなり広い。リビングも広かったし、部屋が幾つもあるのに気が付いた。
ドアをノックする音がする。彼は返事をする。するとソウセイが扉を開ける。彼女は手にお盆を持っている。その上にはカップが置かれている。
彼女は部屋の中央辺りにある。丸テーブルの上に、お盆を置く。そして、カップの取っ手の逆を掴み手に取る。それを辰巳に差し出す。
「眠れないのか?」
「あぁ、はい」
「水だ。飲むといい」
「あっ、ありがとうございます。いただきます」
そう言った後、彼はお辞儀をして手に取る。そして、それを一気に飲み干す。彼は自分が喉が乾いていたんだなと気付かされる。
「カップを私に」
彼は彼女へと手渡す。その際もお辞儀をした。彼女は受け取ったカップをお盆の上へと置く。すると、彼女は丸テーブルの横の椅子に座る。そして、彼女は脚を組む。
彼女は七分袖の服を着て七分丈のズボンを履いている。袖口と裾口から覗かせている腕と脚は筋肉質だ。スーツを着ている彼女は細身に見えていた。彼女は国防省職員なんだなと改めて彼は思う。
しばらくすると彼は急な眠気に襲われる。彼女が、じっくりと眠りに落ちていく様子を観察している。
彼の目の前には相対する二人の女性がいる。1人は、あの奇抜なショートカットの女性だ。彼女が正面の相手から視線を逸らす。逸らせた視線の先には辰巳がいる。彼女は彼と視線が合うとウィンクする。そして、視線を目の前の相手へと戻す。
そうされた辰巳は何を意味するのかわからないでいる。しかし、ウィンクの瞬間に何故か背筋が凍った。
しばらくすると、忽然と仮面のモノが現れた。前回、観戦した時は視認できなかった。一度、戦いの場に出たので見えるようになったのかと彼は考える。
仮面のモノが見合っている両者の中央に腕を振り下ろす。すると、奇抜なショートカットの女性の対戦相手の周囲の地面が揺れ出し轟音を上げる。
なんと地面から木が生え出してきたのだ。そして、あっという間に森を形成した。相手の姿は木々に囲まれ視認できなくなった。
一方の奇抜な女性は、腕組みして森の方を見ている。しばらくしても、動きを見せない。すると、彼女はフンッと鼻で笑うと、冷ややかな表情を浮かべ始めた。
そうしていると、森の中から何かが彼女の方へと向かって来る。辰巳はそれを見極める。それは矢だ。それが彼女を目掛けて一直線に向かっていく。それは彼女の顔の寸前まで迫る。
それに対して、彼女は首を動かし顔を傾ける。その顔の横ギリギリを通過していく。そして、それは地面に突き刺さった。
辰巳は思う。それは余裕綽綽だったのか、それとも紙一重で躱したのかと。
森の中から連続で音がする。辰巳は視線をそこへと向ける。すると、立て続けに矢が出てくる。出てくる数は一箇所からではない。どうやら森の中を移動しながら矢は放たれているようだ。
数にして辰巳が捉えられた数でも20本、実際はその倍以上だ。それらが高速で彼女に次々と襲いかかろうとしている。一射目は彼女の10メートル圏内に迫っている。
それに対して、彼女は腕組みの姿勢を崩そうとはしない。その彼女の口角が上がり、不敵な笑みを浮かべる。




