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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
7章 第一次侵攻戦
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第75話 生贄の答え






 レジーナは戦闘から離脱する。

 森に入ったヴィクテムは木を斬り倒し薙ぎ倒しながらどんどんと深部へと突き進み、ジンとユウトはその後を追った。


「この場所も懐かしいですね……」

「ユウトと初めて合った場所に近いな」


 狙撃精度も威力も、そしてジンとの連携もあの時とは一切違う。

 死角からクルスの砲撃が飛ぶが、アルはビットで防ぎ迎撃した。


「悠長に雑談をしている場合では無いかと」

「だろうな。……ここまで離れたら挟み撃ちした方が良いかもな、俺は先行するぞ」

「了解です」

「分かりました!」


 ブレイズ・Rは真っ直ぐに後を追い、アルゴンとオキシゲインは弧を描くように移動する。


 ヴィクテムは背の高い樹木の中を円形に切り開き、決闘の場と言える場所を作り出した。

 ジンはその空間へと踏み込む。


『我が名はフォルティス。答えてくれ地球のリンカー、君は何故メビウスの為に動く』

「何を突然……」

『答えてくれ。この星をここまで汚す人間は滅ぶべきと思わないか?』


 ヴィクテムは剣を構えたまま動かない。

 竜の顔も動いてはいるが、騎士の視線は痛いほどに厳しい物である。


「……汚してきたのはルフス・エフェクターだろ」

『だがそれを作ったのも人間だ。作った者は出来上がった物に対する責任を取るべきだと思わないか?』

「確かにそうだな。そう考え星の為を思うなら、人は滅ぶべきなのかもしれない」

『なら――』


 フォルティスはどこかで期待していた。

 異星の者が自身の考えに同調し、肯定してくれることを。


「――でも最終回答者はお前じゃない」

『なっ……!?』


 深い期待が裏切られてしまえば、深い動揺が跳ね返る。

 その動揺は次第に怒りへと変化した。


『ならば貴様が答えを出すとでも言のか!!』

「いいや、回答者は俺でも無い。これは人一人なんてチッポケな存在が決めていい事じゃないからな」

『ならば誰が回答を下すと言うんだ!! 何年も何十年も何百年も、人は決断の時から逃げてきた!!! だから今この時、俺が決断を下してやろうというのに……ッ!!!!』


 ヴィクテムの騎士は剣を振るう。

 苛立ちを隠しきれないで入るが、その下部に位置する竜は呼応する事なく静粛を極めている。


「回答を下すのは人類という種の全体だ。たった数人で、種の行く末を決めて良い訳がねぇだろ!」

『そうか。……他人に答えを求めたのが間違いだったよッ!!』

「おっと交渉決裂、あとは力で勝負ってか! 乗ってやろうじぇねか!!」


 竜の四肢が地面を力強く蹴り、ブレイズ・Rは空気を燃やして空を舞う。

 相手に届けようとした刃は互いにぶつかり合い拮抗した。


『嫌いなんだよ、お前みたいな奴が……一番!!』


 それは仲間が居て、実績を残せるジンに対する言葉。

 そして誰かと共に夢を追い求められるリンカーへの言葉である。


 どちらも両方を成し得なかったフォルティスには、ジンの言葉が深く刺さってしまった。


『エクスキュージョンッ!!』

「おっと!」


 ヴィクテムは竜に強化させた刃でブレイズ・Rに斬りかかる。

 樹木は余波で簡単に切り倒され、手当たり次第に吐かれた火球が焼き尽くす。


 騎士の攻撃も一層苛烈を極めブレイズブレードすら破損した。


「「援護します!」」

「サンキュー!!」

『クッ……この程度!』


 木々の間を縫うようにしてオキシゲインの狙撃が胴体部に突き刺さる。

 衝撃で足が止まった所にシュータービットが四肢を射撃し、ヴィクテムの体勢は大きく崩れた。


 ジンはその隙きに一旦距離を取り武器を再び手にする。


「デカブツ相手にゃデカブツが欲しいな……」


 近接武器であればソードビットやブレイズブレードがある。

 だがヴィテクム()を相手にするような時は、もっと大型の武器がなければ接近戦の難易度は上がってしまうだろう。


 それがジンの経験則であった。


「多分作れます」

「マジか!!」

「ただし他のビットがほとんど使えなくなる上にアルゴン本体の耐久力が著しく低下します。それでも新たなビットを、バスタービットを使いますか?」

「マジか……」


 ここまでは優位に戦えているのは手数があるからに他ならない。

 ユウトの援護があるとは言え、それを捨ててしまえばパワーバランスが一気に崩れる可能性さえあるだろう。


「ジンさんなら大丈夫ですよ! 僕もちゃんと援護しますし、何よりも腕がありますから!!」

「そっ……か。そう言って貰えると嬉しいよ」

「「照れてます?」」

「うっせ!」


 普段イジる側のジンが珍しくイジられる側となっている。

 滅多に言われない言葉でジンも覚悟が決まった。


「……バスタービットとやらを使ってやろうじゃねぇか」

「了解、生成を開始します。ジンはアルゴンに乗り換えて下さい」

「りょーかい!!」

『逃がすか!!!!』


 ブレイズブレードの投擲と同時にブレイズ・Rは後退する。

 勿論そんな事をすればヴィクテムに狩られてしまうが、その隙きはオキシゲインが埋めた。


「逃しますよ! ドラゴニックバスター!!」

『クッ、厄介な奴だなッ!!!』


 ヴィクテムは協力なレーザーを容易に斬り裂き防御する。

 ダメージにこそならなかったが、目的を達成したオキシゲインはブースターを煌めかせて再び木々に紛れた。


『奴はどこだ……!』


 残された騎士は怒り狂い、当たり一面を火の海にして回る。

 その目的は自分と異なる意見を持つ者を始末する事だけだ。


『どこに行った、地球のリンカー!!』

「ここだ!」


 ジンの乗り込んだアルゴンが巨大な剣を持って斬りかかる。

 ヴィクテムはとっさに防ぐも、かなり押し込まれてしまった。


 パイロットたるフォルティスは細身の胴体を叩き斬ろうとし、ジンもそれに対抗して出力を上昇させる。


『くぅぅぅ……このぉ!!!』

「負けるか!!」


 鍔迫り合いの中、コンマ一秒未満。

 ほんの一瞬だけヴィクテムの出力が低下した。


『「何ッ!?」』


 それは当人達でなければ分からない程であり、出力も回復早かった。

 だが崩れた体勢までは戻らない。


 対するアルゴンは出力が上昇し続けているからだ。


『もう諦めろとでも言うのか……ヴィクテム!』

「まだやり直せるって事だろうよ!!」

『何だと……?』


 フォルティスは長らく機体の声を聞いていない。

 元は聞ける人間であったのだが、聴けなくなったのは精神的余裕が無かったからに他ならないだろう。


 だがこうして誰かと話をし、これまでの行動を振り返ってしまえば状況は変わる。

 所詮は全てが八つ当たりに過ぎないとフォルティスは気付いてしまったのだ。


『だが、俺は……俺は一体どうすれば良いんだッ! 教えてくれよ地球のリンカー!!』

「そんな事は知らんッ!! 」


 アルゴンは互いの拳が届く距離にまでバスタービットを押し込む。

 そして力を抜いて相手の体勢を崩し、剣を蹴り飛ばした。


 ヴィクテムの竜は獲物を眼前に捉えるが、騎士同様にもはや食らいつく気力すら無い。

 ぐったりとした様子の相手にジンは回答を送りつける。


「……種の全体で決める事にどうこう言える訳ねぇだろ」

『ならば何故貴様は戦う』

「それは解答を押し付けるお前を止める為って所だな。ま、本質は少し違うが」


 ジンはこの世界がゲームだと聞いていたからここまで来れた。

 今更その認識を完全に変える事は出来ないが、少なからず変化はあるのだろう。


『……既に解答権を持たない俺は、どうすれは良いんだ』

「礎になった者として世界の行く末を見守れば良い。そうするしかねぇだろ」


 アルゴンの拳がヴィクテムの頭に触れる。

 それは敵意の無い、優しい動きであった。






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