第83話 影の功労者たち
デリート・エフェクターがシヴァの手によって動かされた頃。
オキシゲインと共に味方機の援護をしていたクレナは仮拠点へ帰投し、レジーナからメビウスホライズンへと乗り換えていた。
『警告、デリート・エフェクターの砲口が想定よりもズレています。付近のリンカーは攻撃を加えて射角を調整して下さい』
「ブレイズの蹴りね、原因は……!」
「どっ、どどどどどうするんですか!? 今からじゃもう修正出来ませんよ!!」
「落ち着きなさい。私達が千景との通信が出来てるなら、輸送隊も最後の最後で修正出来るはずよ」
「そっ……それもそうですよね!」
だが少し前から粒子雲の影響で長距離通信は阻害されている。
輸送隊に地上から正確な修正の指示を出せない状況の中、クレナは必死に考えて一つの結論を出した。
「ユウト、BCユニットを操縦してくれないかしら」
「えぇ!? そ……そんな事を突然言われても困りますし、オキシゲインじゃ接続出来ないんじゃないですか?」
「その心配は無いわ。ほら座って座って!」
「あわっ、あわあわわ!!」
オキシゲインがBCユニットへと強引に押し込まれる。
観念したユウトが接続ジョイントに腕部を挿入すると、接続は問題無く完了した。
「あれ? どうしてレジーナ用の装備が……」
「開発者はあのタイトでしょう? こういう所に互換性は必ず持たせてるはずよ」
「なるほど!」
制御システムも問題無く起動している。
だがデリート・エフェクターのチャージは浮上開始と同時に終了してしまった。
「時間が無いわ! ぶつけても良いから目一杯加速させなさい!!」
「ひいぃぃぃ~~~!!!」
ユウトはフットペダルを踏み続ける。
メビウスホライズンも自身のスラスター推力を加え、BCユニットは速度を上げ続けた。
そして低高度から侵入したお陰で誰にも気が付かれる事はなかったが、砲身を叩くには間に合わない。
「こうなったら……ユウト! アンタは上に上がってコンテナを投げて!!」
「分かりました! けどクレナさんはどうするんですか?」
「私は、ビームを直接曲げる!!」
「無茶苦茶ですね……!」
メビウスホライズンはBCユニットの背を全力で蹴り上げ砲身に近づく。
全てのスラスターを背部に集めて加速し、何とかレーザーの先端には間に合った。
「こんのぉぉぉぉおおお!!!!! 曲がれえぇぇぇええええ!!!!!!」
クレナは脚部を中心にシールドを展開して回し蹴りを放つ。
受け流す事に特化したその性質によってレーザーの軌道はズラされ、後に続くエネルギーも続いて軌道を変えた。
「僕も負けて居られません!!」
砲身近くのコンテナはブレイズ・Rが蹴り飛ばしている。
ユウトは遠くのコンテナをBCユニットの大型アームで掴んで投げ飛ばし、無事に全てのコンテナをレーザーへと命中させた。
「「よっし!!」」
内部に格納されていた大量の部材は目論見通りに落下を始める。
一時的にエネルギー切れを起こしたメビウスホライズンはBCユニットが回収し、徐々に高度を下ろした。
だがコックピットでは突如として警告が鳴り響く。
真下に居た二人はレーザーの反射地域から僅かに外れているが、部材の落下地域にピッタリと重なってるからだ。
「「……ぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」」
「ユウト! ギガバスターモードを使いなさい!!」
「了解です!!」
BCユニットは更に高度を下げて空を見上げる。
変形した事で増加した無数の砲撃が多くの部材を破壊するも、大きな部材は破壊出来ずいくつも残ったまま落下していた。
「ダメだ~!!!!」
「こうなったら……BCユニットを貸して!!」
「は、はい!!」
オキシゲインが素早く立ち退き、今度はメビウスホライズンがBCユニットへと接続する。
制御システムは問題なく新たな機体を受け入れた。
「フルバーストモード、起動!!」
クレナは高度を落としていた機体を完全に着地させると、装甲を展開させてライズリアライザーを露出する。
正面の大型アームには光が灯り始めていた。
「ユウト!! 細かい瓦礫を迎撃して!!!」
「はい!!」
二人の判断に有無を言う暇は無い。
ユウトはドラゴニックバスターを起動すると、一瞬のチャージもせずに乱射した。
一見適当に撃っているようだが、実際はツグミのサポートによって最大限効果のある場所が撃たれている。
それでも状況は焼け石に水だった。
「ひぃぃぃいい~~~~!!!!」
「ミドリ! 落下予測!!」
「あのデカいのを砕けば後は問題無いよ」
「ユウト! 私が撃ったらフルチャージで撃ちなさい!!」
「りょっ、了解です!!」
オキシゲインで破壊出来るレベルの部材は撤去が終わっている。
残りは大火力で打ち砕くべき大きな部材だけだった。
「チャージ50%、通常より威力は低いけど……全砲門、発射!!!」
「ど、ドラゴニックバスター!!!」
上空へと向けられた全ての砲身から光が伸びる。
反動を押し殺すような余力も無くBCユニットは地面へと押し付けられ、オキシゲインの放ったレーザーが後を追う。
大火力の一点突破で大きな部材は無事に破壊し、彼らの安全は守られた。
「「あ、危なかった……」」
BCユニットは過剰供給になった粒子を熱と共に放出し、展開していた装甲を閉じて再び浮上する。
引き続き瓦礫を迎撃しながら仮拠点へ帰還すると、早速待機していたタイトからの通信が入った。
『おいクレナ! アンタなんちゅー無茶をするんだよ!!』
「でもお陰で作戦は成功したでしょ。それよりも、他の地上戦力は大丈夫だったの?」
『そりゃ大丈夫だったけどさぁ……』
元々戦力の大半がドームシールド内部か列車付近で戦闘する手筈になっている。
発射のタイミングになっても好き勝手動き回るようなリンカーは、腕に相当な自信のあるバカだけだった。
「私達がバカって言いたい訳?」
『いーやいやいやいやいや!! 違います違います!!! あーそれよりもほら、そろそろアークプリズンが修復されるぞ!!!!』
ほとんどの部材が落下し終えると同時にドームシールドは修復された。
粒子濃度は戦闘開始前と同レベルにまで落ち込んだものの、これからも戦闘を続ければすぐに戻るだろう。
「第二段階の開始ね……再発射までの予測はどうなの?」
『推定スペック通りであれば約一時間だな』
「それが今回の作戦のタイムリミット……」
全てはジンがシヴァを撃破出来るかどうかに掛かっている。




