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赤い星のリンカーネーション  作者: 鳥皿鳥助
6章 アップグレード
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第55話 ワールドミッション《グルム掃討戦》

【これまでの簡単な振り返り】

ジンは三形態への変形機構を持った機体(アルゴン)と飛行形態への変形機構を持った機体(ブレイズ・R)を手に入れた。

クレナは蛇腹剣とクソデカ複合式大型射撃装置を使用可能な機体(レジーナ)を手に入れた。

ユウトは狙撃に対するトラウマを克服して狙撃特化機(グラファイト)の性能をフルに発揮出来るようになった。

メカニックのタイトを加えた三人はユニオン、ESFを結成し様々な戦場で活躍した。






 プリオーレース大陸で確認済みのカウスは全て攻略し、同大陸内におけるグルムの戦力は大きく減少している。

 そんな折にメビウス上層部はカウス01を攻略する為、全体の戦力を更に削る事が重要と判断した。


「ワールドミッションってカウス戦だけじゃなかったんだな」

「全リンカー(プレイヤー)で強力するべきミッションの総称ですからね」


 ほとんど全ての戦力を回すと言う事は防衛戦力が少なくなると言う事でもある。

 そうした不安を抱えつつも、ルブルム各地でグルム殲滅戦が開始された。


 今回ジンがアルゴンで守るエアスト周辺以外の大陸各地にも、インスタントベースハブを始めとした各種武装列車が配備されている。

 それらを活用して味方拠点を守る組と、敵拠点に侵攻する組へ分かれ行動するのが大まかな作戦内容だ。


 ちなみにジンがブレイズ・Rを使用しないのはメンテナンスを終えた機体の肩慣らしと相棒(アル)の機嫌取りを兼ねた選択である。


「で、各地の状況はどんな感じなんだ?」

「リアルタイム情報ではありませんが、概ね順調に進行しているようですね」


 レーザー系兵装の実装により攻守両方でかなり難易度が下がっているらしい。

 だが威力相応の機体と財布への負荷が大きく、上位勢が多く恩恵を受けているとの報告も上がっている。


 またこのミッションから各ユニオンにつき一つのマキシマムウェポンが配備可能となった。

 許可も基準もある程度緩和された事により、粒子雲付近を戦場にしているフェンサー乗りが次々と使用しているそうだ。


「ウチで使うならグラファイトか」

「そうね。当人さえ良ければって所だけど……」


 アルゴンは訳ありで使用不能、ブレイズは規格違いで使用不能、レジーナは同等の威力を比較的低コストで発揮する追加装備がある。

 クレナが以前使用していたフェンサーも選択肢には入るが、実際の戦場で使用するとなれば様々な都合からグラファイトが最適なのである。


「僕は大丈夫ですよ。むしろマキシマムウェポンを使うのが楽しみです!!」

「そっか。……メカニック的にはどうなんだ?」

『俺もグラファイトの使用に一票だな、元々そういう事が出来るように設計してるし』

「なるほど。んじゃそれで行くか」


 ただしメンテが大変というタイトの訴えにより使用は極力控える方向に決まった。

 同時に付近の敵を一時的に殲滅させたESFは輸送機を利用し、次の戦場をニックス大陸に定める。


 ジンもアルゴンからブレイズ・Rへと乗り換え、相棒たるアルはメビウスでメンテの経過を観察されつつ情報面でジンの援護していた。

 雪の覆われた白い大地での戦闘は実に和やかな物である。


 轟音が聞こえてくるまでは。


「なっ、何だ!?」


 音の発生源は上空から現れた輸送機にある。

 だが黒煙と共に降下する機体が持つ識別信号は味方の物であり、グルム接近時のような警報は鳴らなかった。


「あれは墜落するわね……」

「観測します!」

「頼む」


 クレナの語る結論は誰にでも分かる事である。

 だが突如として輸送機の扉が吹き飛び、内部から見慣れない機体が飛び出した。


「マジで何だよ、ありゃ……」


 乗り捨てられた輸送機は白銀の雪原に墜落し爆発している。

 未確認機はその猛火で背後を彩り、雪原に着地した。


「機体構造はCAっぽいですね」

「タイトはアイツが何者か分かるか?」

『おいおいおい……分かるも何も、ありゃあシヴァじゃねぇか! 何でこんな所に来てるんだ!?』

「シヴァ? 何じゃそりゃ」

「噂の試験機ってやつよ。……そこのパイロット、助けが必要であれば応答に答えなさい」


 クレナは動きを止めたシヴァに共通周波数と拡声器で呼びかける。

 だがシヴァは出火する輸送機を背にしたまま、腕部に取り付けられたレーザークローを起動して構えた。


「どうして私達に刃を向けてるのかしら?」

「この動きはバリッバリの敵意があるパターンだな」

「戦うしか……無いんでしょうか…………」


 例えどこに所属するテストパイロットであろうと、通告と同意無しでの同士討ちはご法度である。

 それがこの地で生きる者の鉄則だ。


 だと言うのに、彼らの前に現れたシヴァのパイロットは違うらしい。


「警告、多数のグルムが急速接近中!!」

「む?」

「撃ちますか?」

「今乱戦になると困るのはこっちよ、下手に動かない方が良いわ」

「だな。でもよぉ、この動きはもしかすると……」


 先行して近付いた犬型グルム、カニスはシヴァに攻撃する事無く寄り添う。

 続々と現れたノーブルランクスも同様に援護の姿勢を見せ、攻撃の兆候は一切無い。


 ESFとしてはこの場にホロスコープシリーズが来ていないのが唯一の幸いである。


「……もしかしちゃいますかァ!?」

「今回の戦闘は、長くなりそうね」

「だろうな」

「辛いですね……」


 ブレイズ・Rも剣を作り臨戦態勢に入っている。

 ESFは多勢に無勢という状況だが、誰かが少しでも動けば確実に戦いの火蓋は切られるだろう。


 全員が次の行動に頭を抱えていると、メビウスからの通信が入った。


『緊急連絡! マーグヌム・カストラにて製造していた最新鋭機がグルムに強奪された!!』


 声の主はルナクスである。

 メッセージはクレナの使用した共通周波数とは別、メビウス経由でいくつかの情報と共に全リンカーに送られた。


 表情の見えない音声通信越しだが、かなりの切迫した状況であることが伺える。


『逃走先はニックス大陸と予想されている。付近のリンカーは見つけ次第交戦、逃走の兆しを見せるのであれば必ず破壊せよ!!!』


 組織には面子という物が存在する。

 故に試験機の暴走(この手の展開)と来れば隠蔽が付き物だろう。


 だが状況はそれを許す余裕が無い程に危険らしい。


「情報確認、サブモニターに表示します」

「……これ絶対眼の前のヤツだよな」

「上空からファントム・エクスの降下を確認」

「こんなの確定だろぉ!」

「確定よ」

「確定ですね……」


 ファントム・エクスの精鋭部隊、エクリプスの各機を中心とした大部隊が臨戦態勢で降下している。

 多くの視線はシヴァへと向けられているが、全員はESFの各機を囲むように着地した

 すなわち互いに睨み合う二つの大集団が形成されたのである。


「その機体を返してもらうぞ……エルッ!!」


 最後に降下したルクシオンは輸送機から離れると右脚のブースターを全開にした。

 当然の事ながら降下率は加速度的に上昇し、ルナクスはその勢いを斬撃に乗せてシヴァを叩き斬ろうとする。


『君達の作った機体は素晴らしいね』

「お前には過ぎた代物だ!!」


 だが渾身の一撃は片手で容易く防がれた。

 シヴァはカウンターは行わず、精神的なプレッシャーだけを与え続ける。


『良い物を手に入れるには盗めば良い、そう実践したのはどこの誰かな?』

「くっ……マーグヌム・カストラの一件が原因か!!!」

『さぁ、役者は揃った。僕の計画を始めるとしよう』


 ルナクスと言い合う声は輸送機から送信されている。

 共通周波数で発せられた言葉がリンカー達へ届くと同時にグルムは動き出し、白銀の大地で大乱戦が始まった。






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