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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
6章 アップグレード
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第58話 漆黒の翼とエラーサイン






 ジン達ESFはジェムズと協力してフェール発電所の攻略へと乗り出した。

 エイジやサピロスの活躍によっていくつかのトラップを突破した彼らだが、それからも数個のトラップに引っかかっている。


「クッソ、何なんだよこの警備レベル!」

「元々はルブルム共和国の重要拠点だったらしいわよ。多少は厄介でも仕方無いんじゃない?」

「多少ったってなぁ……!!」


 マーグヌム・カストラと違って人の手が入っているこの拠点は攻略難易度が高い。

 警報装置も迎撃装置も山のように設置されているからだ。

 ただし現存しているのはスタンドアローンの自動迎撃装置のみであり、施設全体を統括するシステムは地熱でダウンしている為に難易度はやや低下している。


 それでもグルム側の設置した設備は過酷な環境でも耐えられるように作られているらしく、こうしてリンカーが潜入するしか無いのが現状だ。


「……長距離通信にジャミングでゴザル」

「マジか」


 CAのローカル通信はこのタイプのジャミング対策も組み込まれている為に影響が無い。

 だが外の状況が知れない事や救援が呼べない不安は大きいだろう。


「一旦引き返すか?」

「ここまで来たのなら破壊したいわね……」

「拙者も同意見でゴザル」


 既に40分近く経過し、施設の最深部は目前である。

 それを逃す事が出来ない一行は作戦続行を選択。


 途中でいくつかのトラップを踏みつつも、クレナ達と合流する事無く一行は最深部に到達した。

 だが制御装置の前にある大広間には三機のグルムが待ち構えている。


「ノーブルランクス……!!」

「やっぱ簡単には行かないよな」


 待ち構えるのはマクエス一機とバロン二機。

 それぞれは近接主体で拠点防衛をメインとしているらしく、まさにぴったりの状況だろう。


「マクエスは初めての相手だな。アル、戦力的にはどんなモンだ?」

「バロンは誰が相手をしようと勝てるでしょうね。ですがマクエスは近距離戦においてかなり手強いかと」

「なるほどね。……んじゃバロンはサピロスとローズ、マクエスは俺とエイジで対処するか」

「了解です」

「了解でゴザル」

「異論は無いわ」


 シュタインとダイクロアイトが先行して侵入すると、二機のバロンは釣られるように動き出した。

 残されたマクエスは動こうとしない。


「フェーズシフト、パワードフェーズ!」


 ここから先は速度だけで突破出来ない。

 多少の防御性能を必要としたジンは素早く機体を変化させ、アダマントと共に突撃する。


 手駒が居なくなった事でマクエスはようやく動き出した。


「遅い遅い!」

「はぁッ!!」


 素早い連撃と鋭い斬撃がマクエスを襲うが、そのどちらも決め手とはならず大盾で防御されてしまった。

 そして次はこちらだと言わんばかりにマクエスが大剣を構える。


「それ片手で持つやつじゃねぇだろ……ッ!?」

「ジンさん!!」


 ジンも反撃は警戒していたが、相手の動きは予想以上に早い。

 二本のルナブレードで辛うじて防御するアルゴンはジリジリと壁際に押し込まれている。


「援護するのでジンさんは前衛を!」

「話が早くて助かる……ぜッ!!」


 アダマントがホルスターから銃を抜くと同時に、アルゴンはルナブレードの刃を消失させる。

 当然大剣に掛けられた力はアルゴンへと向くことになるが、大剣の側面をエイジが素早く撃ち抜く事で僅かに向きをズラし回避した。


「ひゅー! 流石ァ!!」


 マクエスは恨めしそうにアダマントを見つめる。

 即座に己が剣で邪魔者を叩き斬ろうとするも、剣をアルゴンに押さえられてしまった為にそれは敵わない。


「ハーッハッハ! これでどう……」


 ジンは武器を多く持たない相手が武器を押さえられた時に取る行動を知っている。

 大抵の場合では取り返そうと抵抗するのだが、マクエスは速やかに剣から手を離した。


 そして剣が無くとも大盾で殴れば良いと言わんばかりにアダマントへと振りかぶる。


「嘘だろ!?」

「くっ……!」


 アダマントも盾を持っている。

 だがそれは小型であり、今回のような攻撃を耐える事は出来ない。


 エイジは剣も組み合わせる事で大盾を防いだ。


「悪い!」

「大丈夫です。……爆破!!」


 アダマントが剣のトリガーを引くと、剣先に宣言通りの爆発が生じた。

 予想外の衝撃はマクエスを吹き飛ばす程の威力である。


 エイジは爆炎ごとマクエスを斬り裂き追撃した。


「やるな!」

「ジンさん、後はお願いします」

「りょーかいッ!!」


 アルゴンは切り裂かれた爆炎の先でルナブレードを構える。

 武器を失ったマクエスは為す術もなく両断され、サピロスとローズがバロンを同時に撃破した。


 各自で損害確認を終えた後に繰り広げられるのは和やかな談笑である。


「お疲れ様でゴザル」

「おう、そっちもお疲れ」

「残るは制御装置ね」

「確か入り口の真反対でしたね」


 制御装置周りにトラップは無く、容易に破壊する事が出来た。


 それからしばらくすると施設の電源がダウンして非常用電源が作動。

 避難用の明かりが確保されているが、それが失われるのも時間の問題である。

 ジン達は急いで来た道を戻り脱出を目指した。


「作戦時間、50分経過しました」

「当初の予定よりは少し早いな。アイツらもちゃんと脱出してると良いんだが……」

「この状況であればクレナさん達も脱出しているはずでゴザル」

「だよ……な」


 だが連絡は無い、ジンはその事が気がかりだった。

 ジャミングの影響を受けていたのかもしれないが、それでも一人位は伝令として残るはずだからだ。


「出口だ!」


 ジン達は眩い光を放つ外へと足を進める。

 彼らは穏やかな光景が待つと思っていたのだが、実際に彼らを出迎えるのは衝撃的な光景だった。


「何だ、これは……!?」


 ――――――――――――――――――――


 時は少し遡り、ジン達がフェール発電所への侵入した頃。

 閉所での戦闘に向かない存在であるユウトら遠距離組は、施設外での見張りと退路の確保をその役割としていた。


「……11時方向に敵です」

「了解だ」


 攻撃精度が落ちつつあるグラファイトだが、今は優秀なセンサー類を酷使してチームの目として役立っている。

 それには味方機の半数が弾をばら撒くタイプの機体だった事も関係しているだろう。


 戦闘がしばらく止んだ時、ユウトが何かに気が付いた。


「……サイファーさん!」

「こちらでも確認した。大規模な部隊が接近している、注意してくれ」


 軽く確認出来ているだけでも百機近くが列を成して行進して来ている。

 更にはジャミング機も居るらしく、長距離通信が使用不能となっていた。


「おうおうおう、ソイツぁヒデェ話だな!」

「ジンさん達は大丈夫なんでしょうか……」

「俺達の使ってる短距離用周波数にはそこまで影響は無い。だがメビウスや施設に潜入した彼らに連絡出来ないのは痛手だな……」

「ふむ……であれば出入り口を私達で確保、一番足の早いユウトに呼び戻しを頼もう」

「了解です」


 サイファーから護身用に予備のハンドガンを受け取り、グラファイトはフェール発電所内部に侵入する。

 一人で心細いが急がなければならないのが現状だ。


「一体どこに……ッ!」

「あーあー、聞こえてるかしら? 謎に通信垂れ流してるのは話聞いた方が良いってミドリが言うから送ってみたけど……」

「クレナさん!!」


 ユウトは施設内を数分徘徊してようやくクレナ達と合流、外の状況を共有すると即座に脱出を決定した。

 比較的浅い層に潜っていた部隊は自力で状況を察知して戻っている。


 最後に残されたジン達が地上へ戻る頃には戦線が構築されていた。


「何だ、これは……!?」

「遅いわよジン!!」


 混乱しているらしく、珍しくフリーズしているジンにクレナが喝を入れる。

 グルムが集まりつつあるのだからそんな暇は無いのだ。


「ジャミングはオニキスに任せろ!!」


 オニキスが乗るサードニックスは対電子戦装備を持っている。

 だが基本性能のそこまで高くない機体で多くの敵に囲まれてしまえば、そもそも動く事が出来ない。


 援護をしようにも多くのリンカーがバロンを始めとしたノーブルランクスに足止めされていた。


「僕が何とかしないと……」


 例外は唯一高台に居たグラファイトだ。

 だが肝心のオクトライフルは既に弾切れ、予備のカートリッジやサイファーから渡されたハンドガンですら撃ち尽くしている。


「なら……これしか無いよね。ツグミっ!!」

「あいさー!」


 ユウトは背部にマウントしていた武器を起動する。

 それはかつてエイジのフェンサーを破壊し、マキシマムウェポンと呼ばれる物。


「メビウスバスターライフル……初めて使うけど、どうにかしてみせる!」

『ジャミング機を排除した!』

「ナイスタイミング! ツグミ、タイトを呼び出して!!」

「あいさーっ!」

『言われなくても準備は終わってるぜ!!』


 タイトの操作によってメビウスからグラファイトへと赤い稲妻が走り、膨大なエネルギーがチャージされた。

 余剰エネルギーは空中やアンカーから地面へと放出されている。


 本来は数秒で収まるはずなのだが、赤い雷光いつまでたってもグラファイトを包み込んだ。


「なっ、何が起こってるの!?」

「過負荷解消が上手く行ってないみたい……っ!」

『くっそ、近接チューニングでシクッたか! ユウト、射撃を中止しろ!!』

「いいや……このまま、行くッ!!」

『ハァ!?』


 タイトもツグミも最善を尽くしている。

 だが機体には想定以上のダメージが蓄積ダメージしており、想像以上の負荷によって基礎フレームへの追加ダメージすら発生させていた。


 ユウトはコックピットに鳴り響く警告を無視して狙いを定める。


『馬鹿野郎!! それ以上負荷をかけたら機体が吹っ飛ぶぞ!!!』

「大丈夫、一発で決めて見せるから」

『あーもう……分かった。好きにやれ!』

「ありがとう!!」


 雷光は徐々に収まりつつある代わりに、グラファイトは背部から大量の黒煙噴出し大きな翼を形成した。

 そこまですれば敵味方の誰かが気付くだろう。


『なっ……何だありゃ!?』

「マキシマムウェポンを使います、皆さん回避して下さい!!」

『『『りょ、了解!!』』』


 その場に居た全員はユウトの指示に従って回避を行う。

 同時に手癖の悪いリンカーは数体のグルムを投げ込んだ。


「メビウスバスターライフル……発射ッ!!」


 グラファイトがトリガーを引き、高台から地面へ向けて膨大なエネルギーが放たれる。

 発射されたエネルギーが起こした大爆発は、たった一回で数多くのグルムを粉砕された。


「機体はギリギリ持ちましたね……!!」

『それは良かったわ。でもちょっと待ちなさい……』

「クレナさん? どうかしましたか?」

『フェール発電所は火山に併設されているわ。そして火山は最近活発化していた、そこに大きな刺激を与えると言う事は……』

「まさか…………」

『何か揺れてね?』


 地面に当たったエネルギーの多くは“衝撃”という形に変換された。

 だが一部は地中深くにまで潜り込み、発電所の中枢部分すらも貫いている。


 導き出される結論は火山の噴火だ。


『『『やりやがったなぁぁぁああ!!!!!』』』

「ごっ、ごめんなさーい!!!」






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