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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
7章 第一次侵攻戦
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第66話 新たな力の使い方






 一度はアルゴンを奪われたジンだったが、彼は多くのリンカーの協力により取り戻す事が出来た。


 そして数日経過した現在はヒューゲル試験場に降下している。

 目的は新たに開放された姿、ゼロフェーズのテストだ。


『あーあー、聞こえてるかい?』

「おう。問題無いぞ」


 当初はESFの専属メカニックであるネイトがデータ取りを行う予定だったが、ヘンリー博士の興味を引き交代。

 ネイトは同時に起動テストを行っているタイトの手伝いに向かったらしい。


『それじゃあ……さっそくネブラシステムを起動して貰おうか』

「りょーかい」


 指示を受けた細身のボディから分離するようにしてビットが生成された。

 数は以前ほどに多くないが、今回はいくつかの形状を与えられている。


「何だこれ……」

「こちらである程度形状と機能をコントロール出来るようでしたので、過去の戦闘を参考に作っておきました」

「ほー、なるほどね」


 新形状と新機能を付けるには相応の時間と処理が必要となる。

 ブレイズ・Rが持つブレードのように瞬時の切り替えを苦手としている以上、今後もこうして事前に設定する必要があるだろう。


「まずはソードビット」

「おぉ~……」


 ビットの中から数本がアルゴンの周りに集まり不規則に回転する。

 操作主のアルはある程度を自由にさせつつ、一本だけアルゴンの手に収めた。


「シヴァにぶつけてた時よりも良い感じの形だな」

「あの時は装甲剤の塊そのものでしたからね」


 ソードビットは鍔が付けられた非常にシンプルな両刃直剣である。

 十字架のような形をしており、振るう感触は非常に軽い。


 相応に斬れ味と耐久力は低いが、その代わりに生成コストが低く数を量産しやすい事が特徴だとアルは語った。


「そして次にシールドビット、スピードフェーズで使用していたビームシールドの進化型です」

「あ~……そんなのもあったなぁ」

「攻めてばかりで全然使いませんでしたね」


 その理由はシールドの展開が短時間かつ使い捨てに近い扱いだった事にある。

 だがビットが多くのエネルギーを内包している為、以前よりも幅広い活躍が期待出来るだろう。


「こちらも生成コストが低いので、今後は少数であれば他フェーズでも使用出来るかと」

「そりゃ助かるな」


 これまで防御兵装に乏しかったアルゴンだが、これでその状況は改善されるだろう。

 もっともパイロットがそれを使うかどうかは別の話であるが――


『あーあー、お楽しみの所悪いけどモニター結果を知らせても良いかな?』

「っと……待たせて悪いな」

『問題無いよ』


 ジンは三角錐形のシールドビットで遊ぶのを止め、ヘンリー博士の映るサブモニターへと目を向けた。


「それで、結果はどんなだ?」

『やはりゼロフェーズのスペックは全てのフェーズを凌駕している』

「マジか!」


 それなら今後はずっとゼロフェーズで戦闘を行えば良い。

 ジンはそう考えるが、状況はそれを許さなかった。


『だけどねぇ、やっぱり状況に合わせたフェーズ選択も必要だと思うよ』

「何でだ?」

「三つのライズリアライザーを同時かつ最大限活用していますからね」

『そうそう』


 ある程度はアルがコントロールし、無駄なエネルギー消費をしないようにしている。だがそれでも燃料たるクァドラン・キューブの消費はかなり激しくなっているのだ。


 最適化を重ねれば多少は燃費を改善出来るとヘンリー博士は見込んでいるが、そもそも使い所を限ってしまう方が手っ取り早いだろう。


「それとビットの最大展開数は100機程度のようです」

『運用的にもその辺りが限界だろうね。左腕の調子はどうだい?』

「良好だな」

『了解した。それじゃあ次の作業もさっさと済ませちゃいますか』


 アルゴンの修理は無事に終わった。

 こちらでの作業が完了すれば、次は予め呼び出しておいたブレイズ・Rでの作業が始まる。


「結構無茶してたが……基礎動作に問題は無さそうだな」

『だねぇ。次は指定ルートを飛んでくれるかい?』

「りょーかい。んじゃアル、ちゃんと留守番してるんだぞ」

「分かってます。ジンこそ墜落しないで下さいよ?」

「分かってるっての」


 ブレイズ・Rは垂直に飛び上がって高度を稼ぎ、飛行形態になると同時にブースターを起動した。

 そうして規定コースでの飛行をしばらく続けたその時。


「……ん?」


 パイロットたるジンは操縦に僅かな引っ掛かりを感じた。

 だが気にすること無く出力を上昇させると、今度はライズリアライザーに異変が生じる事となる。


 それは連鎖的に機体全体に悪影響を与え、ブースター出力の乱高下すら招いている。


「何だこれ……ッ!」

『どうやらライズリアライザーが異常動作を起こしているらしい、飛行を中止してすぐに着陸するんだ!!』

「りょーかい!!」

「こちらでも異常を検知しました。どうやらブレイズ・Rだけの問題では無いようですね」


 アルゴンも機体こそ動いていないがライズリアライザーが異常な反応を見せている。

 ブレイズ・Rの状態もコントロールを失っての墜落と言うよりは、アルゴンへと乱暴に引き寄せられている状態と言った方が近い状況にある。


『付近の機体に影響が無い事を確認した。なら二機が互いに引き合っていると言うのか? これは一体何なんだ……』

「何だか分からねぇが、逆らわない方が良さそうな感じがするぞ」

『それならジン君はそのまま機体を着陸させてくれ。多少強引でも構わないよ』

「りょーかい!!」


 ジンは機体を人形に戻すと、引き寄せる力に逆らいつつ乱暴な着地を行う。

 ブレイズ・Rはなおも無人のアルゴンに引き寄せられ、静止する頃には手の届く位置にまで近付いていた。


「っとと……。何とかなったぜ!」

『ふぅ、数値は相変わらずだが着地は出来たようだね。……僕はしばらくデータ精査を行う、現地は任せたよ』

「了解だ」


 本来であればジンがそれ以上何かをする必要は無い。

 だがその位置から見えるアルゴンのコックピットは激しく発光しており、詳しい様子を確認しようとしたジンが機体を近づける。


 するとコックピットの発光はブレイズ・Rにも伝播した。


「なっ……何じゃこりゃ!?」

「ジン、今すぐアルゴンとブレイズ・Rをデータリンクして下さい!」

「何で? ってかそんなのどうやってやれってんだ!?」

「直接ケーブルを繋ぎに行くしか無いでしょう。さぁ早く!!」

「ったく、マスター使いの荒いバディなこって……」


 口では文句を言いつつもジンの身体は軽く動いた。


 彼はブレイズ・Rから一度降り、腕部を伝い歩きアルゴンへと乗り込む。

 そしてケーブルを伸ばして再びブレイズ・Rへと戻りケーブルを接続し、コックピットから様子を確認する。


「これでどうだ?」

『準備完了です。ジンはブレイズ・Rを放置して早く戻って来て下さい!』

「へいへい、りょーかい」

『ここからはぶっつけ本番となりますが……度胸と気合いで何とかしてみせましょう』


 再び腕部を伝ってジンがアルゴンのコックピットへ入ると、そこでは手を揉んでマッサージするアルが待ち構えている。

 AIらしからぬ思考と行動には彼も頭を悩ませるしか無い。


「おいおい、AIがそれで良いのかよ」

「良いんじゃないですか?」

「マジか……ってか誰だよこんな奴に育てたの」

「ジンですが?」

「そうだよなぁ……」


 アルの行動は全てジンから学んだ結果である。

 故に無茶をやり抜く事が出来るのだろう。


「……出来ましたっ!」

「お、結構早かったな。で何が出来たんだ?」

「ブレイズの自動帰投コマンドです」

「ほーん……お?」


 指示を受けたブレイズ・Rは駐機状態から直立し、垂直に飛び上がって方向を転換。

 一番近い味方拠点へと飛び去った。






 ――――――――――――――――――――






 事態を収めたジンはメビウスに戻ると、ヘンリー博士の工房へと直行。

 アルゴンとブレイズ・Rは先に持ち込まれており、状態確認は短時間で終了した。


「なるほど、そういう事だったのか……」

「何か分かったのか?」

「君達は実に良いデータを持ってきてくれたよ」


 ヘンリー博士曰く、どうやら二機のライズリアライザーは互いに共鳴していた。

 ジンの感覚通りに引き寄せあっていた事にも間違いは無いのだが、問題はシステムの一部が書き換わった事である。


 アルは不安定だったそれを定着させて己の力としたのだ。


「組み合わせが原因だとするなら……何で今まで無事だったんだ?」

「恐らく両機に稼働経験の蓄積が必要だったんだろうね、それもとびっきりのヤツが」

「シヴァとヴィクテムか……」

「そうだ。そしてコイツに僕が前作った機体制御プログラムをかけ合わせれば……」


 こうしてヘンリー博士はバディが単独で戦闘可能となるプログラムと制御装置を作り上げた。

 量産はA-KEに委託する事になるが、機体余らせてるかつバディのサポートを必要としないリンカーの戦力は大きく強化されるだろう。


「機体の自動制御プログラムを作るのは考えたけど、成長し切ったバディに遠隔操作させるのは考えなかったねぇ……」

「千景って例があるじゃん」

「彼女はは例外中の例外さ」


 千景は基本的に独自判断で動かない。

 そして稼働実績が段違いであり、第七~第九世代全ての稼働データを持っているからこその行動出来ているのである。


 だがアルは自らが直接操作に介入すると言う視点と、主の持つ戦闘データを利用する事でその高見に追いついた。


「もう二度とアルゴンは奪わせたりしません」

「そうか。んじゃ留守の時は任せたぜ?」

「はいっ!」






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