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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
7章 第一次侵攻戦
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第76話 過去の遺物






 グルムのボス、ルフス・エフェクターは本陣のエアスト到達から大幅に遅れて到着した。

 一先ずは戦況を俯瞰して介入する場所を考える為に動かしたシヴァの目は、興味深い物を捉えた。


『……ん?』


 それは森林と草原の境目に乗り捨てられたブレイズ・Rである。

 彼は降下しての接近を選択したが、森から飛び出したオキシゲインに阻まれた。


「ジンさんの機体は僕が守ります!!」

『ッチ……』


 ユウトも多少は近接戦闘の腕を上げているが、それでも機体同様に遠距離戦を得意としている。

 シヴァが一気に押し切ろうとレーザークローを起動し振りかぶると、今度は横から大型のアームで捕まれ投げ飛ばされた。


 空中で姿勢を立て直し顔を上げればBCユニットに身を包んだレジーナが立ちはだかっている。


「今度は奪わせないわよ」

『お土産もくれないとは、ケチな連中だ』

「礼儀を知らない奴にそんな物あるはずが無いじゃない」

『確かにそうだね』


 ルフス・エフェクターは悪い状況に置かれている。

 自身と同格のエースたるヴィクテムは戦闘不能となり、リンカーという戦力を取り戻したエアストはその周囲からグルムを撃退しつつある。


 これ以上戦況を悪化させない為には相手のエースを落とす必要があるだろう。


『……それなら、無理矢理にでも奪うとしようか!』

「おっとそうは行かねぇな!!」


 ジンは仲間の作った隙きでブレイズ・Rへの搭乗を完了させた。

 こうなればもう簡単に奪われはしないだろう。


『遅かったか……』

「お陰様でな。それよりもエル! てめぇはまた人の物を奪おうってのか!?」

『そうだよ。厄介な技術を奪って解析して自分のモノにする、人類もやってきたことのはずだ』


 戦闘は膠着状態となった。

 互いに睨み合い激戦の予兆が漂う草原だったが、空気を一変させる機影は静かに近づいている。


 ジンが気が付いた頃にはヴィクテムのような影が地面に現れていた。


「ん? 何だありゃ」

「あれはワイバーン……? まさか、まだ動く物が残っていたと言うの!?」

『残していたのさ。でもそれだけじゃない……』


 シヴァがリンカーの不在を狙えなかった理由。

 それは修理機体の修理を行っていた事だけで無く、強化も同時に行っていたからである。


 ワイバーンがシヴァ目掛けて急降下を始めると同時に、シヴァもワイバーン目掛けて飛び上がった。


『お楽しみはこれからだよ!』

「分離しただと!?」


 分離したワイバーンのパーツはシヴァに近づく。

 次々と装着されるそれらは次第に手足となり、巨体を構成して地面へと降り立った。


『ドラゴニックシヴァ。ヴィクテムのデータを利用して作り上げた、ワイバーンユニットとシヴァの組み合わせ……』

「くっ!」


 新たな名を得たシヴァは両足で地面を踏みしめ、右腕をブレイズ・Rへと向ける。

 ワイバーンによって強化された砲口には膨大なエネルギーが集まった。


『もう誰にも、邪魔は出来ない!!』

「総員回避だ!」

「「ッ!!」」


 打ち出された光線は地面に突き刺さり大爆発を巻き起こす。

 ジン達は土埃の中からそれぞれ脱出した一方、シヴァは土埃の中で目を光らせる。


「何なんだよアイツ!」

「追加装備は伊達じゃないわね……」

『その通りさ!』


 十数メートル程度にまで刃を伸ばされたレーザークローが土煙を食い破る。

 幸い射程外に居た為に全員無傷だったが、もし少しでも近づいていれば真っ二つにされていただろう。


「マジかよ!」

「あの感じは全体的な出力強化、それと装甲追加による防御力強化がされてるんですかね……」

「でしょうね、でもあんな攻撃がいつまでも持つモンですか。仕掛けるわよ!」

「背中、お借りしますよ!」

「俺は迂闊に突っ込めねぇな」


 レジーナはBCユニットのスラスターを動かし、滑るように空中を駆け回ると同時にビームを乱射する。

 同乗じたオキシゲインもエンジェルブラスターのトリガーを引くが、全ては大型化したビームシールドで防がれてしまった。


 ならばとブレイズ・Rが接近戦を仕掛けるも、小柄な機体(ブレイズ・R)に対する大柄な機体(ドラゴニック・シヴァ)という差は極めて不利に働く。


「クッソ、どんだけブレード伸ばしても届かねぇ……!」

『言っただろう? もう誰にも邪魔をさせないと!!』


 出力強化で機動性と攻撃力が上昇し、装甲追加で防御性能も上がっている。

 その上でレーザークローの射程が伸びてしまいジンと言う戦力を活かせない状況、それは厄介と言う他無いだろう。


「だが一番厄介なのは……」

「エルの学習能力でしょうね」


 チーム戦による連携であろうと個人戦の攻撃であろうと、人の行動は概ね決まった物になる。

 イレギュラーな行動を取れば失敗する可能性があるからだ。


 そんな失敗を無視してでも普段と異なる行動を取った彼らだが、ルフス・エフェクターはそれにすら対応して来ていた。


「こうなったら……アル、動けるか?」

「装甲剤の取り込みは終了しました。いつでも動けます」


 バスタービットの生成と回収には手間がかかる。

 故にここまでは戦闘に参加出来なかったアルゴンだが、主の命令を受ければバディは機体を動かす事が出来るだろう。


「オッケー。んじゃパワードフェーズで接近戦、同時攻撃を仕掛けるぞ!」

「了解です」

「私達は遠距離から援護するわ。ユウト!」

「はい!!」


 オキシゲインはBCユニットから離脱し、森に身を潜めた。

 入れ替わるように飛び出したアルゴンは木々と平行してブレイズ・Rと挟み込む。


 そしてシヴァの前後から射撃で牽制を行い、左右からはジンとアルが接近して攻撃を仕掛けた。


「そぉらよ!!」

「まずは一本、頂きます!」

『その程度で……』


 二機による素早い一閃がシヴァを襲う。

 ソードビットによる追撃を組み合わせ、彼らは右腕の追加装甲を外す事に成功した。


『……倒せると思ったのかい?』

「マジかよッ!」


 だが実際はパージしただけであった。

 それもダメージの軽減だけで無く、既に攻撃準備が整った右腕本体を装甲片で隠す為の物である。


 そして密かに集められたエネルギーはアルゴンの方へと向けられた。


『吹き飛べ!!』

「アル!」

「回避が、間に合わない……!!」


 威力は先程より格段に落ちているだろう。

 だがシヴァの攻撃はその全てが致命傷になりかねないのである。


 ブレイズ・Rが素早くカバーに入るが、結果は二機とも撃ち抜かれるだけであった。


『何か言い残す事はあるかな?』

「申し訳ありません……」

「反省は後だ! それと遺言もな!!」

『そうか。ならば……ッ!』


 墜落したブレイズ・Rと体勢を崩したアルゴンは崩れるように倒れ重なり合った。

 シヴァは装甲を再装着し、大型化した右腕にエネルギーを送り込む。


「ジン、一旦撤退よ!!」

「りょーかい!」

「了解です!」

『逃すと思うかい?』

「逃げますよ!! ドラゴニックバスター!!!」


 オキシゲインから放たれた光の咆哮が襲いかかる。

 シヴァが右腕のエネルギー全てを注ぎ込み無効化すれば、二つのエネルギー塊は大きな光の幕を作り出す。


 それが収まる頃にはシヴァの周囲に機影は残っていないだろう。


『やっぱり撃破狙いじゃないか。まぁ良い……彼らが居ないなら、僕は存分に暴れられる!』






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