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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
7章 第一次侵攻戦
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第67話 オキシゲイン






 独立戦闘システムは先行配備でテストされたの後に全リンカーにも配備される運びとなった。


 リンクレベル3以上で使用可能ではあるが、使いこなすにはかなりの時間と練度が必要となると考えられている。

 それはパイロットたるリンカーだけでなくバディにも降りかかるだろう。


 そうしたデータを収集するついでにアルゴンはヘンリー博士の工房へと運び込まれフルメンテナンスを行い、ジンは入れ替わりでメンテナンスの終了したブレイズ・Rを動かしてユウトと共にルブルムへと降下した。


「ジンさん、オキシゲインの稼働テストに付き合ってくれてありがとうございます」

「良いって事よ」


 起動テストはアルゴンのゼロフェーズテストと同時に行われていたが、今回はより実戦に近い形となる。

 彼らはキニス大陸の端にある砂丘でのグルム討伐ミッションに出向いているのだ。


「クレナも来れたらもうちょい面倒なのミッション受けようぜって言えたんだがな~……」

「最近忙しそうですもんね」

「だな」


 現実世界ではES社が忙しくしているらしく、近々大きな動きがあるのではというのがもっぱらの噂だ。

 そしてゲーム内ではメビウス上層部やファントム・エクスも動いているらしい。


「一体何が起きるのやら……」

「不安ですね」

『あーっと、待たせて悪い。観測機器の調子が戻ったぜ』

「りょーかい」

「了解。それじゃあここからはプラン通りに動くの?」

『おう』


 タイトは金が無いと嘆いて新型機の用意を躊躇っていた。

 だがシヴァ開発でそれなりの貢献が認められたらしく、多額の開発資金と技術を入手している。


 その結果作られたのがオキシゲインという新たな機体だ。


『まずはおさらいをするぞ。オキシゲインはグラファイトの後継機で、同じく軽量逆関節の機体だ』


 メインウェポンはボルトアクションのスナイパーライフルであるデビルライフル、そして中距離戦闘用射撃兵装のエンジェルブラスター。


 機体カラーも黒から白に変わり、トゲトゲした外観は丸みのある装甲で覆われるようになった。

 その外観は正反対と言える程に異なっている。


『そしてぇ、何より!』

「「なにより?」」

『設計思想が全然違うッ!!』


 グラファイトは単機での隠密行動と狙撃を想定していた。

 だがオキシゲインでは味方機との連携を前提としているらしく、光学迷彩を不採用とする事で全体的な機体性能を向上させている。


「なるほど……だからデビルライフルはグラファイトじゃ扱いきれなかったんだね」

『そういう事だ。あとマキシマムウェポンも使わない想定だからな』

「えっ、使えないの!?」


 ユウトの口調は何故か不満そうである。

 大きなデメリットがあると言うのにこれなのだから、ジンが呆れ気味になるのも無理は無い。


「そりゃあんだけボロボロになるのをコレで使って欲しくは無いだろ」

「そっ、そうだよね……」

『まぁそういう面もあるんだが……まぁ一番は必要無いからだ』

「「必要無い??」」

『まぁそこは実践してのお楽しみだな』


 一先ずは肩慣らしとしてスコープ無しの狙撃を行う。

 ジンは上空から索敵しつつ周囲を警戒し、何かあればすぐにオキシゲインを守る構えを取った。


 だがそこまでの備えが不要であった事はすぐに分かった。


「命中全弾! 流石だね、ユウトくん!!」

「ありがとう、つぐみ」

「ふふーん。……それにしてもオキシゲインは凄いね」


 動きはグラファイトより格段に良くなっており、棒立ち状態からでも長距離狙撃が可能な程の精度を叩き出している。

 武器の威力もそれを抑え込むスペックも申し分無い。


「次はスコープを使って……あれ?」

『デビルライフルにスコープは無いって前言ったろ。機体の頭に結構良いやつ乗っけてるから、基本そっちを使ってくれ』

「オッケー!」


 ユウトがスコープセンサー起動すると、額に取り付けられたパーツが緑色に光る。

 その事に気が付いているのはジンだけだ。


「……なぁタイト」

『あ? 何だジン』

「あの光るやついるか?」

『無かったら狙撃体勢かどうか分からないだろ』

「まぁ確かにそうだが……」


 ジンが言いたいのはプログラム処理で良かったのではと言う所だが、それには見る側の設定が必要となる。

 だが誰でもいつでも設定を合わせられるはずも無いのだから、見せる側に仕掛けておけば良いという結論を出したらしい。


 上空でそんな会話が繰り広げられている一方。

 地上では砂丘の頂点を陣取るオキシゲインが調整を終えていた。


「調整完了、撃ちます!」

「りょーかい」

『いつでもどーぞ』


 ジンから送られた情報には六機のグルムの存在が示されている。

 ユウトはそれぞれを一発で仕留め、ワンマガジンで撃破した。


「ふぅ……」

『流石だな』

「へへっ、ありがとう」

「そうだな。けど……ッ!」


 ブレイズ・Rは突如急降下を始めた。

 そして地上近くで人形に変形すると、小型化したブレイズブレードをオキシゲインへと投げつける。


「ジンさん!?」

「後ろだ」


 ジンは乱心したのでは無い。

 その証拠にブレイズブレードはオキシゲインへ命中せず、すぐ後ろに居たグルムへと突き刺さった。


 熱ダメージで可動部が癒着し身動きが取れなくなった所を、ユウトはエンジェルブラスターで素早く仕留める。


「ごっ、ごめんなさい!!」

「まぁ良いって事よ。それよりも南西へちょっと移動した辺りにグルム集団が居るんだが、ここから奴らを狙えないか?」

「……やってみます」


 返答を聞き届けたブレイズ・Rは飛行形態となり、オキシゲインを背中に乗せて高度を取る。

 翼に流れる空気の流れが阻害されてしまうのだから普通は出来ないような芸当だが、ブレイズ・Rは推力で強引に解決した。


「ここから狙えるのか?」

「えぇ。かなり素直な弾道ですし、スコープも機体側にあるので……」


 空高く舞い上がった二機が見つめる先に居る敵の数は多い。

 だが相手は雑魚ばかりであり、ユウトはエンジェルブラスターを横薙ぎに連射する事で十機ほどを撃破した。


 それでも数機は撃ち漏らしており、一部が離陸地点である砂丘へと向かっている。

 射点は悟られなかったが方向は理解したようだ。


「流石だな」

「いえいえ、きっとジンさんにも出来ますよ!」

「無茶言うなぁ……」


 アルゴンは近接主体の万能型だが、この距離でこの精度は出す事が出来ない。

 ブレイズ・Rは近接特化なのでそもそも距離を詰めなければならず、それを支援するアルも必然的に近距離戦の戦闘データが多くツグミのような狙撃支援は出来ない。


 役割の違いを実感した所で、ジンは止めを刺す為に操縦桿を掴む手に力を込める。


「んじゃ後は俺が……」

『いや少し待て、ありゃマザーベースじゃねぇか?』

「マジか……」


 マザーベースとはホロスコープシリーズの移動型生産拠点。

 ルフス・エフェクターの命令も聞かずに各地を奔走し、自由気ままに被害を与える迷惑極まりない存在として有名になりつつある存在だ。


「マザーベースならあの数も納得だが、だとすればかなり厄介だぞ」

「ですです。今の僕達の数じゃ絶対に仕留めきれないと思いますけど……」

『安心しろ、俺に良い考えがあるぜ!』

「「考えって?」」


 タイトの打ち出した作戦はブレイズ・Rが全ての敵を一箇所に集め、オキシゲインが大技で全機撃破するという物だった。

 窮地を脱する一発逆転とは言えるが、作戦としては荒削りな上に無茶と言う他無い。


 ジンとしては戦う意味も無いのだから撤退したいのだが……


「……ダメ、ですかね?」

「あーもう分かった。しゃーねーからいっちょ付き合ってやるよ!」

「ありがとうございます!!」

『そう言ってくれると思ってたぜ。んじゃ手筈通りによろしく』

「おう!」


 オキシゲインを下ろしたブレイズ・Rは弾道軌道でマザーベースに攻撃を仕掛ける。

 護衛は即座にブロックしようと動いたが、ジンは相手をマザーベースへと蹴り飛ばす事で時間を稼ぐ。


 砂丘へ近づいていた個体も戦闘音を聞きつけて後退し、地上では無事に着地したオキシゲインが二丁の銃を両手に構えた。


「えっと確かここをこうして、マガジンを外したら……」


 ユウトはデビルライフルの側面に取り付けられたマガジン装填口にエンジェルブラスターを押し当てた。

 すると銃身は大きく稼働し、竜の頭部を模した形へと変化した。


「接続完了、セラフィックバスター起動確認っ。チャージはどうするの?」

「初回だし相手がマザーベースだからまずは全力で撃ってみたいんだけど……タイトはどう思う?」

『フル良いと思うぜ』

「了解。じゃあそれで行くねっ!!」


 機体の全エネルギーはドラゴニックブラスターに集中し、余剰エネルギーは空中へと放出される。


「おぉ? 何か派手な事になってんな」

「やっぱり目立ちますよね。出来れば光学迷彩が良かったんですけど――」

『――クソ長チャージにはクソ火力とスーパーアーマーに決まってんだろ! 俺が作るからには透明化なんてちゃちな機能は乗せないぜ!!』

「こんな調子でして……」

「あー何と言うか、ご愁傷様だ」


 クァドラン粒子はただでさえ目立つ。

 それを高濃度に圧縮させる純白の竜ドラゴニックブラスターは、機体共々真っ赤に染め上がった。


「チャージ完了したよっ!」

「りょーかい、こっちの仕上げも終わったぜ。でも砂丘越しで大丈夫なのか?」

『計算上は問題無いぞ。まぁダメそうなら逃げてくれ』

「とんでもねぇ事言いやがるなお前!? まぁそうするけどさぁ!!!」


 ジンは鋭く尖らせたブレイズブレードで数体のグルムをマザーベース近くの地面に貼り付け、残った護衛も近くの砂丘に叩きつけ埋めた。

 残ったブレイズ・Rも即座に飛び上がって射線の外へと向かう。


「退避完了!」

「了解です。それじゃあ、ドラゴニックブラスター……発射ッ!!」


 ユウトがトリガーを引いたその瞬間、周囲のクァドラン粒子は銃身へと一気に取り込まれ圧縮された。

 銃口から速度を加えられ大量の粒子が放出され、メビウスバスターライフルと見紛う程の光線を放射する。


 つまりは計算通りに砂丘を崩壊させて護衛機諸共マザーベースを破壊した。

 だが勢いはそこに留まらず、貫いた砂丘の周囲をガラス化させた上で巨大な爆炎を作り上げている。


『あっ……。ヤベーな、派手にやっちまったなぁ!!』

「ねぇこの威力……大丈夫なの?」

『まぁ最悪規制食らうかもな』


 通常の兵器ではここまでの威力を出せない。

 大量の砂埃に襲われる中、ユウトは新たな力の威力に圧倒された。






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