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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
7章 第一次侵攻戦
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第77話 無限の水平線






 BCユニットのアームでアルゴンとブレイズ・Rを回収したレジーナはマーグヌム・カストラへと駆け込んだ。

 ヴィクテム撃破の段階で概ね役目は果たしているが、戦闘はまだ続いている為にレジーナとオキシゲインは補給の後に再度出撃し戦場へと舞い戻っている。


 その一方で運び込まれた機体の状態は芳しくない。


「ブレイズ・Rは中破、アルゴンも同じく中破だが内部が全体的に酷いって感じだな」

「数で押し切れると思ったんだがなぁ……」

「私の連携が甘かったのが原因です。申し訳ありません……」

「まぁ気にすんなって」


 どちらも修理可能なレベルの損傷であるが、戦線復帰は厳しい。

 たとえどうにかなったとしても万全の戦闘は出来ないだろうというのがタイトの立てた予測であった。


「何とかならねぇのか?」

「アルゴンは傷がちょっと深すぎるんだよ。ブレイズ・Rはまだマシなんだが、砲身を蹴り落としたのは良くなかったな」

「え……アレが?」

「そりゃそーだろ」


 ブレイズ・Rは小柄な機体である。

 アルゴンを庇おうと動いても結局はカバーしきれておらず、その行動は無意味となった。


 だがここで判明した脚部の蓄積ダメージはまた別問題だ。


「ここで分かっただけまだマシか……」

「だな。出来る事なら俺もジンを戦線に戻したいが、それにゃ新しい機体でも無きゃ……あーーーーーーー!!!!!」

「うぉいビックリした! 何だよいきなり!!」

「あるんだよ新しい機体が!!!」

「あっ、ちょ引っ張んなって!」


 タイトはジンを引き連れて格納庫を移動した。

 空となっている場所も多い一方で、最奥にはケーブルに繋がれた機体が鎮座している。


「これは……」

「あぁ。これがお前に使えるであろう新しい機体、メビウスホライズンだ」


 その機体はメビウス(無限)の輪を背負い、透明感のある雰囲気をまとっている。

 ジンの目にも外観は完成しているように見え、中身も実際に完成していた。


 だがどのテストパイロットにも機体を起動出来なかった為に放置されていた。

 タイトは格納庫に取り付けられたコンソールを操作しながらそう説明している。


「コイツもかなり特殊な機体だ、恐らくはアルゴンと同様に必要最低限のデータすら集まってないが故に動かないのだろう……と言うのが通説だ」

「つまり?」

「アルゴンとブレイズ・Rの稼働データを流用すれば何とかなる」


 機体の搬送は既に始められ、必要となる道具やメカニックも続々と集まっている。

 そうした中でジンには一つの疑問が浮かんだ。


「……アレは俺が使って良いのか?」

「元はクレナの為に作った機体だ。だが今はお前に託す……って聞いてるぜ」

「クレナの?」


 アルゴンも元はクレナの機体、つまり彼女の機体へ先に乗るのは二度目となる。

 それを知ってしまえばジンも多少は躊躇するだろう。


「本人が居れば“動かせるならさっさと動かして戻って来い”……って言うんじゃねぇか?」

「そうだな……ったく、分かったよ。乗ってやろうじゃねぇか」

「素直で助かるよ」


 ジンがコックピットに乗り込めばサブジェネレーターは動き出す。

 同時に外部のメカニックは彼のバディと過去の戦闘データを移動させ始める。


『武装はレイピアにシールドとハンドガン、まぁ他にも色々ある予定だが準備は出来てない』

「りょーかい。まぁそれ以上あっても使い切れんだろうさ」


 ケーブルを外された外装には様々なパーツが取り付けられる。

 機体はサポートプログラムであるバディは優先的に処理され、無事に目を覚ました。


「お待たせしました。ジンの相棒(バディ)アル、ここに見参です」

「おう。……頼んだぜ!」

「はい!!」






 ――――――――――――――――――――






 メビウスにとっての最重要拠点、エアストを方位していた無数のグルムはリンカーの活躍によりその大部分が排除された。

 これにより戦況は大きく傾くはずだったが、新たな装備と共に現れたシヴァは戦況の停滞を招いた。


『アハハッ! アルゴンさえ居なければ君達の驚異はガタ落ちだね!!』

「クッ……ジェムズは後退してエクリプスが前進して入れ替わり、ルクシオンの抜ける穴は私が抑えるわ!!」

「「「了解!!」」」


 以前の戦闘で甚大なダメージを受けたルクシオンは、その大部分を予備パーツに交換して出撃している。

 おかげでブレイズ・Rのような事態にはならなかったが、それでもシヴァ・ドラゴンと渡り合うにはスペック不足であった。


「世話をかけるな」

「まだどうにか出来るレベルだから問題無いわ」


 クレナはルナクスへとそう言うが、置かれた状況はかなり悪い。

 BCユニットは全周に取り付けられたレーザー砲をほとんど失い、スラスターも燃料切れが近くなっている。


 大型アームで攻撃しようにもタイミングが無い。


「こうなったら……このまま押し潰してやるしかッ!!」


 クレナは真正面から全重量をかけてシヴァを押し潰しにかかる。

 だが相手は地に脚を付け、両腕でそれを受け止めた。


 ダメ押しに二本のクローで抑え込もうとするがアーム部分は破壊され、BCユニットからは兵装のほぼ全てが失われた。


『真正面から来るとは驚いた。でもね、いつもそう上手く行くと思うかい?』

「思ってないわよ……」


 隙だらけのレジーナが攻撃されないのはスラスターで圧力をかけているからに過ぎない。

 少しでも脱出しようと動けば即座に迎撃されてしまうだろう。


「こうなったら……!」

「クレナさん、何をするつもりなんですか!?」

「自爆するしか無いでしょう!!」

『その時を待っていた!』


 レジーナは左腕だけBCユニットとの接続を解除させ、セルペンテスを構える。

 一方のシヴァが僅かに飛び上がって腰部に懸架したライフルを向けたその時。


『何だ!?』

「援軍だ!!」


 上空から高密度の弾幕が彼らの元へと飛来した。

 真っ先に気付いたシヴァはビームシールドを展開しつつ、大きくバックステップする事で距離を取った。


『上からか。まさか僕の味方、なんて事は無いよね?』

「当たり前だ!」


 輸送機から降下した機体、メビウスホライズンは両手のハンドガンでシヴァを牽制する。

 それと同時に逆噴射を行いレジーナの近くへと着地した。


「ジン、アンタまた新しい機体を起動させたのね……!」

「まぁな。それよりも大丈夫か?」

「ギリギリね。……ったく、遅いのよ」

「わりぃな」


 メビウスホライズンは両手のハンドガンを腰のホルスターに収納し、背中へと手を伸ばす。

 するとウェポンラックから二本のレイピアが展開された。


『何だ、その機体は……!?』

「メビウスホライズン。シヴァを含めたメビウスの全てが詰まった、最後の希望だ!!」


 ジンはフットペダルを踏み込み、一気に接近しての刺突を繰り出した。

 だがその攻撃は軽く受け止められてしまう。


『ふんっ! 新型だか何だか知らないが、パワー勝負でドラゴニックシヴァに勝てる訳が無い……!!』

「そうだな、確かに単純な出力勝負じゃ勝てない。……だから!!!」

『ッ!?』


 一度深く押し込んで体勢を崩し追撃、その後に背面のスラスターを一部だけ吹かしてサイドステップを繰り出す。

 鋭いスラストマニューバの先にあるのは横腹を狙っての攻撃だ。


「何なんだあのパイロットは……!?」

「とてもじゃないが真似出来ないな」


 エクリプス所属のリンカーは古いCAとその限界を知っている。

 それが故に無茶な動きはしない。


 だがジンはその時代を知らず、人間の限界を超えた動きでの戦闘を得意としていた。

 偶然の噛み合わせが最良とも言える結果を叩き出しているのだが、当人達から見える光景はまた違ったモノだろう。


「っち、じゃじゃ馬め……」

『っく、厄介だね……』


 エルも意図しない速度で飛んできた攻撃には反応しきれず被弾を繰り返すが、ジンは数度の攻撃で距離を取った。

 そうした状況で両者が分析を始めれば戦闘は停滞するしか無い。


「メビウスホライズンは我々に最適化されていません。そもそも使いづらくはありますが、全機能にもアクセス出来ていない事を注意して下さい」

「まぁ確かに最善の動きは出来てないな。それでも、ここまで動くなら十分過ぎるってモンだろ?」


 刺突武器である事が難点だが、接近戦である以上ジンの動き方に大きな変化は無い。

 彼が大まかな操縦感覚を掴んだ一方、相対する存在も同様に対処法を掴みつつあった。


『ハ……ハハハッ! 頑張ってもその程度なんだね!!』

「うるせぇよ」


 ジンは右手のレイピアをウェポンラックに収納してハンドガンの装備を再び選択する。

 その攻撃が防げる程度だと読んだエルはシールドを展開し、小刻みに速度を変えながら移動を開始した。


 メビウスホライズンも銃撃しつつそれを追えば距離は一定に保たれるだろう。


「アル、ちょっと強めの一発をお見舞いするぞ」

「了解。出力を調整します」

「援護します!!」


 オキシゲインがエンジェルブラスターで射撃を行いシヴァを導く。

 エアストとの距離は着実に離れており、彼らの目先には緑豊かな森が待ち受けている。


『ハッ、これで追い詰めたつもりかい?』

「追い詰めたの……よッ!!」

『なっ!?』


 木々の間に隠れていたレジーナはセルペンテスを伸ばし、ドラゴニックシヴァの足を絡め取って転倒させる。

 立ち上がろうとしたその脚をメビウスホライズンの高出力レーザーが襲った。


『何なんだその威力は!!』

「さっきとまるで違うってか? まぁ調整出来るからな、違うのも当たり前だ」


 大空を優雅に舞っていた先程までとは一転し、シヴァが地面を這いつくばいメビウスホライズンが上空から追い立てている。


 包囲を簡単に抜けられるがダメージは与える事が出来た。

 ジンは味方機の包囲網と共に、メビウスホライズンをゆっくりと追う。


「……ジン、通信です」

「どこからだ?」

「足元です」


 彼の向けた視線の先にはライフルを持ったCAが待機している。

 何やら急ぎの用があるらしく、一先ずは通信を接続して事情を聞く事にした。


「こちらエクリプス所属のハルトです、戦闘に参加出来ず申し訳ありません」

「あぁそりゃどーも。で何の用だ?」

「はい、ジンさんにお届けものがありまして。こちらをお受け取り下さい!!」

「うぉっ!?」


 ハルトの操る機体は槍投げの要領でライフルを投げ飛ばした。

 アルのサポートで何とか受け止める事は出来たが、その行為は非常識と言う他無い。


「それでは。ご健闘をお祈りします!」

「おっ、おう……いやそうじゃないだろ!? つーかもう居ねぇ!!」

「仕事の早い方でしたね」

「まぁそれは良いよ。だがこれは何なんだ……」

「メビウスライフルと言う武器のようですね」


 ジンはサブモニターを操作してマニュアルを起動する。

 そこに表示された情報によれば、投げ渡されたのはエネルギー弾と実弾の両方が射出可能なライフルらしい。


 大量のエネルギーを送ればアウルムアルクスと同等の照射攻撃も可能とされているが、実際に使えるかは確証が無いと補足されていた。


「これで仕留めろって事か」

「どうしますか?」

「ん~……」


 メビウスホライズンは燃料を異様に早く消費している。

 多大な負荷のかかる武器を使えば一瞬にして機体は停止してしまうかもしれないが、戦闘を早く終わらせる可能性もあった。


 その両方を天秤にかけ、ジンは最終的な結論を下す。


「どうせだし使ってやろうぜ。って事でクレナさんよぉ、援護を頼めるかい?」

「了解。どうにかするわ」

「サンキュー!」


 シヴァを追いかけていたリンカーの陣形は追跡から足止めへとその性質を変える。

 クレナの指示によって近くの味方も集まっており、シヴァの包囲網は徐々にその規模を巨大化させていった。


『これは、何か仕掛けてくるのかな?』

「流石に気付かれるか……」

「無理もありません。こちらも準備を急ぎます」

「だな」


 ジン以外がシヴァを取り押さえるのは難しい。

 頼みの綱であるBCユニットは破壊されルクシオンも補給に戻っているのだから、残された者達はあからさまであろうと足掻くしか無いだろう。


 だがその甲斐はあった。


「……ライザーモード起動を確認。メビウスライフルの使用条件、全てクリアされました」

「っしゃ来た! 何か分からんけど!!」

「機体出力を上昇させるシステムのようです……が、完全には起動していない事に留意して下さい」

「りょーかい。一発で仕留めてやらないとだな」


 メビウスホライズンは螺旋の軌跡を残して大空を舞い、高度を稼ぐ。

 激しく煌めくスラスターの残像は見る者を魅了する程に美しいが酷く乱暴でもあった。


 ある程度の高度に到達すると、ジンはメビウスライフルを地上のシヴァへと向ける。


「さぁ……行くぞ」

「ロックオン完了、エネルギーチャージを開始」

「僕の方からもロックオンを支援しますよ!」

「サンキュー!」


 オキシゲインは包囲網の少し離れた場所からシヴァを見つめる一方、上空ではメビウスホライズンのウィングパーツからライフルへと光の線が集まっている。

 そうして強まる光は次第にエルの目を引いた。


『何だ、アレは……』

「チャージ完了。ですが気付かれましたね」

「構わんッ! 発射だ!!」

『まさか……ッ!』


 ジンがトリガーを引けば強烈な熱線の放射が始まる。

 それが突き刺さる先に居るのは勿論シヴァだ。


『ぐぅぅぅ……君は厄介だね、本当に!!』


 エルはとっさに展開したビームシールドと腕部装甲で攻撃を防御する。

 多少であれば耐えられる程度の威力であった為、エルはその照射が終わるのを待つ事にした。


『……何故攻撃が終わらない!?』

「残念だが俺とお前はもうチキンレースの中だ! コイツの銃身が溶けるか、お前の装甲が溶けるかってな!!」


 ウィングパーツから伸びる光はチャージ中と同様に伸び続けている。

 それどころか量は増し、周囲に集まっていた機体からの攻撃も再開された。


 周囲のグルムをほぼ駆逐されヴィクテムも押さえられてしまった以上、エルの取れる選択肢も限られている。


『仕方無い……ッ!!』


 シヴァは上半身を固定したまま両足のパーツを蹴り飛ばす。

 メビウスライフルの射線に入ったそれが爆散する間に全パーツをパージし、爆炎に紛れて包囲網から脱出した。


「待ちやがれ!!」


 ジンは照射方向を変えての追撃を狙う。

 だが銃口を持ち上げようと動かした所で照射は止まった。


「なっ、何だ!?」

「燃料切れです。これ以上の照射は危険と判断してこちらで停止させました」

「っち……そうかい」


 光を弱めたメビウスホライズンはゆっくりと降下する。

 メビウスライフルの銃身も赤熱化こそしているが、初陣でそれ以上の事態には陥っていない事は幸運と言えるだろう。


「しっかし、森側に逃げられるとはなぁ」

「追撃は難しいでしょうね」


 アルの予想通りにリンカーは早々で追撃を断念して帰投した。

 だが二つの大きな驚異を撃退した今、エアストの安全は確保出来ただろう。






【お知らせ】

どうも、作者の鳥皿鳥助です。

この部分が投稿時まで残っていると言う事は、恐らく次話の制作が投稿に間に合わないのがほぼ確定してます。

つまり何が言いたいかと言うとですね。


更新、しばらく途絶えます!


いや本当に申し訳ない。

ただでさえ週一更新なのにねぇとは思いますが、納得行くクオリティで出すにはどうしても時間が必要でして……


再開は遅くても半年以内、早ければ1~2ヶ月以内でやると思います。

続報についてはTwitterアカウントにて報告するので、進捗状況が気になる方はそちらを監視して頂けたらと思います。



そして最後になりますが、いつも本作を閲覧頂きありがとうございます。


PV動いてるお陰で何とかここまで書いて来れたしこの先も書いていけます。

出来ればこの先もちょこちょこ見て頂けると嬉しいです。



……以上!

長々と書いてすまんかった!!

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ノベプラ版→挿し絵あり/前後書きあり】
なろう版 →挿し絵あり/前後書き無し】
カクヨム版→挿し絵なし/前後書き無し】
って感じになってます、好みの場所で読んでね!!

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