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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
7章 第一次侵攻戦
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第68話 闇夜の急襲






 時は少し遡り、ジンがアルゴンを奪還する前。

 赤い粒子立ち込める雪原の上で、アルとルフス・エフェクターの二人には少しながら会話をするタイミングがあった。


「一つ質問をさせて下さい」

『ふむ、良いよ』

「アナタは何故アルゴンを狙うのですか?」


 本来はルフス・エフェクター……エルがその質問に答える意味は無い。

 だがハードウェア解析もソフトウェア解析も阻まれた彼は、アルからの質問へ答える事にした。


『それはアルゴンにはクァドラン粒子の性質を決定しうる力があるからさ』

「どうやって?」

『遥か昔の時代、アルゴンと共に設計された究極の破壊兵器……デリート・エフェクターを使うのさ』


 デリート・エフェクターはアルゴンをその動力源として使用する。

 だが第九世代(現代)の規格に合わせ作られているアルゴンでは負荷に耐えきれず、操縦系統が破壊される恐れがあるそうだ。


 その情報を聞き出したアルはマスターたるジンに内密でHITSへと報告した。

 いくつかの精査を経てシルフ総司令へと伝えられた情報は、リンカーを含めたメビウス全体の行動を確定させる。


「デリート・エフェクターは恐らくキニス大陸にある。何としても我々の手で掘り出し、確保するぞ」

「「「了解しました」」」






 ――――――――――――――――――――






 オキシゲインの砂漠荒らしから数日、彼らは特に怒られたりする事も無く日常を過ごしている。

 それどころかマザーベースを撃破した事に感謝すらされていた。


「にしてもあの辺り……何かあったのかね?」

「メビウスが直々に調査をしているらしいですよ。何を探しているのかは公表されていませんが」

「ほーん……」


 調査地域に指定された砂丘周辺は封鎖され、多くの拠点防衛用列車と共に護衛のリンカーが増やされている。

 何かを隠しているのなら分かりやす過ぎる措置だが、こちらが偽装であるか余程急いでいる可能性があるのだろう。


「まぁ~、折角だし行ってみるか」

「野次馬根性ですね」

「正直どうかと思いますよ……?」

「うるせぇやぃ! 気になる事を調べずに何かゲーマーじゃぁい!!」


 今回はジンとユウトだけでなくクレナも誘っての出撃である。


 時刻は現実時間で昼過ぎ、現地時間では深夜。

 観光をするには不都合の多い時間だろう。


「ウチのジンが申し訳ありません……」

「まぁ別に良いわよ。ソイツのそれも今に始まった事じゃ無いし」

「それに気持ちはちょっと分かりますからね……」

「だろぉ!?」

「目標地点の上空に到着しました」

「りょーかい。んじゃESF、出撃だ!!」

「了解です」

「はぁ……了解」


 ジン達はドラゴニックブラスターの着弾地点へと着地した。


 元々砂丘だった部分は射線の先数百メートルがガラス化しており、温度の集中した周辺部の砂は爆風で吹き飛ばされている。

 奇妙な形をしたそれはちょっとした観光スポットとなっているらしい。


「着地! ……っと」

「足元に注意して下さい」


 ガラス化した地面は各機の重量で割れ、欠片がブースターの光を反射させている。

 そしてその下にある砂が足を引っ張り全員の動きを鈍らせた。


「面白い場所になったな」

「けど不安定な足場は面倒ね……」

「地上だとブースターを使用し続けるしか無いんでしょうか」

「それはそうだけど……大丈夫なの?」


 クレナの言葉、それはマーグヌム・カストラ攻略でグラファイトの脱出がギリギリとなった過去があるからの物だ。

 後継機であればその特性を受け継いでいる可能性もあるだろう。


「はい、オキシゲインは大丈夫みたいです!!」

「なら良かったわ」

「グラファイトも変わったんだなぁ……」

「それを言うならアルゴンも、ですよね?」

「だな」


 アルゴンの新たな変化。

 それはブレイズ・Rのデータを利用してアルが新たに作り上げた近接格闘用兵装、チャージビットにある。


 パワードフェーズのビームトンファーのように腕部に備わっているそれだが、見た目の違いは攻撃部分がビームから細い円柱となった程度。

 性能は全くと言って良い程に変わっているが――


「――まぁ今は観光だ。さっさと行くぞ~」

「了解、暗視モード起動します」


 こうしてジン達は移動を開始した。


 周囲では多くのリンカーが付近の敵機撃破に動いているだけあり、グルムの反応は一切無く安心して観光が出来る。

 だが砂丘の一部は護衛にも進入出来ない領域として設定されているようだ。


「真ん中に何があるんだ?」

「さぁね。私も知らないけど……何かは見つけたようね」


 多くの人員と機材に囲まれた砂丘の中。

 護衛の隙間からは巨大な鉄塊が見えているのだが、詳しく見ようとジンが高台に向かった所でグルムの接近警報は発令された。


「これは……手伝った方が良いのか?」

「私達はミッションを受けた訳じゃないから義務は無いわ。でもそうね、一応様子見だけはしておきましょう」

「了解です」

「りょーかい」


 作業員が避難を開始し、周囲に待機していた護衛のリンカーも移動を始めている。

 その流れに乗る事にしたアルゴンとレジーナは行動を開始した。


 一方のオキシゲインは前回と同じ砂丘上を陣取り、即座に戦線へと目を向ける。


「観測データを共有します!」

「さんきゅー」

「ありがとう」


 分析はアルやミドリの仕事であり、その情報を元に判断を下すのがクレナの仕事である。

 ジンはただ静かに言葉を待った。


「数も質も面倒ね」

「だろうな。だが後ろにもっとヤバそうな奴が居るぜ?」

『やぁ! 気が付かなかった君達には退場して貰おうかな!!』

「「な……ッ!!」」


 ジンの言う存在はレーザーライフルでオキシゲインとレジーナを後退させ、残されたアルゴンへとレーザークローを振りかぶった。

 対するジンはチャージビットで防御する選択肢を取っている。


『それよりもキミ、随分と楽しそうな事をしてるようだね。僕も混ぜてくれないかな?』

「お前はもう少し礼儀ってモンを覚えろよ……!!」


 総合力に優れたパワードフェーズと頑丈なチャージビットという組み合わせで何とか防御出来ている。

 アルは足を止めたシヴァの隙きを突く形でソードビットを飛ばすも、シヴァは軽いバックステップで距離を取り回避した。


『その姿でも飛び回るやつは使えるんだね。……想像以上に厄介だけど、新しい姿にはならないのかな?』

「お前程度じゃあ使うまでもねぇんだよ」


 アルゴンのフェーズは開放される度に攻撃力と機動性を獲得し、代価として防御力を失った。

 その極地たるゼロフェーズでは防戦には適さないが故に使えないというのが実態である。


 だが足止めも出来る程度の機動性を考えれば、この場においてはパワードフェーズが最適となるだろう。


「ジン、ここは任せるわよ」

「りょーかい」

『ほーう……』


 質よりも数が危険だと判断したクレナは味方の援護に向かった。

 彼女はジンに対し、たった一人で目の前の強敵を抑え込めと言うらしい。


 ユウトもそれに続いて機体を動かし、ガラス化した砂丘に反射する月明かりは睨み合う二機を彩る。


『丁度良い。折角だから少し話をしよう』

「茶が出なくても良いなら聞いてやるぜ」

『こんな場所だからねぇ? 残念だけど、お茶は諦めるとしよう……』


 ジンは援軍待ちを兼ね、武器を構えたまま話を聞く事にした。

 攻撃して来ない様子を見てエルは語り始める。


『良い心がけだ。ではまず質問になって悪いのだが、君はこの大陸に拠点が少ない……つまり資源がほとんど無い事に疑問を持たなかったかな?』

「……」


 エルの言葉にはジンも僅かながら疑問を抱いた事である。

 だが同様に拠点が少ないニックス大陸と言う場所もあるのだから、ただの性質として受け止めていた。


『残念だけどここに加工前の資源なんてあるはずが無いんだよ。だってこの真下は、かつての大都市が埋まっているだけなのだからね』

「何だと……?」


 エル曰く、彼らの立つこの場所……その地下を掘り進んだ先にはかつての科学文明が作り上げた巨大な都市が存在するらしい。

 そこでは現在のようにクァドラン粒子が用いられ、極めて暮らしやすい環境が広がっていたと言う。


『でもそんな文明も都市も、“今”の人々にはほとんど伝わらず断絶してしまった……。何故だか分かるかい?』

「んな事……俺が知るかよ」

『人間が愚かだったからさ』


 クァドラン粒子には過去の文明ですら解明出来なかった不思議な力が秘められている。

 それを欲望のままに操り暴走させた人々は、都市と共に文明を崩壊させた。


『僕が知る限りだと、この繰り返しで既に二回滅んでいる』


 最も新しいのは彼らの真下。

 そして最も古い痕跡はニックス大陸にある――


『――それが前回の滅亡前に流れていた噂だ。まぁ彼らは死に絶える寸前で一回目の遺跡を見つけて、グルムの設計図を持ち帰ったみたいだけど。オリジナルは僕でさえ分からず仕舞いさ』


 原因は情報を残す前に移動せざるを得なかった事にある。

 それほどに追い詰められながらも、彼らは必死に生き残る方法を探していたのだろう。


『でも君達のライズリアライザー……いや、アルゴンは同じルーツを持っているはずだ。君はその機体をどこで手に入れた? ルブルム共和国はどうやってその機体を作り上げたんだ』

「ンナ事俺が知る訳ねぇだろ」

『そうか……』


 回答者(ジン)質問者(エル)を満足させるような情報を持ってはいない。

 シヴァは左腕のレーザークローをアルゴンへと向けた。


『それなら、壊してでも君のパーツを貰うよ!!』






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