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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
7章 第一次侵攻戦
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第74話 エアスト防衛戦






 デリート・エフェクターの傷跡はルブルム上と拠点に大きな傷跡を残した。

 使用にはアルゴンが必要不可欠だと判断し強気に出た作戦を実行したメビウスだったが、実際には大量のエネルギーを送り込むだけという非正規手段も存在した。


 それはメビウスとファントム・エクスの誤算であったが、彼らにはもう一つの誤算が存在した。


「シルフ総司令官、このままでは……」

「分かっている。まさかグルムがこれほどの戦力を隠していたとは……ッ!」


 ルブルム上から一斉にリンカーの消失すれば、グルムはそれを好機と判断して各拠点への攻撃を開始するだろう。

 そこまでは予想出来ていたのだが、ルフス・エフェクターは本来カウス1に配備していたグルムの大半を別の場所に移動させていた。


 デリート・エフェクターの破壊と同時にグルムの数を減らしておく算段は外れてしまい、各地に配備されていた列車を中心とする防衛設備も次々に突破されている。

 各大陸の拠点は次々と機能停止に追いやられ、もはや部隊を率いる意味も無いとばかりにヴィクテムが単身でエアストに近付いていた。


「だから余所者に頼るべきじゃなかったんだ!! 俺達だけで戦ってれば!!!」

「だが彼らを頼らなければ今は無かった。それはエルヴィン管理官にもご理解頂けるだろう?」

「それはそうだが……」


 現在のルブルム上ではメビウスとグルムの両陣営が全戦力をエアスト周辺に集中させている。

 ここが落とされればメビウスの敗北は決定的となり、ルフス・エフェクターの勝利は確定的となるからだ。


「それよりも、問題は我々が何も知らない人々を騙していた事でしょう。私であれば二度と手を貸しません」

「ヒルデ管理官の言葉にも一理ある。だが例えそうだとしても、彼らは必ずやって来るさ」

「……ったく、わーったよ。総司令官のお言葉とあれば信じて粘ってみようじゃねぇか」


 そうして話している間にヴィクテムはエアストの防衛ラインへと到達した。

 彼らは列車を動かして何とか防衛しようとするが、それでは圧倒的に戦力が足りない。


 結局彼らに出来るのは時間稼ぎとリンカーの救援を待つ事だけである。


「エアスト防衛隊から通信!」

「味方か!?」

「いいえ、これは……敵の大軍勢が迫っています!!」

「ヴィクテムが単身なのが侮られていたのでは無く、巨大な部隊を構築していたからか……」


 報告された規模は過去最大規模の戦闘であるメビウス攻防戦を遥かに上回る。

 ヴィクテムの足止めにすら手間取っている状況では戦況が一気に押し込まれてしまう。


「おい。このエアストに向かう輸送機は何だ? こんな時に一体誰が動かしたんだ?」

「識別不明ですが、アレは……!!」


 尾翼にはメビウスマークが、そして主翼には各ユニオンのエンブレムが刻み込まれている。

 格納庫からは輸送機と同じエンブレムを持つ機体が次々に投下されエアストを囲うように着地した。


『報告も無く来て悪かったな。今まで散々騙されてたんだし、コレ位の意地悪は許されるだろ?』

「……私は君達を裏切ってでもこの星の人々を救いたかった。だからそれを今日まで嘘して来たが、何故君達は私を許す?」


 シルフ総司令官は率直な疑問を口にする。

 もはや自己満足でしかないその質問だが、返ってくる言葉は実に率直なモノであった。


『この世界がどこまで行こうとも、俺たちにとってはゲームの世界だからだ!』

『それに許す許さないじゃないでしょ? 最初から怒っても無いんだしさ』

『早く俺達にミッションをくれよ!!』


 リンカー達は口々に話す。

 聞き手たるシルフ総司令官達は言葉の多さ、そしてポジティブな言葉の多さに圧倒されるしか無い。


「そんな、どうして……」


 それは何故協力するのかという意味の言葉。

 思考から漏れ出したそれはリンカーへと届き、また新たな言葉を返す事となる。


『んなの決まってんだろ。ゲームはNPCから依頼を受けて、プレイヤーが遂行するのが基本だ!!』

「そうなのか……?」

『そうなんだ』

「ははっ、そうか」


 納得した様子のシルフ総司令官は笑みを浮かべる。

 思い詰める事が多く、久しく彼が出来なかった顔だ。


「では私も、君達の流儀に合わせるとしよう」

『頼んだぜ?』

「承知した」


 シルフ総司令官は咳払いで声を調整する。

 顔も笑みを隠して引き締め、浅く被っていた制帽を被り直した。


「エアスト周辺の全リンカーに通達する」


 全ての機体が武器を構える。

 パイロットは耳に神経を集中し、次の言葉を待った。


「全力を持ってグルムを殲滅し……」


 遠距離機はレーダーを起動させ、近距離機はブースターに火を入れている。

 戦闘準備は万端だ。


「エアストを守り抜け!!」

『『『うぉぉぉおお!!!!!!』』』


 号令を受けたパイロット達は一斉に動き出し、大きな土埃の壁が作り出される。


 例え相手の数が膨大であろうと、大きな戦力支援を受けた今のメビウスであればそれに対抗する事が出来るだろう。

 シルフ総司令官はそうした予感を抱いた。






 ――――――――――――――――――――






 ES社でそれぞれの戦う理由を知ったジンは早速帰宅し、ルブルム・テルースへと向った。


「ここは……ブレイズ・Rの中か」


 彼の意識が送られると同時に機体は起動した。

 最後に居た地点はグルム研究所近くの拠点だったが、コックピットに送られる映像はそこがメビウスの格納庫である事を示している。


「マスタージンの帰還を歓迎します。……ようこそ戦場へ、そしてありがとうございます」


 ジンがしばらくそうしていると、アルはメインモニターの真正面に姿を現した。


「事情は大体理解してるから気にすんなって」

「ですが……」


 アルの顔色は悪く不安で満ちている。

 誰かを騙していた事、そしてそれがバレてしまうのが初めてだからだ。


「俺は楽しむためにこのゲームをやったんだから、それを中途半端な状態で投げ出したりはしねぇよ」

「ジン……」

「俺はこの世界を楽しむ、その為に楽しくない物はぶっ潰す!! ただそれだけだ」

「……アナタは変わりませんね」

「そうでも無いさ」


 少なくともジンは以前よりもゲームを楽しめている。

 それが本当の出来事であると言うのなら、彼は以前よりも現実を楽しめていると言うべきだろう。


「んじゃそろそろ出撃するぞ」

「そう、ですね。私も頭を切り替えなければなりません」


 ブレイズ・Rはアルゴンと共に地上へ降下する。

 その頃には他のリンカーも戦闘を開始し、クレナやユウトも戦線に参加していた。


「やっべ、完全に出遅れたな~」

「ジン! アンタ何グズグズしてるのよ!!」

「いや悪かったって!」


 文句を言いながらでも戦闘が可能な程に彼らの練度は高い。

 次々と襲い来る低級グルムとバロンを投げ飛ばしていると、彼らの元にシルフ総司令官からの警告が届いた。


『ヴィクテムがエアスト正面に向かっている、注意してくれ!!』

「正面って言うと……ここか!?」


 上空から現れた竜は土埃を立て、騎士がその幕を斬る。

 鋒はブレイズ・Rへと向けられた。


 周囲の味方機は何を言う前にヴィクテムを取り囲むが、相手は何のアクションも起こさない。


「どうやらご指名みたいだな。コイツは俺が引き受けるぜ」


 ブレイズ・Rが双剣を両手に腰を深く落とす。

 その両隣にはレジーナとオキシゲインは近付き、共に武器を構えた。


「私達が、でしょ?」

「僕も協力しますよ!」

「そうだな。っし、んじゃ改めて……ヴィクテムは俺達ESFで相手をするぜ!!」

『了解した、現場周辺の戦闘指揮は君達に一任する』


 シルフ総司令官から権限を与えられたクレナ速やかに指示を出して味方機を遠ざける。

 同時に投げられたブレイズブレードは竜の口が受け止め砕いた。


 それを確認してもなお、ブレイズ・Rは地面を蹴る。


『何故だ……』


 竜の口からは火球が吐き出される。

 ジンは再生成したブレイズブレードでそれを弾くも、今度は騎士の剣が襲いかかり受け止めざるを得ない状況となった。


 足を止めてしまえば竜は容赦なくジンへと牙を剥くだろう。


『どうしてお前は噛み砕く事が出来ない……』

「やっばいな!」

「私を忘れてもらっては困りますね」

「僕だって居ますからね!!」


 オキシゲインとアルゴンが共に遠距離から射撃を加えようとヴィクテムは撃破出来ない。

 弾丸は全て強靭な装甲で防御されたが、後退させる事は出来た。


 ジンはその隙きに距離を取る。


『何故、貴様らは!! 俺の邪魔をする!!!』

「それはこっちのセリフだな! 素直に通らせろよ!!」


 ブレイズ・Rは双剣を構えて再び距離を詰める。

 真正面から近付けば竜が火球を飛ばすが、ジンはそれを絡め取って左右に流す。


 レジーナとオキシゲインが爆煙越しに射撃で援護をすれば、戦場は次第に森へと近づいて行った。


「ジン、ユウト。BCユニットじゃそっちに行けないから私は味方の援護に向かうわ。撃破されるんじゃないわよ?」

「あいよ!」

「了解です!!」






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