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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
6章 アップグレード
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第59話 悲しきケモノの咆哮






 マキシマムウェポンを使用したグラファイトは戦闘後即座に収容されメビウスへと送られた。

 ESFのメカニックたるタイトとネイトは整備を試みるが、その損傷具合から他の機体を優先的に修理するべきという結論に至り作業を後回しにしている。


 そうしたいくつかの事情により、グラファイトは少しの時間を置いて初めて詳細な状況確認が行われた。


「フレームはバキバキ、フォトンケーブルは焼ききれてるから全取り替え……ボロボロにも程があるんじゃない?」

「だよな。想定が甘かったわ……」


 グラファイトはフォトンケーブルが取り替えやすいような設計にしてある。

 機体が比較的小柄な部類な事もあり、そこの手間は文句を言うほどでは無いだろう。


 だがフレームの損傷は大きな問題である。


「まさかあそこまでのエネルギー流量があるとはな~……」


 タイトはメビウスバスターライフルの使用に莫大なエネルギーが必要で、かなりの発熱を伴う事を知っていた。

 故にグラファイトの放熱性能は若干強化されていた……のだが、背部装甲の一部は融解している。


 それは完全な想定外であり、これまでの戦闘によって蓄積されたダメージと組み合わさって基礎フレームに大きな歪みをもたらした。


「本格的な戦闘は持ってあと五回……いや、二回って所か」

「ベース部分から全交換は出来ないの?」

「交換をしようにもフルオーダーメイドだからパーツが無ぇんだよ。作れば良いが、その時間も無いだろうし……」


 タイトが対処に悩んでいると格納庫に警報が鳴り響いた。


「こんな時に……すまん、ちょっと行ってくる!」

「良いよ良いよ。いってらっしゃ~い」


 タイトが格納庫からユニオンルームの作戦会議室へ到着する頃にはESFの全員が集合している。


 クレナ主導で行われた作戦会議によるとマーグヌム・カストラがグルムに乗っ取られたらしい。

 原因は各地の拠点侵攻に戦力を多く割いていた事であり、拠点の奪還と侵攻に現れたシヴァを撃破する事がミッション目標のようだ。


 軽い作戦を終えた彼らはすぐに解散して各自で出撃準備を始めた。

 タイトはユウトと共にネイトの元へ戻ったが、状況に変化は無い。


「おかえり~」

「多分見たままだと思うけど……グラファイトの修理はどんな感じ?」

「スマンがまだ何も出来てねぇぞ」

「ごめんね~、他の整備で手一杯だったからさ~……」

「だよね。……急かしてごめん」

「「良いってことよ!」」


 タイトとネイトの二人は揃ってユウトにサムズアップを送る。

 だがユウトはESFにおいて重要かつ貴重な戦力であり、どうにかして戦線へ送る必要があるというのが二人の共通認識だった。


 それなのに彼を乗せる機体が無い。

 二人が表面上は明るく振る舞いながらも悩んでいると、レジーナへと向かっていたクレナが足を止めた。


「ねぇ、ユウトを乗せる機体で迷ってるならだけど……私のフェンサーは使えないかしら」

「「「……あぁ! それだ!!」」」

「やっぱり。もう移送してるから、適当に使って頂戴」

「ありがとうございます、クレナさん!!」


 フェンサーは性能が低い代わりに拡張性が高いという特性がある。

 ユウト達は急いでフェンサーの元へと向かい、OSの書き換えと同時に武装換装を行った。


 その頃にはジンを始めとした第一陣が戦闘を始めている頃だ。


『全部お古で悪いわね』

「いえいえ、使える物があるだけありがたいです!!」


 ジンからは古い方のレーザーライフルを借りている。

 OS書き換えと武装換装が終了したが、タイトは最終調整の為にコックピットで作業を続けた。


 それが終われば後は出撃するだけだ。


「もうちょいまともな予備機ありゃ良かったんだがなぁ……」


 手を動かしていれば余計な事も考えてしまうものだろう。

 気が付けば口から漏れ出していた言葉はユウトだけが聞いている。


「アルゴンもブレイズもジンさんにしか動かせないし、遠距離戦向けでは無いもんね」

「そうそう。まぁ小さなユニオンだからそこは仕方無いけどさ……」

「でも贅沢は言えないよ、本当に」






 ――――――――――――――――――――






 一足先にマーグヌム・カストラ周辺に降り立ったジンは既に戦闘を開始していた。

 クレナと合流して以降は更に殲滅速度を上げ、雑談の余裕すら見せている。


「そういえばフェール発電所ってカウス指定されてたよな。粒子雲はほぼ無かったが、アレどうなってんだ?」

「どうも私達が行く少し前に火山が噴火してたみたいなのよね。粒子雲も護衛のグルムも、大部分が吹き飛ばされてたらしいわ」

「なるほどね」


 フェール発電所が併設された火山は元々活動が活発になっていた。

 拠点壊滅のトリガーはユウトが引いたが、そうで無くとも大きな被害を受けていたのだ。


 最後にジン達を襲った一団も噴火から生き残った個体である一方、数は元と比べればかなり少ないらしい。


「あ、そういえばクァドラン粒子生成装置はどこにあったんだ?」

「グルム側の拠点管理装置がそっちのコントロールも兼ねてたらしいわよ」

「なるほど。そりゃ良かった」

「談笑するのも結構ですが、戦闘に集中して下さい」

「へいへーい」


 全リンカーによるマーグヌム・カストラ奪還作戦は順調に進んでいる。

 ユウトは第二陣で合流したらしく、慣れない機体ではあるがそれなりの戦果は叩き出しているらしい。


「作戦時間、23分経過しました」

「りょーかい」


 既に最初の襲撃から合計で一時間を超えている。

 味方の損害こそ少ないようだが、既にかなりの者が補給を受けなければならない状態となっていた。


 それでも戦闘を中断させないのは執念強いと言うしか無い。


『ジンさん、クレナさん! シヴァです!!』

「このタイミングで来るか……」


 だが執念で言えばルフス・エフェクターの手勢、グルムも負けていない。

 その一角たるシヴァはリンカーの集団を突破してマーグヌム・カストラの内部へと侵入した。


『一応画像を共有しておきますね』

「サンキュー。……何でアイツの両腕再生してんだ? 確か斬り落としただろ」

「確かカニスが咥えてったって話よ。修理されたんでしょうね」

「そういうモンか……」

「そういうモンよ」


 ジンとクレナは即座にシヴァの後を追おうとしたが、グルムは壁となり行く手を阻む。

 数は驚異だが今ここに集められた戦力であれば突破は容易だ。


「私達で突破口を作るから、ジン達は中でシヴァを始末してきて頂戴」

「りょーかい。中は任せろ!」

「任せたわ。……付近の味方機に通達、シヴァを追える者はジンに続きなさい!!」

『『『了解だ!!』』』


 クレナの指示に従った各機が集中砲火を行い、グルム壁は一部が吹き飛ばされた。

 そこへ近接組がディフェンドフェーズのアルゴンに続いて侵入し、残りはそれぞれが最も働ける場所に移動した。


 地下に作られた拠点内部には戦闘音があまり響いていない。

 足音と機体の稼働音だけが響く通路の中、彼らは差異を探している。


「……おい見てみろよ、コッチに何かあるぜ!」

「何かって何だよ」

「俺が知らねぇモンなんだよ! 仕方ねぇだろ!?」

「「「分からないなら仕方ない」」」


 リンカーは報告のあった部屋に続々と集まった。

 そこはCAの高速建造設備が置かれており、中心部には未知の機体が固定されている。


「マジで何だコレ……」


 彼らの知識に無い機体は、下半身が赤い竜と融合した騎士の形をしている。

 今は起動していないようで、外見からはグルムなのかCAなのかすら判別出来ない。


「降りて見るしかねぇか……」

「「任せた!!」」


 未確認機を直接調べるのも良い。

 だが設備のコンソールに情報が残っていると踏んだジンはアルゴンから離れ、コンソールを操作した。


 その中には狙い通りの情報が保管されている。


「ふむふむ、コイツはヴィクテムって言うのか……」


 引き出した情報によれば、ヴィクテムは最終組立が完了したばかりのようだ。

 作業開始はグルムの襲撃が始まった一時間前という不運な目にあったが、幸運にも妨害を受けず自動でここまで組み上がっている。


「やっべ、シヴァが来たぞ!!」

「マジか!」


 だがヴィクテムの不運は続く。

 アルゴン以外の機体ではシヴァを押し込める事が出来ず突破されてしまい、ジンも急いでアルゴンに乗り込んで離脱をする。


 当然ヴィクテムは放置である。

 彼らはある程度距離を取った状態で振り返り、ヴィクテムの様子を見た。


「……ん? 今そこに人が居なかったか?」

「人居るのかよ! 守らねぇと!!」


 リンカー達は意気込んで戻ろうとするが、シヴァは施設を破壊し助けに行けるような状態では無い。

 それでも全員が何とか動いたと同時に、高速建造機のある部屋は爆散した。


「おいおいマジかよ!!」

「ありゃ死んだか?」

「ヴィクテムに乗れてればワンチャンあるかもな……」


 それは薄い希望である。

 だがヴィクテムは爆炎の中で起動した。


「「「よっしゃ生きてたァ!!」」」


 シヴァのパイロットとジン達リンカー以外に人影となり得る物は無い。

 つまりヴィクテムが動いているのならば、リンカーの一人が見たという人物も助かったはずだ。


『誰かを守る力ってのは、誰かを害する力だ……』

「「「……ん?」」」


 リンカーのコックピットには泣きそうな男の声、そして竜の咆哮が届いた。






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